ニューズレター
「非伝統商標審査基準」施行
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台湾新商標法は既に2012年7月1日から施行されている。今回の改正は、たとえば非伝統的商標(non-traditional trademark)保護範囲の拡大、「権利不要求」(※ディスクレーム)規定の改正、登録料を二期に分けて納付する規定の削除及び「専用使用権」及び「通常使用権」関連規定の追加など、多項目の制度変革に関連しているため、今回の法改正に合わせてその他の関連措置(「商標法施行細則」、「審査基準」、「商標規費収費準則」などを含む)の改正も次々に行われている。先日、智慧財産局(※台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下、「智慧局」と略称する)は「非伝統的商標審査基準」(「非伝統商標審査基準」)を公告したが、これは、もともとあった「立体、色彩及び音声商標審査基準」(「立体、顔色及声音商標審査基準」)に修正を加え、非伝統的商標即ち立体、色彩、音声、動態、ホログラム、位置、香り、触覚、味覚の意義、審査などについて、ひとつひとつ論じたものであり、既に2012年7月1日に発効している。 |
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1. |
非伝統的商標の範囲を明確に規定 |
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非伝統的商標は法条に例示されている色彩、立体形状、動態、ホログラム、音声商標に限定せず、その他の嗅覚、触覚、味覚などの感知可能な標識が商標法の識別性規定に合致する場合、いずれも、商標登録を出願し、商標法の保護を受ける可能性がある。 |
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2. |
商標図、描写・記述及び見本の関係を明確に規定 |
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非伝統商標を登録出願する場合、商標権の権利範囲の確定をサポートし、かつ審査に役立てるため、出願人は通常、商標図以外にも商標の描写・記述及び商標見本を添付してその商標を真に表現しなければならない。商標の描写・記述及び商標見本の性質は商標図の補充であり、その目的は商標図の審査の補助である。したがって、商標の描写・記述及び商標見本はもとより商標図と互いに一致し、互いに参照する必要がある。 |
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3. |
立体商標 |
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1) |
商標は6点以下の図から構成され、当該これらの図は共同で商標図を構成し、それらの間に主従の区別はない旨明確に規定。 |
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2) |
商標図に含まれている識別性又は機能性を備えない部分が、もし、破線を使用せずに実線で描写され、商標全体において識別性を備えるのであれば、該これらの識別性又は機能性を備えない部分は、商標権の範囲に疑義を生じさせるおそれを有すると認めなければならず、「不専用」を表明するか、又は破線による描写に改める必要がある。 |
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4. |
色商標 (Color Trademark) の機能性説明を新たに規定 |
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いわゆる機能性を備える色彩とは、使用指定商品又は役務において、その使用目的又は技術効果を達成するのに必要な色彩、若しくは商品又は役務的のコスト又は品質に影響を及ぼすものを指し、これらは即ち機能性を備え、登録することができない。たとえば、黒を太陽エネルギー収集装置製品に使用することを指定することなどが挙げられる。 |
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5. |
音声商標(サウンドロゴ、Sound Trademark) |
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1) |
音楽的な性質の音声商標は五線譜又は略譜を商標図としなければならず、非音楽的な性質の音声商標については文字説明を商標図とすることができる旨明確に規定。 |
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2) |
音声商標の機能性説明を新たに規定音声がもし商品又は役務の用途又は使用目的にとって不可欠である、若しくは商品又は役務のコスト、品質に影響を及ぼす場合には、機能性を有し、登録することができない。たとえば、カメラのカシャッというシャッター音などである。 |
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6. |
動態商標、ホログラム商標の申請及び審査事項を新たに規定 |
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1) |
動態商標 |
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a) |
動態商標とは連続的に変化する動く映像(以下、「動く映像」という)を指し、かつ当該「動く映像」自体が既に商品又は役務の供給元を指し示す効果を備える。動態商標が保護しようとするものは、当該「動く映像」によって生じる全体的な商業上の印象であり、即ち、当該「動く映像」の全体につき商標権を取得するもので、決して当該変化過程で出現する文字、図形、記号などの部分につき単独で商標権を取得するわけではない。もし当該文字、図形などの要素について商標権を取得したいのであれば、別途、通常の文字又は図形商標を登録出願しなければならない。 |
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b) |
6点以下の静止画像を商標図としなければならない。 |
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c) |
商標の描写・記述は、商標図では表現できない連続的な動作を補うため、順を追って「動く映像」の連続的な変化過程を説明しなければならない。このほか、当該「動く映像」を構成する静止画像の数を明示しなければならない。 |
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d) |
商標見本、即ち商標主務官庁が公告した様式に合致する形で「動く映像」を記録した電子媒体を提出し、審査に役立てなければならない。 |
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2) |
ホログラム商標 |
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a) |
ホログラム商標とは、ホログラムを標識とする情況を指し、かつ当該ホログラム自体が既に商品又は役務の供給元を指し示す効果を有する。 |
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b) |
ホログラム商標図はホログラムを表現する図であり、ホログラムが単一画像のみを有する場合には、1つの図を添付し、ホログラムが見る角度によって異なる画像変化を生じる場合には、4点以下の異なる画像変化の図を添付し、ホログラム商標を完全に表現しなければならない。 |
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c) |
原則上、ホログラムの審査重点は伝統的な平面商標と何ら異なる点はない。ただホログラムの多くは安全機能や偽造防止機能に用いられ、消費者もそのように認識している。したがって、ホログラムにつき商標登録を取得する場合には、消費者がこれを偽造防止機能を備えるタグ又は商品の装飾ではなく、商品又は役務の供給元であると見ていること(出所表示)を証明する必要がある。 |
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7. |
その他の非伝統的商標の概括的な説明を新たに規定 |
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位置商標、香り商標、触覚商標、味覚商標の審査時、個別案において提出される商標図、商標の描写・記述及び商標見本などの関連資料につき、本基準の関連規定を準用して審査を行わなければならない旨説明。 |
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上記の非伝統的商標が既に我が国の商標法の保護客体であることに対応し、筆者は、商標権者ができるだけ早く、自らの商標が台湾で保護を獲得する、その実行可能性を評価し、かつ登録出願を提出するよう提案する。 |
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