ニューズレター
「專利法」改正案
経済部智慧財産局は既に「専利法」改正に着手しており、当該智慧財産局はこれまでに数回公聴会を開いて、以下のような内容改正案について討議した。現在既にわかっている改正提案内容を以下に略述する。
1.「専利法」第57条第1項第1号及び第2号の改正
医薬産業について言えば、特許権を有する先発医薬品メーカーと後発医薬品メーカー、これら双方の利益の調和を図るため、現行の「専利法」では、特許権医薬品メーカーがその他事業主務官庁の許可証を取得するのに要する時間に対して、「専利法」第52条により、申請によって特許権存続期間を2~5年延長することを認めている。しかし、後発医薬品メーカーについては、それが新薬特許権保護期間満了後に速やかに市場に参入できるよう、後発医薬品メーカーが承認申請のために行う試験行為は、「専利権」効力の及ばないものとしなければならず、そうすることではじめて公共利益に合致する。
現行の「専利法」第57条第1項第1号の規定(2003年 2 月 6 日改正)によれば、研究、授業又は試験のためにその発明を実施し、営利上の行為ではないものには発明特許権の効力は及ばない。しかし、薬事法第40之2第5項の規定 (2005年 2 月 5 日、EU法制を参酌して改正)によれば、新薬特許権は医薬品事業者が承認申請前に行う研究、授業又は実験には及ばない(さもなければ、新薬特許期間中に実験を行って後発医薬品開発の準備をすることは、我が国の「専利法」第57条第1項規定に違反するおそれがある)。現行の「専利法」及び薬事法の関連規定については前記の問題をめぐって紛争があるため、智慧財産局はこれまでに衛生署と、現在の薬事法第40条之2第5項と「専利法」第57条第1項第1号に規定される特許権效力が及ばない事項及び後発医薬品が実務応用上生産可能であるという問題等について討議を行ってきた。衛生署は、薬事法第40条之2第5項の規定の削除、並びに「専利法」第57条第1項第1号中の「授業」、「営利の行為でないもの」といった言葉の削除、並びに当該項規定の立法理由に医薬品事業者が承認申請のために行う実験行為は現行「専利法」第57条第1項第1号の特許権適用例外の範囲内に属する旨明記することで、現在の後発医薬品メーカーが実務上遭遇する特許権侵害問題を解決することを提案した。
以上に基づいて、智慧財産局は「専利法」第57条の規定を以下のように改正した。
(1)ヨーロッパ各国の法制を参酌し、「商業目的ではない個人的な行為」に特許権の効力は及ばない旨追加する(「専利法」第57条第1項第1号として追加する)。
(2)「研究又は実験のためにその発明を実施する」ことに特許権の効力は及ばない旨明確に規定する(現行「専利法」第57条第1項第1号を改正した後、同条第1項第2号に移動する)。
2.動物・植物自体の特許保護開始
「行政院生物技術産業指導小組」は2005年8月23日付委員会で、動物や植物自体の特許保護の開放を決議した。前述の決議を実行するため、智慧財産局は「専利法」を改正し、動物や植物自体の発明特許の保護を認め、これによってバイオテクノロジー産業の発展を図る。智慧財産局が提出した今回改正の立法説明の内容は、以下のとおりである。
(1)現行の「専利法」第24条1号の規定によれば、動物や植物自体の発明特許は特許の保護を受けることができない。そこで同条第1号の規定を削除し、動物や植物自体の特許保護を全面的に開放する。
(2)「動物や植物を生み出す主な生物学的方法」(たとえば、有性生殖)は偶発的要因によって決定されることが多く、通常、人為的な技術介入は決定的な影響を及ぼすものではなく、当該方法によって達成を目指す目的又は効果の再現性は低い。したがって、第26条第2項の「それに基づいて実施することができる」との要件に合致しない。このほか、当該方法もまた、そこに介入する人為的技術はおそらく当該技術の属する技術分野において通常の知識を備える者が出願前の技術に基づいて容易に完成できるものであり、第22条第2項の進歩性要件に合致しないため、「専利法」に別段の規定が置かれている、法定の「特許を受けることのできない対象」とするまでもない。
(3)人類及びクローン人間を生み出す方法は「公序良俗に反する又は公衆衛生を害する」ものであり、依然として改正条文第2号の特許を受けることのできない事由に属する。
動物や植物自体の発明特許について特許保護が開始されることを受け、並びに動物や植物自体の発明特許権の本質的な属性を考慮し、智慧財産局は「専利法」のその他関連条文 (例:特許権効力の及ばない範囲の規定)を改正する。智慧財産局は2006年5月11日に公聽会を開き、各界の意見を広く集め、これを将来の法改正時の参考とする。
