ニューズレター
複数の登録済み著名商標の同時使用は、必ずしも商標権侵害を構成するとは限らない
商標権者の同意を得ずに、同一又は類似の商品又は役務において、その登録商標と同一又は類似の商標を使用する場合、商標権の侵害を構成する可能性がある。このことは「商標法」に明文規定が置かれている。但し、異なる商標権者の商標を同時に使用した場合、即、商標権侵害を構成することになるのか否かについて、裁判所は異なる見解を有する。
新竹地方裁判所の2006年5月15日の95年(西暦2006年)度易字第15号刑事判決は、Michelin、West、Mercedes Benz、Boss、Hugo Boss及びBridgestone等多くのブランドの商標をつなぎの作業服に同時に使用した案例について、「商標権侵害を構成しない」と判示している。裁判所は「本案被告による異なる商標の同時使用は単純な衣服の裝飾にすぎず、決して商品の供給源を表彰する商標使用ではなく、ましてや、消費者の混同誤認を生じることはない」と認めている。本案は検察官によって上訴されたが、台湾高等裁判所は2006年9月15日の95年(西暦2006年)度上易字第1477号刑事判決で新竹地方裁判所の見解を維持し、検察官の上訴を却下した。
新竹地方裁判所及び台湾高等裁判所の当該判決は単一の個別案に対する見解にすぎないものの、将来、商標保護が存在の危機に陥る可能性があることを明示しており、商標権侵害案方面のみならず、同じような情況が商標登録出願案においても発生する可能性がある。もし、異なる著名商標を結合して商標登録出願を提出し、混同誤認を生じる或いは登録済み又は既に使用されている商標の識別性又は商業上の信用や名誉を損なう虞がないと認定され、登録が許可されるのであれば、先に登録又は使用していた商標の商標権者にとって大きな打撃となる。