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台湾企業家「両岸投保協議」に臨んでもつべき認識


李念祖/Ching-Yuan Yeh

「両岸経済協力枠組み協定」(「海峡両岸経済合作架構協議、Economic Cooperation Framework Agreement。以下、「ECFA」と略称)締結から2年、台湾の対中国窓口団体「海峡交流基金会」(以下、「海基会」と略称)及び中国の対台湾窓口団体「海峡両岸関係協会」(以下「海協会」と略称)は、20128月上旬に「江・陳会」(※「海基会」理事長の江丙坤氏と「海協会」会長の陳雲林氏によるトップ会談)を開催し、「両岸投資保障協議」(「両岸投資保障協定」。以下、「両岸投保協議」と略称)及び「海関協議」(「税関協定」)を締結した。そのうち「両岸投保協議」の締結は、両岸の投資保障が既に、それぞれが立法ならびに管理する従来のものから、協議を経て相互保障に係る規範を確立し、ならびに関連する双方向的協調メカニズムを構築することによって、互いの投資の促進及び保障を確保するものに変わってきたことを示している。対中投資を考えている台湾企業家にとって、「両岸投保協議」の内容や主旨を確実に理解、把握し、かかる理解や把握に基づいて相応の自己保護措置を講じることができれば、中国での投資活動において実質的な利益を享受できることになる。

「両岸投保協議」は、性質上、国際社会における「二国間投資保障協定(Bilateral Investment Treaty, BIT)」の協議に相当する。即ち、2つの主権国家又は政府が、二国間投資保障協議(Bilateral Investment Treaties, BITs)に調印する方式で、双方の投資家の相手領域における投資を公権力によって保障することを互いに取り決め、これによって当該各投資家の相手領域内における投資リスク(たとえば、政府の交替又は組織再編、為替リスク、運営リスク、資金源、外国為替管理、徴収、国有化、没収、戦争、反乱、暴動など)を引き下げる。「両岸投保協議」の最も主要な目的は、政府間が共に努力することによって、自分たちの領域に入ってくる相手方の投資家に対し、身体の安全、投資財産及びその収益といった各方面において受けるべき正当かつ十分な保障を互いに提供し、これによって、外国の投資家の投資意欲を高め、外資が入ってくることによってもたらされる各種経済効果を現地が享受できるようにすることにある。

「両岸投保協議」について知っておくべき内容は以下のとおりである。

1. 

投資の定義

「両岸投保協議」は「投資」について広義の定義を採用しており、動産、不動産、各種タイプの契約権利、特許権の運営、各種形式の担保、信用債券及び融資、さらには投資の収益と期待利益も含まれるようになった。台湾企業家の各種投資活動はすべてこのなかに含まれる。

2. 

投資家の定義

「両岸投保協議」の投資家に対する定義はかなり拡充され、これまでの投資家個人、企業から、会社、信託、商号、合夥など各種組織、かつ、投資家が有する若しくはコントロールするいかなる企業実体もすべてこれに含まれるようになった。中国で投資を行う台湾企業家、特に当初、外国の会社を利用して中国に投資していた台湾企業家も、すべて「両岸投保協議」の保障を受けることができるようになった。

3. 

「両岸投保協議」の適用範囲

「両岸投保協議」は、双方の政府の中央及び地方における主管部門が採用又は維持した措置、及び前記主管部門の権限を受けて採用又は維持した措置すべてに適用される(いくつかの「当然の例外」を排除することは既に「協議」に明示されている)。そのうえ、「両岸投保協議」によって提供される保障は「協議」発効前の未解決の投資紛争にも遡及して適用することができる。

4. 

双方の政府の「徴収権」を厳しく制限

「両岸投保協議」には、正当な目的を有し、正当な手続に合致し、規定に合致する補償を提供するのでなければ、投資家の投資収益を任意に又は差別的に徴収してはならない旨明確に規定されている。しかも、徴収の定義には「直接徴収」と「間接徴収」が明確に含まれている。いわゆる「直接徴収」とは、政府当局が投資家のその投資又は収益を政府措置で徴収すると明示するものであり、いわゆる「間接徴収」とは、「『直接徴収』と効果が同等の措置」である。凡そ投資家の経済にマイナスの影響を及ぼす措置がすべて「間接徴収」を構成するというわけではなく、その差別、干渉の程度から、比例原則に合致するか否か判断する。但し、中国で台湾企業家が「直接徴収」される状況は少なく、「間接徴収」の状況が多い。「両岸投保協議」には、「間接徴収」を入れることが明文化されており、投資家にとって非常に有意義な保障であることは確かである。 注意すべきは、租税は原則上、徴収とは言えないが、「両岸投保協議」には、投資家が投資地のある租税措置が既に徴収の域に達していると主張する場合、双方の租税部門は6か月以内に当該措置が徴収であるか否か協議しなければならない旨規定されている点である。双方が「徴収にあたる」と認定した場合、たとえ名称が租税措置であっても、徴収と見なされる。

