ニューズレター
新薬特許権を侵害する実験の免責について
発明特許権の効力に関しては、台湾特許法第56条第1項及び第2項にそれぞれ「物品の発明の特許権者は、本法で別段の規定がある場合を除き、他人がその同意を得ずに、該物品を製造、販売、販売の申し出、使用をすること、又はこれらを目的として輸入することを排除する権利を専有する」、「方法の発明の特許権者は、本法で別段の規定がある場合を除き、他人がその同意を得ずに、該方法を使用及び該方法をもって直接製造した物品を使用、販売の申し出、販売をすること、又はこれらを目的として輸入することを排除する権利を専有する」と規定されている。また、発明特許権効力の制限については、台湾特許法第57条に各号事項が列挙されており、そのうち同条第1項第1号には「研究、授業又は実験のためにその発明を実施し、営利上の行為ではないもの」には特許権の効力が及ばないとの規定がある。このほか、2005年2月5日に改正された台湾薬事法第40条の2第5項にも「新薬特許権は、製薬業者が検査登記を申請する前に行った研究、授業又は実験には及ばない」と規定されている。台湾特許法又は台湾薬事法にいう特許権効力の及ばない「研究、授業又は実験」に含まれるもの、及び免責範囲については、実務上多くの紛争がある。
台北地方裁判所2004年度智字第77号薬品方法特許権侵害民事訴訟案件において、被告は台湾薬事法第40条の2第5項を引用して免責を主張する抗弁を行ったが、裁判所はこれを採用しなかった。裁判所は当該案判決理由において初めて当該条項の適用条件について説明した。これは我が国の製薬産業に大きな影響を及ぼすものである。
裁判所は初めに「台湾薬事法第40条の2第5項の特許権効力の制限規定は『新薬特許権』について言及されており、かかる規範は『製品』にのみ及び、『製造方法』に及ばないことは明らかである。本件原告の主張する発明特許は方法特許であるため、被告は該条項を引用して免責を求める抗弁を行うことはできない」と認めたうえで、「『研究、授業又は実験』とは、薬品を輸入した後、この薬品をそのまま直接使用せずに、分析や分解を行い、異なる製造方法で同様の効果を有する薬品を製造することを指し、この種の分析や分解を行う場合、かかる行為は研究又は実験行為と見なすことができ、特許権侵害行為とは認めない。但し、本件被告は原告の製造方法を用いて製造した薬品に水のみを添加しただけにすぎず、かかる行為には何の技術も要さず、したがって、研究又は実験行為と認めることはできない」と判示した。裁判所は本件被告の輸入及び使用行為はともに特許権侵害を構成すると認めているが、「但し、いわゆる研究又は実験行為に合致するのであれば、研究又は実験を目的として『輸入する』行為についても免責とすることができる」旨、強調している。
本件は、台湾薬事法第40条の2第5項を過去に遡及して適用するか否かの問題にからむものである。該条項は2005年2月5日に改正されたが、本件はそれよりも早く、2004年中に既に裁判所で審理されており、民事案件は刑法第2条にいうような「従新従軽原則」(新しいもの、軽いものを選択することができるとする原則)はまだ適用されておらず、法律に明文規範がある場合を除き、民事案件審理中に初めて発効し施行された民事関連規定を引用、適用できるか否かについては、おそらく依然として紛争があるものと思われる。