ニューズレター
「専利審査基準」改正:無効審判及び職権による審査
経済部智慧財産局は先日「専利審査基準」(※中国語の「専利」には発明特許、実用新案登録、意匠登録の意味が含まれるので、混乱を防ぐために、原文のまま「専利」と表記する)第五篇(専利無効審判及び職権による審査)を完成し、並びに2006年7月25日に改正後の基準を公告し、該改正基準は即日施行された。
今回の改正の主な重点は、第5.1節及び第5.3節の以下の規定にある。
5.1審查の基本原則
1. 書面審查
無効審判手続きの進行は、無効審判の提起、答弁等、いずれも書面を以って行うのが原則である。無効審判案の審査は原則として当事者が提出した書面資料により審査しなければならず、並びに面談、実験、模型、サンプル又は実地検査の結果を参酌することができ、作成した査定書は当事者に送達されなければならない。
2. 処分権主義
許可を受けた専利に対し、何人も専利法の規定に違反する事情があると認めて無効審判を提起する場合、理由及び証拠を明記した申請書を専利主務官庁に提出して、かかる無効審判提起をしなければならない。このことは専利法第67条、第107条、第128条に明確に定められている。また、無効審判を提起できるか否か、無効審判の範囲については、いずれも無効審判請求者の主観的な要望において決定される。この原則は訴訟法上の処分権主義を手本としている。
3. 争点整理
処分権の枠組みのもと、無効審判の審査ではまず争点を明らかにしなければならない。無効審判事件の双方の当事者が、審査の前にまず優先的に整理しなければならない事項は、無効審判請求状、答弁状における、法律、事実、証拠等を含む争点であり、その後の無効審判手続き中の処理及び審査は、整理された争点について為されなければならない。
4. 争点範囲内の証拠調査
無効審判審査中において、専利主務機関はもとより当事者が主張していない事由を自発的に新たに増加しすること又は新たな証拠を提出することはできないが、真実を発見し必要があると認めた場合には、依然として争点範囲内で証拠を調査しなければならない。証拠について合理的な範囲内で電話による聴き取り調査を行う場合には、電話調査記録ファイルを作成して審査に備えなければならず、かかる記録ファイルを作成してはじめてこれに基づいて参酌することができる。必要時には通達を出して電話調査の相手に関連資料を提出するよう要請することができる。
5. 解明権の行使
無効審判案中、もし当事者が主張する法規、陳述する事実、表明する証拠等紛争理由に関する記載が明確でなければ、該争点の内容を十分に理解することができず、且つこれに基づいて正確な判断を行うことができない。したがって、紛争内容を明確にするため、解明権を行使してこれを補い、当事者の表明又は陳述した内容に不明確、不十分、不適当な部分があれば、当事者にかかる不明確、不十分、不適当な部分について「釈明」又は「補充説明」(又はその他類似する用語)するよう通知し、その真意を確認しなければならない。解明権の行使については、紛争発生を回避するため、当事者に新たな理由又は新たな証拠を「増加」又は「追加」(又はその他類似する用語)するよう通知することはできない。
5.3 証拠
1. 挙証責任
当事者はその主張について挙証責任を負い、その主張を十分に支持することのできる証拠を提供しなければならない。同一の事実について、主張を提出した一方の当事者が先に証拠を挙げ、その証拠の表明する事実が確認されたとき、挙証責任はもう一方の当事者に移転する。もう一方の当事者が該事実を覆すに足る証拠を提出することのできない場合、該事実について認定することができ、もし該事実を覆すに足る証拠を提出した場合には、挙証責任は主張を提出した者に再度移転する。
2. 自由心證
証拠の説明力については、法律の規定を以って拘束又は制限することはできず、専利主務機関の自由判断に任されているが、これは専利主務機関が任意に判断できるということではない。専利主務機関は無効審判の審査につき、憶測又は軽率に判断することのないよう、当事者の主張する事由、証拠能力の有無、証明力の強さ及び証拠の取捨等、無効審判請求状や答弁状の全ての資料及び証拠調査の結果を斟酌し、客観的な倫理法則及び経験則に則って事実の真偽を判断しなければならず、並びに判断結果及び心証を得た理由を査定書に記載しなければならない。
3. 論理法則
論理法則とは、推理、演繹的なロジックの規則を指し、即ちロジカルな分析方法をいう。対象となる事実の真偽を判断する際、ロジック上の推論又は推理の論理法則に反してはならない。
4. 経験則
経験則とは、日常の経験の帰納から得る事物の因果関係又は性質状態などの知識又は法則をいう。経験則を証拠の証明力を判断する基礎とし、生活経験上、客観的に確実であると認められる定則に則って判断しなければならない。
5. 証拠の調査、証拠の採用
無効審判請求の証拠を採用するか否かは、まずその証拠能力の有無を判断した後、その証拠力の有無を判断しなければならない。証拠能力がないのであれば、その証拠力を論じる必要はない。証拠能力を有するとは、証拠が証拠として適格な能力を備えており、証拠として使用できることを指す。即ち証拠資料が形式上、引用証拠たる資格を備えているか否かを判断する。証拠力は証拠価値ともいい、証拠の対象事実に対する証明価値を指し、即ち証拠が事実認定に対して及ぼす影響力である。
6. 補強証拠と新証拠
補強証拠とは、同一の基礎事実に基づいた関連性のある証拠であり、その目的はもともとの証拠の証拠力を合理的に強化することにある。新証拠とは、原争点範囲を超えて、もともとの証拠と同一の起訴事実を備えていない証拠を指す。無効審判請求前に無効審判請求人から提出された理由又は証拠は、補強証拠であるか新証拠であるかを問わず、全て審査しなければならない。また、原処分が行政救済機關によって取り消されたものの、特許主務機関の審査段階で回復された場合、補強証拠か新証拠かを問わず、全て受理しなければならず、相手方には補充答弁を行うよう通知しなければならない。
7. 書面証拠の審査
無効審判請求証拠が書類である場合(例えば刊行物、「統一発票」〔※台湾政府発行のインボイスの一種〕、契約、輸出入書類など)、原本又は正本を提出しなければならない。提出された原本又は正本は特許主務機関に保存されなければならず、当該無効審判請求案の審査確定後に返還されるが、当事者が別途使用する場合、特許主務機関は、証拠を検めて問題がないことを確認した後、返還することができる。
8. 外国語版と中国語訳版
特許出願及び特許関連事項を処理する書類には中国語を使用しなければならない。証明書類が外国語である場合、特許主務機関が必要と認める際には、出願人に中国語訳版又は抄訳版を提出するよう通知することができる。もし、外国語の書類証拠中に、既に比較対照に足る図面がはっきりと開示されており、中国語訳版がなくても審査することができる場合、中国語訳版を提出する必要はない。中国語訳版は証拠本体ではなく、仮に中国語訳版が外国語版と一致しないか又は当事者が期限までに中国語訳版を補充提出しない場合には、依然として外国語版の証拠により審査しなければならない。