ニューズレター
商標の混同誤認の判断
2つの商標間に混同誤認の虞があるか否かの判断は、「商標の識別性の強さ」、「商標が類似しているか否か及びその類似の程度」、「商品/役務が類似しているか否か及びその類似の程度」、「先に権利を所有した者による多角経営の状況」、「実際に混同誤認する状況」、「関連消費者の各商標に対する知悉の程度」、「係争商標の登録出願人が善意であるか否か」及び「その他の混同誤認の要素」等、関連要素を考慮しなければならず、このことは「混同誤認の虞」審査基準第4点に明記されている。しかしながら、具体的な案件につき、前述の各要素を総合的に斟酌すべきなのか、或いはそのうち1項又は数項の要素のみに依り認定することができるのか、実務見解上、依然として議論がある。
最高行政裁判所は2007年度判字第1958号判決において、各要素を総合的に斟酌しなければならない、と判示した。本件商標の無効審判請求案件の原審判決及び訴願決定は、「商標が類似しているか否か及びその類似の程度」という1要素のみを以って商標に混同誤認の虞があるか否かを判断し、知的財産局(※台湾の知的財産主務機関。日本の特許庁に相当)の無効審判不成立の処分を取り消しており、これについて最高行政裁判所は、「原審判決及び訴願決定はその他の関連要素を斟酌せずに判断を下している」と認め、原審判決を廃棄し、並びに訴願決定を取り消して、訴願決定機関である経済部に本案の審理を改めて行なうよう命じた。
また最高行政裁判所は、「商標が類似しているか否か及びその類似の程度」に係る紛争について、「混同誤認の虞」審査基準第5.2.5点の規定を説明し、「2つの商標の外観、観念又は称呼のうちいずれか1つが類似していれば、商標全体の印象が当然類似すると推論できるわけではなく、依然として、その類似の程度が商品/役務の消費者の混同誤認を引き起こし得るくらい大きいか否かを以って類似を判断する依拠としなければならない」と強調した。当該項の見解は、これまでの実務上の見解、即ち、2つの商標の外観、観念又は称呼のうちいずれか1つが類似していれば、商標類似と認定する見解を覆すものである。