5. 

徴収の「損失補償」

政府による損失補償の提供は、合法的な徴収の重要な条件である。また「両岸投保協議」には、徴収の補償は「徴収時(又は徴収措置公開時)」の「公平な市場価値」を基準とし、しかも「支払日までの利息」を計算しなければならず、利率は合理的な商業利率計算によることが明確に規定されている。補償の支払いは即時行われ遅延してはならず、さらに有効に兌換及び自由に移転できなければならない。

6. 

資金両替の自由化

「両岸投保協議」には、投資家がその投資及び収益を移転する権利を保障するよう規定されており、これにはその投資及び収益を自由に兌換できることが含まれている。

7. 

投資紛争の解決

両岸投保協議」では、投資紛争を、商業契約締結により投資家と現地の人間との間に生じた個人間の紛争(P to P)、及び、徴収により又は「両岸投保協議」違反により投資家と現地政府との間に生じた紛争(P to G)とに区分し、ならびに、それぞれ異なる紛争解決手段を規定している。

 

(1)

P to G

   

個人と政府との間の紛争について、「両岸投保協議」には、1)投資家が直接、政府と「協議」を行う、2)投資家が上級政府に「折衝」を求める、3)投資家が両岸の投資作業班(「投資工作小組」)の「投資紛争処理メカニズム」(「投資争端協処機制」)を通じて「処理」する、4)投資家は「投資補償紛争」について両岸の投資紛争解決機関に「調停」を要請する、5)投資家は行政救済又は司法手続により解決することができる、といった5種類の解決方法が規定されている。しかし、投資家が既に行政救済又は司法手続による解決を選択している場合、再度、同一の紛争について両岸の投資紛争解決機関」に「調停」を要請することはできない。

以上のなかで最も注目すべきは、指定された機関に「調停」を要請する、という点である。たとえば、台湾企業家の投資が聴衆され、補償について合意できない場合、台湾企業家は指定された投資紛争解決機関に「協議」に規定される手続により「調停」を行うよう要請することができる。しかも「協議」には、両岸の投資紛争解決機関は半年ごとに投資補償紛争の処理情況を両岸の投資作業班(「投資工作小組」)に報告しなければならない、とはっきり規定されており、この報告・折衝メカニズムは、投資地の政府、特に中国の地方政府に対する、ある種の抑止効果となりうる。

 

(2)

P to P

「両岸投保協議」には、個人間の商業契約紛争は、契約に仲裁条項を定めることにより、若しく紛争発生後に紛争を仲裁で解決する旨取り決めることにより、解決できる、と規定されている。契約者双方は両岸(※中国、台湾、香港)の仲裁機関、及び双方が同意する仲裁地を選択することができる。たとえば、中国の東莞で仲裁を行うことを選択できると同時に、台湾の仲裁機関(たとえば、中華民国仲裁協会)が東莞で仲裁手続を行うよう取り決めることもできる。これは両岸間で初めて、一方の仲裁機関がもう一方の領域内で仲裁手続を行うことを認める旨明文化したものであり、台湾企業家にとって極めて重要な選択肢である。

「仲裁は相対的に訴訟メカニズムより迅速かつ専門的という利点があり、今後、両岸の企業は、契約を交わす際に、契約に仲裁条項を定めて、仲裁機関、仲裁地、果ては準拠法(契約に紛争が生じた際に判断基準とする法律)などの事項について、前もって取り決めておくべきである。とりわけ仲裁機関については、相当程度の歴史と第三国・領域の仲裁経験を有する仲裁機関を選択し、仲裁手続のスムーズかつ合法的な進行を確実にすることによって、今後の仲裁判断の有効な執行を確保しなければならない。このほか、企業は、紛争発生時に企業の権利を確実に保障することができるよう、専門の法務人員(弁護士資格を有する者がベターであり、かつ「裁判外紛争処理手続(alternative dispute resolution, 略して"ADR")」の専門知識を備えていなければならない)と外部弁護士を置いて、契約の立案、協議、執行をサポートさせるべきである。

8. 

