ニューズレター
台湾大哥大(Taiwan Mobile)の凱擘買収を条件つきで容認
行政院公平交易委員会(「公正取引委員会」。以下公平会「公平会」という)は2009年12月2日に、台湾大哥大股份有限公司(以下、「申請人」)が盛庭、凱擘股份有限公司及びその支配下にあるケーブルテレビ(CATV)システム会社12社との結合案を申請したことに関して、「公平交易法」(※日本の「不正競争防止法」「独占禁止法」の要素が含まれる。)第12条第2項の規定により、条件つきで、その結合を容認する旨の決議を行った。 |
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申請人は国内第2の携帯電話及び固定回線接続サービス業者であり、CATV会社4社に出資している。凱擘公司(KBRO、以下、「凱擘社」)は外国資本である凱雷集団(Carlyle Group)が台湾に設立した会社で、CATV会社12社に出資している。今回の取引は申請人が凱擘社及びその支配下にある12のCATV会社を買収しようとするものであり、買収完了後、申請人のコントロールするCATV会社の加入者数は全国加入者数の3分の1に迫る。公平会は、「本結合案が携帯電話及び固定回線サービス市場に及ぼす影響は軽微である。CATVシステムサービス市場及び衛星放送テレビプログラム供給市場に対しては、依然として、一部競争制限の疑いがある。但し、デジタル通信接続サービス市場(又はインターネット接続サービス市場)に対しては競争促進効果を有する」と指摘している。 |
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公平会は、現行の法令、規則、法的枠組み、関連市場構造と競争、各界からの意見、今後の技術開発動向及び将来市場への自由競争の維持などの要素を総合的に考慮し、本案が経済全体にもたらす利益が競争制限により生じる不利益より大きいと認め、「公平交易法」第12条第2項の規定により、条件つきでその結合を容認した。条件は、以下の10項目である。 |
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1. |
申請人は本結合決定書を受領した日の翌日から1年以内に、申請人が直接又は間接的にコントロールするCATVシステム会社のうちの1社の全株式を処分しなければならない。 |
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2. |
申請人及びそれがコントロールする子会社は、本結合決定書を受領した日の翌日から3年間、代表者を指名・派遣して紅樹林有線電視股份公司の取締役、監査役、「総経理」(※台湾における企業統治システムにおいて執行役の最高責任者のこと。日本語では「社長」と訳出されることも多い)などの職務に就かせてはならない。 |
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3. |
申請人及びそれがコントロールする子会社が、本結合決定書を受領した日の翌日から3年の間に、自ら制作し、代理販売したアナログ衛星放送テレビプログラムが合計21本以上であってはならない。 |
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4. |
申請人及びそれがコントロールする子会社が自ら制作し代理した衛星放送テレビプログラムは、正当な理由なく、その他のCATVシステム経営者、直接衛星放送テレビサービス経営者、マルチメディア情報伝送サービス経営者、或いはその他の競争関係を有する有線又は無線ネット信号のチャンネルサービス提供者に放映・配信させることを拒絶することはできず、又はその他の差別待遇を行ってはならない。 |
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5. |
申請人及びそれがコントロールする子会社が自ら制作し代理した衛星放送テレビプログラムは、正当な理由なく、異なる価格又は価格以外の条件で、その他のCATVシステム経営者、直接衛星放送テレビサービス経営者、マルチメディア情報伝送サービス経営者、又はその他の競争関係を有する有線若しくは無線ネット信号のチャンネルサービス提供者に放映・配信させることはできない。 |
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6. |
申請人は本結合決定書を受領した日の翌日から3年間は、毎年7月1日までに、申請人及びそれがコントロールする子会社が自ら制作し代理販売した衛星放送テレビプログラムの名称及び代理契約書を本委員会に提出して、その審査を受けなければならない。 |
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7. |
申請人は本結合決定書を受領した日の翌日から3年間は、毎年7月1日までに、申請人及びそれがコントロールする子会社が自ら制作し代理販売した衛星放送テレビ番組のオファー、放映料、優遇方式、販売対象などの取引情報を当委員会に提出して、その審査を受けなければならない。 |
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8. |
申請人は本結合決定書を受領した日の翌日から3年間は、毎年7月1日までに、申請人及びそれがコントロールする子会社のインターネット各種サービスの価格、その他主要なデータ通信受信業者のブロードバンドインターネット相互接続費用を本委員会に提出して、その審査を受けなければならない |
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9. |
申請人及びそれがコントロールする子会社は、本結合決定書を受領した日の翌日から6ヶ月以内に、それが属するCATVシステムのブロードバンドインターネット相互接続費用のオファーにつき、接続量を価格計算の基礎とする又は適当な相互接続無料のシステムを採用しなければならない。 |
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10. |
申請人及びそれがコントロールする子会社は、本結合決定書を受領した日の翌日から3年の間、それが属するCATVインターネットシステムにつき、以下に掲げる経済利益全体に有益な事項を履行しなければならない。 |
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A. |
CATVのデジタル化及びCATVシステムインターネットの双方向化を積極的にすすめることによって、消費者の番組選択の自由を増進する |
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B. |
電信、CATVネットワーク及びサービスの「開放式ネットプラットフォーム」、「ユーザー側バスインターフェース」及び「顧客サービスバスプラットフォーム」など、デジタル化に有利な開放式共通プラットフォーム計画を着実に実行する。 |
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C. |
ブロードバンドインターネット接続サービス市場において、現有の主要なデータ通信接続サービス経営者(ISP)に、比較的有利な価格、数量、品質、サービス又はその他の取引条件を提供し、競争に参加する。 |
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「有線廣播電視法」の規定によれば、システム経営者とその関係企業及び直接又は間接的にコントロールするシステム経営者の契約者数の合計は、全国の総契約者数の3分の1を超えてはならない。本案完了後、申請人がコントロールするシステム局の契約者数は全国の総契約者数の3分の1近くとなるため、公平会がつけた条件の1つは、申請人が直接又は間接的にコントロールする有線放送テレビシステム会社のうちの1社の全株式を1年以内に処分するというものであった。本案は、「公平交易法」が改正され申請制が採用されて以来、公平会がはじめて資産処分の条件つきで結合を容認する旨の決定を行ったケースであり、今後の案件にとって指標的な意味をもつケースである。 |