ニューズレター
「外国の発行者による上場有価証券買戻しに関する規則」増補改訂
昨今の国際経済情勢の動揺と国際株式市場の変動の激しさに鑑み、多くの科学技術企業は、市場の先行きが不透明なため、その株価が大幅に修正された。そこで、これらの企業は、株価の維持を図るため、続々と金庫株買戻しのメカニズムを実施した。しかし、台湾で第一上場している会社にすれば、「証券取引法」(「証券交易法」)改正草案の外国企業に関する章が立法院でなかなか可決されないため、台湾で第一上場会社が金庫株を買戻す必要があるとき、台湾「証券取引法」を適用する必要があるか否かといった疑義が生じる。特に、上場主体のケイマン「会社法」の規定と台湾「証券取引法」が異なるとき、どのように適用すべきかといった問題が生じる。これまでは、「台湾証券取引所株式会社(台湾証券交易所股份有限公司)」(Taiwan Stock Exchange Corporation。以下「TWSE」)は、上場契約を通じて個別案ごとに審査する方式で第一上場会社の金庫株の買戻しを許可してきたが、日増しに増えていく第一上場会社及び当該これらの企業の金庫株買戻しのニーズに対応し、第一上場会社による会社株買戻しの便宜を図り、法的根拠を明確にするため、2011年10月27日に「外国の発行者による上場有価証券買戻しに関する規則」(「外国発行人買回上市有価証券辦法」。以下、「本規則」と略称する)の増補改訂を公告し、これとは別に、規範をより完全なものとするため、「台湾証券取引所株式会社第二上場株式会社による台湾預託証券(TDR)買戻しに関する規則」(「台湾証券交易所股份有限公司第二上市公司買回台湾預託証券辦法」)に規定される第二上場会社による台湾預託証券(TDR)買戻しに関する規定も併せて入れた。本規則は、台湾企業に適用される「上場・店頭会社による自社株買戻しに関する規則」(「上市上櫃公司買回本公司股份辦法」)の規定を参照しており、買戻しの手続、価格と数量の制限、方法、移転・譲渡制限及び公告などの事項はいずれも台湾企業のそれと類似している。本規則は公告日から実施され、同時に「台湾証券取引所第二上場会社による台湾預託証券(TDR)買戻しに関する規則」は廃止される。本規則に関連する重要な内容を以下に略述させていただく。 |
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壱、 |
共同規範(第一上場会社及び第二上場会社のいずれにも適用される) |
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一、 |
上場有価証券の範囲 |
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本規則で規定する集中取引市場で買戻す上場有価証券の範囲は、第一上場会社が中華民国(台湾)で上場取引していた株式及び第二上場会社が中華民国(台湾)で発行及び上場取引していた台湾預託証券(以下「TDR」)を指す。 |
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二、 |
外国の発行者が上場有価証券を買戻す場合、取締役会の特別決議を経なければならない。 |
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外国の発行者が登録国、上場国の法令規定に抵触しない情況下で、集中取引市場で上場有価証券を買戻す場合、3分の2以上の取締役が出席する取締役会で、出席取締役の2分の1以上の同意を得なければならない。しかし、もし第一上場会社の会社定款に株式の買戻しは株主総会を通過しなければならない旨規定されているのであれば、当該これらの第一上場会社は株主総会の決議を通過しなければならず、そのうえではじめて金庫株の買戻しを実施することができる。取締役会による上場有価証券買戻しの決議及び執行情況、又は理由があって上場有価証券を買い戻していない情況は、最も早い株主総会で報告しなければならない。 |
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三、 |
登記要件 |
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外国の発行者が「華僑及び外国人証券投資管理規則」(「華僑及外国人投資証券管理辦法」)及び「台湾証券取引所業務規則」(「証交所業務規章」)の規定により、TWSEに対して登記申請手続を行わなかった場合、集中取引市場でその上場有価証券を買戻すことができず、すなわち、外国人は外国機関投資家(FINI)用決済口座を開設する必要があり、そのうえではじめて金庫株の買戻しを行うことができる。 |
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四、 |
買い戻し期間中の、内部者及び関係者による上場有価証券売却の禁止 |
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外国の発行者が集中取引市場からその上場有価証券を買戻す期間において、その登録国、上場国の会社法令により規定される関係企業又は取締役、監察人、高級幹部本人及びその配偶者、未成年の子女又は他人の名義を利用して所有する有価証券は売却することはできない。 |
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五、 |
上場有価証券買戻し方式の制限 |
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外国の発行者が上場有価証券を買い戻す場合、台湾証券取引所の集中取引市場のコンピューター自動取引システムからこれを行わなければならず、ブロック・トレーディング、端株取引、株式公開買付け、競売、マーケット終了後の固定価格取引といった方法でその上場有価証券を買い戻してはならない。 |
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六、 |
上場有価証券買戻しの数量と総額の制限 |
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(一) |
第一上場会社による株式買戻し又は第二上場会社によるTDR買戻しの数量比率は当該会社の発行済み株式又はTDR総数の10%を超えてはならない。第一上場会社には別途、買戻し総額の制限がある(詳細は、以下の「弐、」の「一」のとおり)。 |
