ニューズレター
使用許諾を受けずに、他人の商標を英語の会社名称とすることはできない
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「他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら、同一又は類似の商標を使用し、又は当該著名商標中の文字を自己の会社名称、商号名称、ドメインネーム、或いはその他の営業主体又は供給元を表彰する標識とし、著名商標の識別性又は信用を損なう場合」、「他人の登録商標であることを明らかに知りながら、当該商標中の文字を自己の会社名称、商号名称、ドメインネーム、或いはその他の営業主体又は供給元を表彰する標識とし、商品又は役務に関連する消費者に混同誤認を生じさせる場合」、商標権の侵害と見なす。このことは、商標法第62条第1号及び第2号に明文規定が置かれている。しかし、当該条号にいう「会社名称」又は「商号名称」に英語の会社名称又は商号名称が含まれるか否かについては、実務見解においてかなりばらつきがある。 |
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智慧財産局(※台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)は、2005年5月31日に改正した「商標法逐条解釈」(「商標法逐条釈義」)において、商標法第62条第1号及び第2号にいう「会社名称」、「商号名称」とは、「会社法」(「公司法」)及び「商業登記法」のなかの会社名称及び商号名称を指す、と指摘している。会社法又は商業登記法には会社又は商号が英語の名称を選択し使用することについて規定されていないため、定款に明確に規定する必要もなく、たとえ定款に規定を加えたとしても、登記の効力は生じない。したがって、智慧財産局の見解に基づくのであれば、他人の商標を英語の会社名称又は商号名称とすることが、商標法第62条第1号及び第2号の規定に違反するか否かは、確かに疑わしい。 |
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しかしながら、知的財産裁判所は2008年11月13日に97年度民商上更(一)字第1号民事判決で、「商標法第62条第1号及び第2号には、 当該条号が中国語の名称にしか適用されない、とは明確に規定されておらず、また会社法又は商業登記法に基づいて定める名称に限定されてもいない。したがって、当該条号は他人の商標を英語の会社名称又は商号名称とすることも禁止ししているはずである」と判示した。ましてや、会社法及び商業登記法はわずかに会社名称に対して規定を設けている数多くの法令の一部にしかすぎず、決して唯一のものではない。貿易法の規定によれば、輸出入業務を行う場合には、国際貿易局に対して会社の英語名称の登記を行う必要がある。 |
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裁判所は当該判決において、智慧財産局の逐条解釈は行政機関の法律条文に対する解釈にしかすぎず、司法機関に対して拘束力はない、とも指摘している。ましてや、法律についての最終的な解釈権は、行政機関又は立法機関ではなく、 依然として司法機関に属し、したがって、智慧財産局の前記の解釈は、当該案件の法律適用の依拠とすることはできない。 |