ニューズレター
「代工(受託製造)」は商標使用であるか否か?
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商標法が規定する「商標の使用」は、販売を目的とする必要があり、かつ、商標法が国内法であり、属地主義を採用していることを参酌すると、商標法で規定されている販売区域は我が国の領域でなければならない。この販売という定義のもと、「代工」は商標法が規定する商標の使用行為であるのか否か、実務見解ではかなり意見が分かれる。 |
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智慧財産局(※台湾の知的財産主務官庁。日本の特許庁に相当)の2005年5月版「商標法逐条解説」(「商標法逐條釋義」)の見解によれば、受託者は委託者の指示を受けて商標を標示する商品を完成し、並びに委託者に納品する者であり、受託者には市場における販売という目的がないため、受託者自身は当然、当該商標の使用者ではない。したがって、「代工」という情況において、原則上、「代工」は依然として商標の使用に属しているようであるが、ただ、商標の使用者は加工製造を委託する商標権者であり、受託者ではない。しかし、もし受託者が受託商品を余分に製造して、一部を市場で販売しようとすれば、主観目的は既に「代工」から販売に転換しているため、商標の使用を構成しており、権利者の同意を得ずにこれを行うことはできない。 |
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しかし、注意すべきは、特に「回銷(※外国に所在する商標権者が台湾業者に商標商品の製造を委託し、製造されたすべての商品を当該外国に輸出させることをいう)」という情況について、現在の実務見解では、「代工」が商標の使用であるか否かをめぐる紛争に対して、登録商標使用面での認定と、商標権利侵害事件における判断が、それぞれ異なる見解を採用している点である。 |
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智慧財産局が2008年7月10日に公布した「登録商標使用に関する注意事項」の例示によれば、智慧財産局は「商標法に規定される商標の使用に係る販売区域は、我が国に限定しない」と判示している。智慧財産局は、次のように述べている。「商標法にいう『販売の目的』とは、不特定の人に自由に販売する行為を指し、販売市場の地域範囲には、国内市場における販売及び国内から国外への販売が含まれ、そのうち『国外への販売』とは、製品が我が国の領域から輸出されることを指し、その後続の商業取引行為は国外市場での販売であるものの、商標法の規定によれば、輸出を目的とする商品又はその関連物件上に、登録商標を標示する場合、その登録商標を使用したと認めなければならない。したがって、我が国で商標登録を行った商標権者がもし外国人であり、当該商標権者が国内の『代工』者に商標商品の製造を委託して、当該外国又は第三国に『回銷』するのであれば、貿易上、俗にいうOEM(委託加工製造)又はODM(委託設計製造)という商業行為に属し、たとえ当該これらの商品が直接、我が国の国内市場で販売されなかったとしても、確かに我が国の国内で製造されており、このタイプの商標使用の方法は国内業者が從事する国際貿易の商業取引習慣にも合致しているため、商標権者の『回銷』行為は当該登録商標の使用と認めることができる」。 |
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しかし、商標権侵害の情況においては、外国の商標権者又は国内の受託者の「回銷」行為について、現在、裁判所の見解の多くが、商標使用行為であると認めていない。商標法の規定によれば、我が国の商標権者の同意を得ずに、我が国で商標を使用することは原則として商標権侵害を構成する。しかし、同一商標について外国にべつの権利者が商標権を取得した場合、現在、裁判所の多くの実務見解では、次のように認めている。「外国の商標権者の委託を受けて、我が国で『代工』し、商標を附した後、直接、当該商品を委託者が商標権を享有する国又は地区に運ぶのであれば、我が国の『代工』者は、当該『代工』商品を我が国の市場で販売していないので、商標の使用を構成しない。したがって、たとえ我が国の商標権者の同意を得ずに、既に我が国で商標登録をしている商標を附した商品を生産、製造しても、我が国の商標権者の商標権を侵害しない」。 |