ニューズレター
従業員に対する国外発行の自社株引受権に対する課税方法
財政部は、2004年11月30日、商業、工業、会計士組合及びアメリカ、ヨーロッパ商工会議所などの機関を招集し、外国の会社が台湾国内に派遣し、駐在させている従業員及びその台湾国内の子会社、支店、営業所の従業員が該外国本社の新株引受権を取得した場合の課税規定について検討した。以下にその結論を要約する。
従業員が外国で発行された自社株引受権を取得することは、「所得税法」第8条(中華民国由来の所得)第3号の台湾国内の「労務提供の報酬」に該当する。但し、在職中に取得した自社株引受権を離職又は退職後に行使するケースもあるため、同法第14条(個人の各類所得)のうち、第3類の「給与所得」ではなく、第10類の「その他の所得」に該当する。
自社株引受権による所得は、行使年度の株価と引受価格の差額によって認定し、自社株引受権の「授与日」から「既得日」(実際に新株を取得した)までの就労日数を基礎とし、台湾国内で雇用若しくは居留した日数により国内における労務報酬課税を計算し、国外で提供した労務の報酬による所得は除外される。
逆に、台湾の会社が自社の新株引受権を国外子会社の従業員に与えた場合、従業員が国内及び国外で提供した労務日数の比率に応じ、課税対象となる国内所得又は課税範囲外の国外所得を算定する。
会議では以下の2項目の議題がさらに検討を要するとして保留された。(1)課税資料の収集と上述の見解の適用期日は徴税機関が検討した後、再び議論する。(2)子会社が外国本社の新株引受権に支払うコストを費用とすることができるか否か、及び外国本社が子会社の支払う費用を受け取る場合、課税所得とするのか否かなどの問題についても今後徴税機関が明確な解釈を示す。
検討会ではまず、従業員が新株引受権を取得する原因が、従業員による労務提供の事実と関連があることを認めたうえで、かかる原因及び事実の関係により、所得の性質が「所得税法」第8条第3号の労務報酬に該当すると判断し、上述のような結論に至った。ただ、外国の親会社に雇用されていない従業員が、当該親会社の外国発行新株引受権を取得した場合は、労務提供の直接対価と見なすことは難しく、第14条第3類の給与所得とは定義が異なり、またその他の各項所得にも該当しないため、第10類の「その他の所得」に分類される。なお、国内の個人が取得する「その他の所得」は源泉徴収の対象となる所得ではないため、源泉徴収に関する問題を避けることができる。
このことから、労務報酬の概念は給与所得を包括するもので、雇用主以外から取得する労務報酬は給与所得とは見なされないことがわかる。労務報酬を構成するか否かは、報酬取得の原因と事実との関係が労務提供と関係するか否かにより決定され、労務報酬を支払う側と受取る側の間で労務契約が交わされている必要はない。
課税所得の計算及び課税年度に関する上述の結論は、財政部2004年4月30日の台財税字第0930451436号通達に示される原則に合致するものである。同通達は「会社が『証券交易法』(『証券取引法』)若しくは『公司法』(『会社法』)の規定により新株引受権証を発行し、個人が会社の定める引受け方法に従って新株引受権を行使する場合、その所得は『所得税法』第14条第2項第10類のその他の所得に該当する」としている。台湾の会社が雇用関係のある従業員に新株引受権証を発行する場合、給与所得に該当するか否かについては、さらなる検討が待たれるようである。
上記通達では「所得税法」第8条における判断が明らかにされていなかったため、第3号の労務報酬に属するものが、第11号のその他の所得に該当するか否かといった疑義がしばしば生じた。しかし、今回の検討会の結論は、これを労務報酬に当たると明確に認め、国内外で提供した労務の比率に従って所得の源泉を決定するとしている。これは以前より一歩進んだ見解であり、国際課税権の合理的な線引きに役立つ。
前述の、検討が待たれる議題のうち、「通達の適用開始期日」については、行政機関が決定できる事項ではないようで、「税捐稽徴法」第1条の1に定められる「従新従優原則」(審理中に法令が改正される場合、基本的に新法を適用するが、当事者にとって旧法が有利なとき、新法が該事項を排除又は禁止していなければ、旧法を適用することができる)及び司法院釈字第287号通達の「時間効力原則」に従い決定される。特に、まだ課税の可否が審理されていないケースに不利な遡及が発生した場合、又は審理は行われたがまだ確定していないケースに「従新従優」原則が適用されない場合、紛争の発生は免れない。
子会社が外国の親会社に支払う新株引受権の対価を費用とすることができるか否か、外国の親会社が子会社から受け取る費用を課税所得とするか又は控除対象とするかなどの問題について、財政部が新たに通達を発するまでは、「所得税法」第24条、第38条の経費の必要性と合理性基準に従って解釈することができる(従業員が提供する労務の利益が本国の親会社に帰属するか否かなど)。課税所得及び控除などの問題については、外国の親会社が受け取る金額が新株引受権発行の支出を超過しているか否かによって所得を判断し、従業員の国内課税所得に限定すべきではない。財政部が最終的にどのような立場を採るのか、今後の展開に注目する必要がある。