ニューズレター
株主が元の議案につき改正案を提出し、役員選挙方式を「全額連記法」に変更することは適法
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最高裁判所はその2009年台上字第923号判決において、株主が改正案を提出する方式で会社定款を改訂して取締役及び監査役の選挙方式を「累積投票制」から「全額連記法」に変更し、当該回の株主総会において、新たに改訂された当該定款に基づいて、直ちに取締役・監査役の改選を行う手続きが適法であるか否かにつき、次のような、注目に値する見解を示した。 |
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1. |
「会社法」(「公司法」)にいう「臨時動議」とは、その場での議題の提出が、直ちに「臨時動議」に属すわけではなく、会議過程において、議題として提案し討論する特定の項目(手続き)がない場合に、動議の手続きに従い進められる事項をいう。会議の過程においては、もともと既に特定の手続きがあり、当該各手続きにおいて提案又は討論が行われたのであれば、同法にいう「臨時動議」ではない。したがって、いわゆる召集事由は、単に会議の内容・主旨及び手続きを表明するもので、その事件のあらまし、主旨という意味であるのため、「取締役、監査役の改選」、「定款の変更」又は「会社の解散、合併又は分割」といった事項を記せば十分であり、提案の具体的な内容を詳細に記す必要はない。また、「会社法」の規定によれば、株主総会の定款変更という議題は召集事由に「記載」しなければならず、「臨時動議」をもって提出することはできない。よって、定款の変更を召集事由とする場合、召集通知の召集事由にこれを記載する必要があり、臨時動議をもって提出することはできないが、修正しようとする定款の条項を詳細に記さなければならないわけではない。 |
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2. |
会社法に基づき制定する「議事手帳規則」によれば、議事手帳に明記しなければならないものは、定時株主総会の招集権者が提案した議題である。定時株主総会が取締役会によって招集されている以上、総会開催通知及び議事手帳で情報開示される内容は、招集権者である取締役会の提案した議題の内容及び説明資料である。改正案は株主が株主総会において提出したものであり、取締役会の提案ではないため、議事手帳に記載しなければならない内容には属さない。会社が既に定款変更という議題内容を株主総会前に開示している以上、招集手続きは会社法及び「議事手冊弁法」に違反しない。 |
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3. |
株主は、定時株主総会の議題につき提案権を有する以上、取締役会が事前に準備した提案についても、改正案を提出する権利を有するはずである。株主が「株主総会議事規則」(「股東会議事規則」)の規定により、株主総会で、既に議事過程に組み込まれている定款変更案について定款改訂の議題を提出することは、係争株主総会議案につき修正案を提出するものであり、「臨時動議」には属さない。 |
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4. |
株主が株主総会において取締役及び監査役を改選する前に、定款修正を提案することによって「累積投票制」の適用を排除することは、会社内部の自治事項であり、且つ「全額連記法」をもって取締役・監査役の選挙方式とすることも現行法で認められている方法である。したがって、決議過程において株主権益侵害又は株主平等原則違反という問題はなく、ましてや、公共利益に反するという事由はない。たとえ「全額連記法」をもって取締役・監査役を選任するという投票方式が会社の株主権益に対して比例原則に合致しないという疑義があっても、これは現行法では認められており、立法・改正を待たなければ争うことのできない問題である。したがって、法律改正前、即ち現行法においては、株主総会が法により定款を修正し、「全額連記法」をもって取締役・監査役を選任することが、直ちに権利濫用であるとは言えない。 |
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5. |
会社定款は登記すべき事項であるものの、登記は対抗要件であり、発効要件ではないため、会社定款は修正と同時に発効する。会社法の規定によれば、会社の剰余金分配は毎年1回行われ、会社は会計年度終了後に剰余金がある場合、取締役会が会社定款により剰余金分配議案をまとめ、会社法の保障する株主権益の関連手順規定を実行しなければならない。かかる規定によれば、剰余金分配の議案は「前年度財務決算書」を基礎としなければならず、余剰金は、損失を補填し且つ法定積立金として剰余金の一部を提出した後に分配することができ、分配議案は「議案作成時に既に発効している定款」を依拠としなければならず、且つ、取締役会を経て株主総会に提出され、その承認を受けなければ、株主に分配することができない。一方、取締役・監査役の選挙は前年度を基準とするものではなく、まず法定手続きを行わなければならないという問題はない。よって、修正、発効した選挙方式を適用すれば、株主の意見を直ちに反映させることができる。 |
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