ニューズレター
先行通知義務遂行時に合致しなければならない明確性原則
台北高等行政裁判所は、2006年6月に、智慧財産局がFujifilm Electronic Materials USA, Inc.(中国語名は「美国富士軟片電子材料公司」)の特許出願案に対して行った「特許を付与しない」旨の処分を取り消す判決を下した。
裁判所は、その2005年度訴字第1414号判決において、「智慧財産局は専利法の規定により、特許を付与しない旨の査定を下す前に『先行通知義務』を果たし、『拒絶理由先行通知書』において、特許出願に係る発明が引用証拠である従来技術に既に開示されていることを出願人に知らせてはいるが、智慧財産局の理由説明は極めて疎略であり、技術内容については具体的な比較説明が為されておらず、各請求項についても請求項ごとに説明されていない。その結果、出願人は(何について答弁を行えばよいのか)拠り所のないまま答弁することになった。これは既に『明確性原則』に違反しており、専利法が特許出願人の応答手続き権を保障する立法目的に、明らかに合致していない」と判示している。このほか裁判所は「智慧財産局は行政訴訟手続きの段階になって、ようやく、引用証拠である従来技術文献と(係争特許出願の)各請求項について技術内容を逐一比較している。かかる理由不備に対する補正は、行政手続法第114条が規定する法定期間、即ち行政機関が『理由不備』を補正する場合には『訴願手続き終了前にこれを為す』必要があるとする法定期間を過ぎて為されたものである。故に、その補正は合法であると認めることができない。」とも判示している。
台北高等行政裁判所は前記判決において、智慧財産局が特許審査時に遂行しなければならない「先行通知義務」、「理由説明義務」及び守らねければならない「明確性原則」を再度示し、さらに特許出願人の「答弁手続き権」を説明し、智慧財産局が特許審査行政手続きを処理する際、履行しなければならない行為や義務、及び当事人の手続き権利に対する注意について、重要な手引きを与えている。