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(二) |
外国の発行者がその上場有価証券を買戻す数量は、一日につき、買い戻す予定の総数量の三分の一を超えてはならず、かつ取引時間開始前に価格を提示することはできず、また2社以下の証券ブローカーに委任して処理しなければならない。ただし、買い戻す株式の数量が1日につき20万株を超えない(第一上場会社に適用)又は買戻すTDRの数量が1日につき20万単位を超えない(第二上場会社に適用)場合には、上述の1日あたりの買戻し数量に関する制限を受けない。 |
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七、 |
上場有価証券買戻しの事由に関する制限 |
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(一) |
第一上場会社が集中取引市場で株式を買戻す場合、次のいずれかの事情に限る。 |
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1. |
従業員に株式を移転・譲渡する、 |
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2. |
新株予約権付社債、新株予約権付種類株、転換社債、転換種類株又はストックオプションの発行に合わせて、株式転換に用いる、 |
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3. |
会社の信用及び株主の権益を守るために必要があって買戻し、株式消却をする場合。 |
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第一上場会社が買戻した株式は、上記の事情「3.」により買戻した株式が買戻し日から6ヶ月以内に株式消却をしなければならないのを除き、買戻し日から3ヶ月以内にそれを移転・譲渡しなければならない。期限を過ぎても移転・譲渡しなかった場合、会社は株式を発行していないとみなし、株式消却をしなければならない。かつ、買戻した株式は抵当に入れることができず、移転・譲渡前は、株主の権利を享受することができない。 |
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第一上場会社は、報告した株式買戻し予定期間が満了した日から2ヶ月以内に、3分の2以上の取締役が出席する取締役会で出席取締役の2分の1以上の同意を得て、行政院金融監督管理委員会(Financial Supervisory Commission、以下「FSC」)に、株式買戻しの目的の変更を報告することができる。 |
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(二) |
第二上場会社が買い戻したTDRは、全て、それを表彰する株券に変換しなければならず、買戻し日から6か月以内に登録国の法令により株式消却しなければならず、かつ買戻したTDRを変換した総額は、TDRを再発行して上場売買することができない。 |
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八、 |
上場有価証券買戻しの期間に関する制限 |
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(一) |
第一上場会社の株式買戻しは、株式買戻し報告日(定義は後述のとおり)から2ヶ月以内に完了しなければならず、並びに上記期間満了又は買戻し完了後5日以内に、取引勘定書及び関連資料を添付して、FSCに報告し、買戻し情況を公告しなければならない。期限を過ぎても買戻しが完了していない場合、もし再度買戻しを行う必要があれば、改めて取締役会の決議を経なければならない。 |
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(二) |
第二上場会社のTDR買戻しは、TDR買戻し公告日(定義は後述のとおり)から2ヶ月以内に完了しなければならず、上記期間満了又は買戻し完了後5日以内に買戻し情況を公告し、当該公告ページをダウンロードした資料及び関連書類を添付してTWSEに報告しなければならない。期限を過ぎても買戻しが完了していない場合、もし再度買戻しを行う必要があれば、改めて取締役会の決議を経なければならない。 |
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九、 |
情報開示 |
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(一) |
第一上場会社の株式買戻しは、株式買戻し報告日(定義は後述のとおり)から2ヶ月以内に完了しなければならず、並びに上記期間満了又は買戻し完了後5日以内に、取引勘定書及び関連資料を添付して、FSCに報告し、買戻し情況を公告しなければならない。期限を過ぎても買戻しが完了していない場合、もし再度買戻しを行う必要があれば、改めて取締役会の決議を経なければならない。第一上場会社は、取締役会で株式買戻しを決議した日から2日以内に、以下に掲げる事項を公告し、ならびにFSCに報告しなければならない(以下「株式買戻し報告日」)。公告及び報告前に株式買戻しを行うことはできない。 |
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1. |
株式買戻しの目的。 |
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2. |
株式買戻しの種類。 |
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3. |
株式買戻し総額の上限。 |
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4. |
予定する買戻し期間及び数量。 |
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5. |
買戻しの価格幅。 |
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6. |
買戻しの方法。 |
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7. |
