ニューズレター
中国は今後「馳名商標」の事前認定を受理せず
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中国の商標法でいう「馳名商標」とは、台湾の商標法で規範される「著名商標」のことである。台湾の商標法で規範される著名商標の認定は、個別案ごとに智慧財産局(※台湾の知的財産主務官庁。日本の特許庁に相当。)、経済部訴願審議委員会又は裁判所が証拠に基づいて斟酌する。中国の「馳名商標」は、現在のところ、商標権権利侵害事件、又は商標登録や商標審査の過程において紛争が生じたときに限り、裁判所又は商標局、「商標評審委員会」(「商標審査委員会」)が認定する。最近メディアで報道された「中国の『馳名商標』に該当するか否かは、事前の届けによって、認定することができる」などの関連情報が誤解であることに鑑み、智慧財産局は特別にニュースリリースを公布し、中国の「馳名商標」の認定について、外部に向けて明確な説明を行った。 |
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智慧財産局は次のように述べている。 |
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「2002年以前、中国の『馳名商標』の認定は事前申請制度を採用しており、商標権者が必要であると認めるのであれば、たとえ商標が如何なる紛争にも関連していなくても、中国の『国家工商行政管理総局』(以下、『工商総局』)に対し、『馳名商標』として認定するよう申請することができた。その後、行政機関が商標の知名度の評価・判定に熱中するようになり、はては中国ブランド制度までつくられ、各省市も『馳名商標』の認定件数の多寡を施政実績とするようになったため、『実際の個別案ごとに認定・保護を行う』という原則に反するとして、批判の声があがった。『馳名商標』の認定と管理を法制化するため、中国は2002年に商標法及び実施条例を改正・公布し、商標登録、商標審査の過程において紛争が生じた場合にのみ、当事者がその商標は『馳名商標』を構成すると認めたものにつき、商標局又は『商標評審委員会』に認定を請求することができる、と規定し、また『馳名商標認定和保護規定』(『著名商標の認定及び保護に関する規定』)及び『国家工商行政管理総局馳名商標認定工作細則』(『国家工商行政管理総局による著名商標認定作業細則』)を次々と公布して、受理認定機関及び認定手続きなどの細かな規定を明確に定めた」。 |
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「このほか、中国の最高人民裁判所は《最高人民法院関於審理渉及電脳網路功能変数名称民事糾紛案件適用法律若干問題的解釈》(《ドメインネームにかかわる民事紛争案件の審理における法律の適用から生じる問題に関する最高人民裁判所の解釈》)及び《最高人民法院関於商標民事糾紛案件適用法律若干問題的解釈》(《商標民事紛争案件の審理における法律の適用から生じる問題に関する最高人民裁判所の解釈》)などの規範を公布し、裁判所はドメインネーム又は商標権権利侵害民事紛争案件を審理する際にも、登録商標が著名であるか否かについて認定を行うことができる旨明確に規定した。また、2009年4月には《最高人民法院関於審理渉及馳名商標保護的民事糾紛案件応用法律若干問題的解釈》(《著名商標保護にかかわる民事紛争案件の審理における法律の適用から生じる問題に関する最高人民裁判所の解釈》)を公布して、『当事者が、商標が著名であることを事実の根拠とし、人民裁判所が確かに必要であると認める場合、それが著名であることを証明する事実を依拠とし、案件の具体的な情況に基づいて、関連する商標が著名であるか否かにつき認定を行わなければならない』と明確に定めた。但し、『馳名商標』保護にかかわる民事紛争案件において、『馳名商標』についての認定は、案件の事実と判決理由とするだけであり、判決主文には記載しない。」。 |
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最後に、智慧財産局は、「『馳名商標』は、商標が中国で既に十分認知されているか否かを立証するものであり、かつ権利者自らが立証する必要があり、『馳名商標』の使用証拠を提出する際、主として、中国の関連事業者又は消費者が当該商標を既に熟知していることを証明する」と特に指摘している。台湾又はその他の国での証拠資料については、依然として、当該商標の使用情報が既に中国にまで伝わっていることを証明する事実証拠を主とし、たとえば、中国で企業又は商標商品に関連する情報や、中国から台湾へ観光若しくはビジネスなどでやって来た人数の統計データが新聞に掲載されている、又は、台湾桃園国際空港若しくは台北松山国際空港に専門コーナー若しくは電光広告が設置されていることや、広告が掲載されている国際的な雑誌若しくは関連市場占有率に関する報道などが、中国で発行若しくは公開されていることを立証する証拠とすることができ、また、企業のウェブサイトで統計した中国からのクリック数及び中国からの注文数又は問合せ情況に係るデータ、特に係争商標の商標出願人又は権利者、若しくはそれが属する地域由来の関連情報などを提出して証明することもできる。 |