ニューズレター
東芝vs.台湾DVD-ROMメーカーの権利侵害訴訟で東芝が1.6億台湾元の損害賠償を勝ち取る
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日本の有名な大手メーカーである株式会社東芝が、2011年6月に台湾ではじめて、特許権の使用許諾を受けていないDVD-ROMメーカーに対し法的措置を講じた。知的財産裁判所は1年にわたる審理の末、2012年6月28日に判決を下し、「被告である能率豐聲股份有限公司(原名は豐聲科技股份有限公司)の製造・販売するDVD-ROM製品は東芝が所有する第098207号発明特許を侵害している」と判示した。被告は東芝に1.6億新台湾元もの損害賠償(利息は別途計算)を支払わなければならないのみならず、同時に、二度と権利侵害製品につき製造、販売の申し出、販売、使用又は輸入することができず、また、被告が既に製造したDVD-ROM権利侵害製品は回収され廃棄されなければならない。 |
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知的財産裁判所が該判決のなかで表明した重要な見解には、以下のものが含まれる。 |
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民事裁判所は、特許請求の範囲の補正申請について、自ら判断することができる。 |
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原告東芝は訴訟提起前に智慧財産局に特許請求の範囲の補正を申請しており、補正を認める旨の審決はまだ下されていないものの、知的財産裁判所は民事訴訟中、依然として、その補正が適法であるか否か判断することができる。裁判所は、原告の補正は「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)の規定に合致していると認め、補正後の請求項を権利侵害争点審理の基礎とした。 |
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権利を侵害しているか否かの判断は、DVD-ROM標準規格と特許請求の範囲を比較することができる。 |
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被告が自社のDVD-ROM製品が業界共通のDVD-ROM標準規格(DVD Specifications for Read-Only Disc)によって製造されたものであることを否定していないため、裁判所は当該規格書に記載されている内容と係争特許の特許請求の範囲を以て権利侵害の比較を行い、規格書に合致したDVD-ROM製品が係争特許の権利範囲に含まれることを確認した。 |
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被告は特許権侵害に係る故意、過失を有する。 |
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原告は以前、係争特許をDVD6Cに委託してライセンシング事務の処理を行っており、且つ、DVD6Cはかつて被告とライセンス契約の交渉を行ったことがあり、被告は今日に至るまでライセンス契約に同意、署名していないものの、当時から既に係争特許の存在を明らかに知っていた。また、DVD6Cとライセンシング交渉を行う前も、被告は係争特許の属す技術分野の通常知識を有する業者として製造、販売行為に従事する際に、当然、実施する技術について最低限の特許権の調査及び確認をしておかなければならず、さもなくば、過失を有するとみなされる。蓋し特許権については登記及び公告制度を採用しており、且つ知的財産権の権利侵害は既に現代の企業経営において直面しなければならないリスクとなっている。したがって、事業者は、他人の財産権を侵害することのないよう、より高いリスク意識や注意義務をもたなければならない。 |
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係争特許のDVD-ROM光ディスクに対する貢献度。 |
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被告は、係争特許はDVD6C特許リスト中の400件の特許の1つにしかすぎないため、原告が請求できる金額は、現在原告が請求している金額を400で割ったものである、などと主張している。しかし、被告は、自らが製造した光ディスクが全てDVD6Cの400件の特許を使用する必要があるか否か、係争特許とその他の399件の特許のロイヤリティ(実施料)分配比率がどのくらいなのか、証明していない。このほか、係争特許はDVD-ROM規格書の一部であり、その技術特徵は全ての光ディスクに備わっており単独で分離することができず、もし係争特許を欠くのであれば、当該光ディスクには価値がなくなる。このことから、係争特許の当該光ディスクに対する貢献度は100%であり、400分の1の損害賠償としなければならないとする被告の認識には理由がないことが、十分にわかる。 |
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知的財産裁判所は、被告が訴訟中に提出したDVD販売収入と全ての光ディスク販売収入のデータ、及びその年次報告書に開示されている関連データを以て、被告が権利侵害期間に販売したDVD-ROMの枚数を計算し、さらに、被告が自ら認めた光ディスクの1枚当たりの単価から平均値を計算し、これら2つの数を相乗して、被告が東芝に賠償すべき損害賠償額を算出することができる。特に言及すべきは、裁判所が、被告が故意に権利を侵害した期間について、懲罰的に損害額の2倍の賠償額を課している点である。最終的に、被告が負担すべき損害賠償金額は16億新台湾元あまりと算出されたが、原告は1.6億新台湾元しか請求しなかったため、原告全面勝訴の判決が下されたのである。 |
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