ニューズレター
製紙大手3社による連合行為疑惑に対する台湾高等行政裁判所判決 客観的立証責任を果たしていないとして公平会敗訴
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台北高等行政裁判所(以下「北高行」と略称する)は2012年7月に100年(2011年)訴字第568号判決を作成して、行政院公平交易委員会(※日本の「公正取引委員会」に相当。以下、「公平会」と略称する)が昨年、国内三大工業用紙供給業者である正隆股份有限公司、栄成紙業股份有限公司及び永豊餘工業用紙股份有限公司が「公平交易法」(※日本の「不正競争防止法」、「独占禁止法」の要素が含まれる)の連合行為の禁止規定に違反すると認め、これら3社に下した罰金支払いを命じる処分を取り消した。 |
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本件は、近年、国内の工業用紙価格が何度も値上げされたことについて、公平会が調査した結果、正隆股份有限公司、栄成紙業股份有限公司及び永豊餘工業用紙股份有限公司、これら3社の市場占有率が合計90%に達しており、当該市場が寡占市場であることが判明した。また、これら3社の価格調整は、その調整時期及び上げ幅がいずれも同じであったが、これについて、当該3社はいずれも、理に適った説明を提出することができなかった。そこで、公平会は3社の間に連合行為の合意があったことを示す直接的な証拠をつかんではいなかったが、上記の間接的な証拠を以て「これら3社には連合行為の合意が存在した」と認め、処分を下し、た。 |
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しかし、北高行の上記判決のなかで、裁判所は特に、「行政罰の要件である事実の客観立証責任は行政機関に帰属する。被告(即ち公平会)は原告らが連合行為の禁止規定に違反したことを理由に罰金を科したが、原告らの行為が『公平交易法』第7条の連合行為の構成要件に該当するのか否か、裁判所が職権で調查したところ、事実の真偽は依然として不明であり、その不利益は被告に帰属しなければならない」と指摘している。言い換えると、裁判所は、「公平会はもとより間接証拠法則を用いて業者間に連合行為の合意があったことを証明できるものの、公平会は『連合行為の合意が存在することを、なぜこれらの間接事実を以て“唯一合理”的に解釈することができるのか、裁判所を説得する』義務を有する」と認めているのである。仮に公平会が裁判所に「合理的な疑いのない」確信を抱かせうる高度の蓋然性を証明することができなかったのであれば、依然として事実の真偽は不明であり、かかる事実の証明を待たなければならず、公平会は敗訴という重荷を負わなければならない。 |
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この原則のもと、裁判所はさらに一歩踏み込んで次のように判示している。「業者間の外観上の一致は、『意識的平行行為』と、公平法によって非難される『連合行為』に、さらに細分される。前者は、極めて透明化された寡占市場において業者は即座に競争相手の行為を知り得、同じような対応戦略を採ることができ、その結果、最終的な外観が一致することになる。この種の平行行為は決して業者間の合意に関連するものではないため、公平法における連合行為に属さない。これに鑑みれば、公平会は業者間に価格調整の上げ幅及び時期が同じであるという外観の一致があることを挙げているものの、それはこれらの一致した行為が業者間の『意識的平行行為』から出たものである可能性を排除することができない。したがって、裁判所に『合理的な疑いのない』確信を抱かせることができないため、裁判所は公平会の原処分を取り消す」。 |
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北高行の上記判決は実際、連合行為の認定に関する重要な判決の1つである。近年、公平会は、外観の一致などの間接証拠を以て即座に「業者間には連合行為の合意が絶対にあった」と認めることが多い。たとえば、牛乳の価格調整及びコンビニチェーンの「現煮咖啡」(※その場で淹れるコーヒー)事件はいずれもそういった例である。この判決以降、公平会がもし再び、外観の一致を採用して連合行為の認定をしようとするのであれば、なぜこの間接証拠によって連合行為の合意が存在することを『唯一合理』的に解釈することができるのか、詳細に説明する必要があり、かかる説明がなされて初めてその客観的な立証責任を果たしたことになる。したがって、当該判決は、今後の連合行為認定に関する行政訴訟事件にとって非常に重要な判例である。 |