報告時に既に保有していた会社株式の数量。 |
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8. |
報告前3年以内の会社株式買戻しの情況。 |
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9. |
既に買戻しを報告したものの、まだ買戻しが完了していない情況。 |
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10. |
取締役会による株式買戻し決議の会議録。 |
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11. |
株式を買戻して従業員に移転・譲渡する方法(記載すべき内容の詳細は、後述の「弐、二、(一)」)。 |
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12. |
株式を買戻して株式転換に用いる場合の転換又は株式引受方法。 |
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13. |
取締役会が既に会社の財務状況を考慮しており、買戻しが会社の資本維持に影響を及ぼさない旨の声明。 |
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14. |
株式買戻し価格が合理的なものであるとする、公認会計士又は証券引受会社の評価意見。 |
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15. |
その他のFSCが規定する事項。 |
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第一上場会社がFSCに報告するとき、上記の資料及び書類以外に、登録国の株式買戻しに関する法令規定及び会社定款を添付し、同時に、株式の買戻し、移転・譲渡及び消却の依拠、買戻し期間満了又は買戻し完了の後続処理を説明しなければならない。 |
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(二) |
第二上場会社は、取締役会でそのTDR買戻しを決議した日から2日以内に、TWSEの「公開資訊観測站」(マーケット・オブザベーション・ポスト・システム/MOPS)において、以下に掲げる事項を公告し(以下「TDR買戻し公告日」)、当該公告ページをダウンロードした資料及び関連書類を添付して台湾証券取引所に報告しなければならない。 |
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1. |
決議日及び決議方法。 |
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2. |
TDR買戻しの目的(株式変換並びに株式消却) |
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3. |
TDR買戻し総額の上限。 |
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4. |
予定する買戻し期間及び数量。 |
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5. |
買戻しの価格幅。 |
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6. |
買戻しの方法。 |
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7. |
買戻す予定の単位数が発行済みTDR総数に占める割合(%)。 |
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8. |
決議日前3年以内のTDR買戻しの情況。 |
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9. |
株式消却の予定日又は実行日。 |
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10. |
その他のTWSEが規定する事項 |
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第二上場会社の内部者が当該会社のTDR買戻し期間にTDRを売却したか否かを管理するため、第二上場会社は、前項の規定により公告する際、同時に、当該情報システムにおいて内部者の資料を報告又は変更しなければならない。 |
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(三) |
第一上場会社が買い戻した株式の数量の累積が発行済み株式総数の2%に達するごとに、又は金額が3億新台湾元(NT$300,000,000)に達するごとに、その事実が生じた日から2日以内に、買戻し日、その数量及び価格をTWSEの「公開資訊観測站」(マーケット・オブザベーション・ポスト・システム/MOPS)において報告しなければならない。 |
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(四) |
第二上場会社が買戻したTDRの数量の累積が発行済みTDR総数の2%に達するごとに、又はTDRを買い戻した結果、外部で流通する単位数が1200万単位に満たなくなった場合、その事実が生じた日から2日以内に、買戻し日、その数量及び価格をTWSEの「公開資訊観測站」(マーケット・オブザベーション・ポスト・システム/MOPS)において公告しなければならない。 |
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弐、 |
第一上場会社に適用される特別規範 |
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一、 |
株式買戻しの総額の制限 |
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第一上場会社による株式買入れの総額は、剰余金から、会社の取締役会又は株主総会で既に分配が決議されている余剰及び以下に掲げる既に積み立てられている資本準備金を差し引いた金額を超えてはならない。 |