3.「専利法」第76条之1及び第76条之2の改正
「貿易に関連する知的財産権協定」(以下「TRIPS協定」という)第31条には、強制実施権の規定が置かれているものの、世界貿易機関(以下「WTO」という)加盟国は国家の危急時又はその他の緊急事態に対応するため、或いは公益の増進を目的とする非営利的使用の場合には、強制実施権により必要な医薬品を製造することができる。しかし、当該条第f号には、強制実施権の下で製造される医薬品は国内市場の需要への供給を主としなければならない旨の制限規定が置かれている。したがって、多くの発展途上国及び後発発展途上国は、関連規定により医薬品特許の強制実施権を取得することができるものの、特定医薬品が当該国で特許権を有していない場合、若しくは当該国に製薬能力がないか又は製薬能力が不足している場合には、依然として必要な医薬品を入手することができない。
我が国の強制実施権に関する規定は「専利法」第76条から第78条に置かれており、そのうち第76条第1項には「その実施は国内市場の需要に供給することを主としなければならない」と明確に規定されている。我が国の国民がこのメカニズムを利用して、発展途上国及び後発発展途上国が法に従い強制実施権により必要な医薬品を入手するための援助ができるよう、智慧財産局は既に「専利法」改正に着手しており、以下のような条文の追加を提案している。
第76条之1
製薬能力のない、又は製薬能力の不足している国がエイズ、肺結核、マラリア及びその他の伝染病の治療に必要な医薬品を入手することを助けるため、特許主務官庁が申請により申請者に特許の強制実施権を付与し、これによって当該国が必要な医薬品を輸入できるようにしなければならない。
申請人が合理的な商業条件を以って相当の期間、交渉したにもかかわらず、実施許諾の合意を得ることができない場合に、はじめて強制実施権を申請することができる。但し、必要な医薬品が輸入国で既に強制実施されている場合はこの限りではない。
輸入国もまたWTOの加盟国であり、申請人が第1項により申請する場合、輸入国が既に以下の事項を履行していることを証明する書類を提出しなければならない。
1.TRIPS理事会に、必要な医薬品の名称及び数量を既に通知済みであること。
2.TRIPS理事会には、製薬能力がないこと、又は製薬能力が不足しているため輸入を希望していることが既に通知済みであること。但し、輸入国が後発発展途上国である場合、申請人はこの証明書類を提出する必要はない。
3.必要な医薬品が輸入国で特許権を有していないか、又は特許権を有しているものの既に強制実施権が許可されたか、若しくは許可されるものであること。
前項にいう後発発展途上国とは、国連総会の決議により「後発発展途上国」として認定された国を指す。輸入国がWTO加盟国でない場合、申請人は第1項により申請する際、輸入国が既に以下の事項を履行していることを証明する書類を提出しなければならない。
1.書面で自国の外交機関に必要な医薬品の名称及び数量を提出していること。
2.必要な医薬品の他国への再輸出防止に同意すること。
第76条之2
前条の規定により強制実施権の下で製造された医薬品は、全て輸入国に運ばれなければならず、且つそれによる製造数量は、輸入国がTRIPS理事会又は我が国の外交機関に通知した必要な医薬品の数量を超えてはならない。
前条の規定により強制実施権の下で製造された医薬品の外側のパッケージには、特許主務官庁の指定した内容に従ってその実施権の依拠を標示しなければならない。そのパッケージ、色、形状は、特許権者又はその実施許諾を受けた者が製造する特許医薬品と区別できるものでなければならない。
強制実施権者は特許権者に適当な補償金を支払わなければならない。補償金の金額は、必要な医薬品の関連医薬品の特許権が輸入国において有する経済的価値並びに国連が公布した人間開発指数(HDI)を参考に特許主務官庁がこれを決定する。
強制実施権者は当該医薬品を輸出する前に、ウェブ上で当該医薬品の数量、名称、目的地及び特許医薬品と区別できる特徴を公開しなければならない。
前条規定の強制実施権の下で製造、輸出される医薬品の承認申請は、薬事法第40条之2第2項の規定の制限を受けない。
前述の改正以外に、智慧財産局は、意匠に関する「専利法」規定についても全面的な検討を進めている。当所では今後もこの法改正の動向に注目し、随時報告する。