ニューズレター
2012年7月1日施行の新改正商標法の企業への影響
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新改正商標法が立法院の最終審議で可決され、総統による公布を経て、今年(2012年)7月1日に施行された。しかし、多くの企業が新改正商標法によって生じるであろう影響にまだ気づいていない。今回の法改正の規模はかなり大きく、保護対象となる商標類型の拡大が含まれており、現行の商標法で規範とされている「文字、図形、記号、色彩、音声、立体形状又はそれらの結合」という範囲を拡大し、動態、ホログラム又はその他識別性を有する全ての標識が新たに加えられた。したがって、たとえ香水又はその他の商品の香りであっても、商標として登録を受けることができる可能性がある。 |
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このほか、商標使用許諾を「専属授権」(「専用使用権」)と「非専属使用権」(「通常使用権」)に区分し、いわゆる「専属授権」について、商標権者は使用許諾期間中、当該商標を使用することができない、と厳格に規定している。決して「独家授権」(「sole license」)が当然「専属授権」であるというわけではない。したがって、使用許諾契約の文言がたとえ「専属授権(exclusive license)」と取り決めてあっても、商標権者が依然として当該商標を使用することができると取り決められていれば、「非専属授権」であると解釈される可能性がある。新たな改正商標法の規定によれば、もし商標権が侵害された場合、原則として、商標権者及び商標の専用使用許諾を受けた者のみが侵害の排除又は損害賠償を主張することができ、通常使用許諾しか受けていない者は権利侵害に係る救済を請求することはできない。 |
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これとは別に、今回の法改正によって生じる比較的大きな影響として、次のようなものがある。商標権者が、自らが先に登録出願又は登録した商標に基づいて、他人が後から登録出願又は登録した商標に対して無効審判請求又は取消審判請求を提出し、当該商標の登録の取消を請求しようとする場合、もし、商標登録無効審判請求又は取消審判請求事件の請求人の商標が登録後既に3年が経過しているのであれば、請求人はまず当該商標の使用証明を提出しなければならない。現行の商標法の規定によれば、商標登録無効審判請求又は取消審判請求事件の請求人は、無効審判請求又は取消審判請求の依拠とする商標を使用しているか否かについて証明を提出する必要はない。今後、使用証明の提出は、智慧財産局(※台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)が商標登録無効審判請求又は取消審判請求を受理する前提条件となるため、新たな改正商標法のこの重大な変革に対し、商標権者は商標使用に係る証拠を早めに準備しておかなければならない。 |
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最後に、注意すべきは、裁判所及び公平交易委員会(※日本の公正取引委員会に相当)がその最新の見解において、商標の移転又は使用許諾が登記されていなければ、商標を譲り受けた者又は使用許諾を受けた者は商標権侵害行為について警告書を送付したり又は訴訟を提起することができなくなる、との認識を示している点であり、その影響はかなり大きい。したがって、商標の移転又は使用許諾の登記を適時完了してこそ、商標権の行使を十分に保障することができる。 |
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新たな改正商標法及び最新の実務見解によって生じる可能性のある影響に対応し、企業は自社の権益に影響を及ぼすことのないよう、関連する改正事項及び実務動向について早めに準備を整えなければならない。 |