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(一) |
まだ剰余金に入れられていない資産処分によるプレミアム所得。 |
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(二) |
株式発行によるプレミアム及び贈与受領の所得。但し、受領したものが当該会社の株式であれば、再売却前は計上しない。 |
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株式を買戻すことのできる金額につき、その計算は、公認会計士による監査又は審査を受けて法に基づいて公開された、取締役会決議前の直近期の財務報告を基準とする。当該財務報告は公認会計士によって「無限定審査意見」又は「標準審査意見」が出されていなければならない。但し、中間財務報告がもし長期の株式投資及びその投資損益を考慮して投資先会社の公認会計士の監査又は審査を経ていない財務報告に基づいて計算されたものであり、かつ公認会計士が作成した意見書に留保がある場合には、この限りではない。 |
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二、 |
株式を買戻し従業員に移転・譲渡 |
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(一) |
事前に移転・譲渡規則を定めなければならない。 |
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第一上場会社が従業員に株式を移転・譲渡するために株式を買戻す場合、事前に移転・譲渡規則を定めなければならない。移転・譲渡規則は少なくとも以下に掲げる事項を明記しなければならない。 |
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1. |
移転・譲渡株式の種類、権利内容及び権利が制限される情況。 |
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2. |
移転・譲渡期間。 |
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3. |
譲受人の資格。 |
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4. |
移転・譲渡の手続。 |
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5. |
取り決めた1株あたりの移転・譲渡価格。移転・譲渡価格は実際に株式を買戻した平均価格以上でなくてはならないが、会社が既に普通株を発行して株式数を増加しているとき、株式発行による増加率に応じて調整することができ、又は、株主総会の決議を経て、実際に株式を買戻した平均価格よりも低い金額で従業員に移転・譲渡することができる場合(詳細は、後述の「弐、二、(二)」のとおり)には、この限りではない。 |
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6. |
移転・譲渡後の権利義務。 |
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7. |
その他の、関連する会社と従業員の権利義務事項。 |
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(二) |
実際に株式を買戻した平均価格よりも低い金額で従業員に移転・譲渡する情況 |
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この種の情況は、発行済株式総数の過半数を代表する株主が出席した直近1回の株主総会で、出席株主の議決権の3分の2以上の同意を得なければならない。かつ、当該回の株主総会の招集事由に次に掲げる事項を列挙して説明しなければならず、臨時動議で提出することはできない。かつ、株主総会に提出して決議を求める事項は、会社定款に定めなければならない。 |
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1. |
所定の移転・譲渡価格、割引率、計算依拠及び合理性。 |
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2. |
移転・譲渡する株数、その目的及び合理性。 |
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3. |
新株引受権を付与される従業員の資格条件及び購入できる株数。 |
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4. |
株主権益に影響を及ぼす事項: |
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(1) 費用化可能な金額及び会社の1株当たりの余剰に対する希釈情況。 |
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(2) 実際に株式を買戻した平均価格よりも低い価格で従業員に移転・譲渡した場合、会社に生じる財務負担。 |
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これまでの各回の株主総会で通過し、実際に株式を買戻した平均価格よりも低い価格で従業員に移転・譲渡し、かつ既に従業員に移転・譲渡した株数の累計は、会社の発行済株式総数の5%を超えてはならない。かつ、新株引受権を付与された単一の従業員が実際に当該権利を行使して購入した株数の累計は、会社の発行済株式総数の5%を超えてはならない。 |
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参、 |
第二上場会社に適用される特別規範 |
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第二上場会社及びその株主は、当該会社がTDRを買戻す期間、及び、期間満了後又は買戻し完了後1ヶ月以内は、買戻しにより元の限度額が余ったとしても、TDRを再発行して売買することはできない。 |