「両岸投保協議」のもう1つの重点は、投資者の身体の自由が保障されている点である。台湾側は、台湾企業家の身体の自由に制限を加えた場合、24時間以内に家族又は会社に通知しなければならない、と主張して譲らず、これに対して中国側はもともと、これは台湾企業家に「超国民待遇」を与えることにほかならない、と考え、終始、首を縦にふろうとしなかった。しかし、最終的に中国側が譲歩し、「両会の『人身自由と安全保障』についてのコンセンサス」の共同発表という形式で、「双方はそれぞれの規定に基づいて、相手側の投資家及び関連人員に対し、その身体の自由を制限した時点から24時間以内に通知する」ことに同意した。今後、もし台湾企業家が中国の公安に逮捕された又は居住監視が執行された場合、中国側は24時間以内に、当該台湾企業家の在中家族又は在中企業関係者に通知し、かつ台湾政府の指定する主管部門に通知しなければならない。

「両岸投保協議」によってもたらされた両岸投資の新たな局面に臨み、我々は対中投資を考えている台湾企業家の方々に、 投資関連の契約を締結する際には必ずスペシャリストを専任者にして処理を一任するとともに、仲裁条項を契約に盛り込むことを忘れないよう、ご忠告する。先方があくまで仲裁に同意しない場合、当方は、先方が故意に仲裁を回避することは公正であるのか否か、ならびに、取引を継続すべきか否か、考慮しなければならない。国際社会において、仲裁条項の使用は渉外投資契約に慣用されている方法であり、「両岸投保協議」に明文規定が置かれている事項でもあり、先方は拒絶すべきではない。ひとたび仲裁に同意すれば、一方が仲裁地を選択し、もう一方が仲裁機関を選択するよう取り決め、かかる取決めを仲裁条項に記載することも、極めて公平かつ理に適っている。仲裁条項に第三国・地域の人物が主任仲裁人を担当する旨明確に規定することは、投資契約の選択としてさらによく見かけるものである。

このほか、個人と政府との間の紛争解決に関して、台湾企業家は以下のような認識をもっていなければならない。

1. 

対岸で身体の自由に対する脅威を受けたとき、政府身分を有する者による、行動制限、拘留、留置、強制退去などを問わず、いずれの場合においても「投保協議」の規定に照らして家族に通知しなければならず、「投保協議」が設置したプラットフォームを利用して保護を求めることを忘れない。

2. 

もし極めて不合理な、的を絞った租税名目であれば、実質的に実物(不動産、土地、工場、使用権、株権などを含む)を収用する措置に相当するため、やはり専門家を招聘してサポートを求めるべきである。これには、「両岸投保協議」に設けられている補償紛争「調停」メカニズムを利用し、プラットフォームとすることによって、「投保協議」に規定されている手段を用いて問題を解決することも含まれる。

3. 

収用が合法であるか否かの紛争と、補償金額の多寡をめぐる紛争は、対岸では同じ性質の紛争であるとみなされ、適用される紛争解決手段も異なるが、基本的に、「補償すべき」とする同意を政府側から得なければ、補償金額の多寡について「調停」が行われる可能性はないことを理解しておかなければならない。但し、台湾企業家も、「投保協議」に設計されている補償紛争「調停」メカニズムを利用し、双方の指定した機関を通して、政府側に「調停」を行うことに同意するよう求めるのを試してみるのも悪くはない。両岸両会は、まだ、それぞれの指定した投資紛争解決機関リストを交換する必要があるので、具体的な「調停」ルートは、今後「投保協議」がそれぞれ必要な内部手続の交換・通知を経て発効したときに、より明らかになるだろう。

4. 

補償金額紛争は、公平な市場価値の客観的認定に関係し、この点につき、現在紛争注の中国と台湾の企業は、「調停」がスムーズに行われ紛争を解決することができるよう、できるだけ早く、客観性かつ公信力を有する機関を用いて、専業規格に合致する方式に照らして価値の鑑定を行わなければならない。

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