ニューズレター
「労工退休金條例」施行
「労工退休金條例」(「労働者退職金條例」)が2004年6月11日に制定され、2005年7月1日から正式に施行される。その主な立法目的は、現行の労働基準法に規定される退職金を一度に受領する一括支給制に替わって、労働者が月毎に退職金の支給を受けることのできる積立制度の確立である。本條例の要点は以下の通りである。
1.運用対象
労働基準法が適用される台湾国籍労働者全員に一律に強制適用されるが、実際に労働に従事する使用者、及び使用者の同意を得て退職金積立を行う労働基準法不適用の台湾国籍労働者又は委任契約による管理職は、自ら該條例の規定により退職金の積立及び支給を願い出ることができる。外国籍労働者については該条例が適用されない旨明確に規定されている。
2.新旧制度の適用及び移行
既に旧制度が適用されている労働者は新制度施行後、新制度を適用するか又は引き続き旧制度を適用するのかを選択することができる。新制度適用を選択した労働者については、その旧制度適用に係る勤務年数を、使用者に変更がないとの前提下で、そのまま留保しなければならず、将来、労働基準法が定める解雇手当又は退職金の支給要件を充足した際、使用者は留保勤続年数により解雇手当又は退職金を支給する。このほか、使用者は労働基準法の基準下回らない基準を以てって支払を行うことを労働者に約束することができる。旧制度適用を選択した労働者について、雇用者は新制度施行後5年内に、正確な計算結果に従い、満額になるまで毎月、労働者退職準備金を積み立てなければならない。労働者の解雇手当及び退職金の支給請求は依然として労働基準法の規定により取り扱うものとする。
労働者全員が新退職金制度を選択し、且つ労使双方が労働基準法の退職金基準以上で労働者の旧制度下における勤務年数を全て清算することに同意する場合、労働者の旧制度下における勤務年数は清算により留保の問題はなく、すなわち現在雇用者が中央信託局に預託している労働者退職準備金専用口座は、引続きこれを維持する必要がないということになる。これに準じ、行政院労工委員会は政策決定を行い、「勞工退休準備金提撥及管理辦法」(「労働者退職準備金積立及び管理規則」)を改正した。その結果、労使は協議により労働基準法退職金計算基準以上で労働者の旧制度下における勤務年数を清算することができるようになり、その後労働者は、中央信託局に預託していた原専用口座の退職準備金を受領できることになる。かかる金額は3500億台湾元にものぼると推計され、使用者の運用可能な手元資金が増加されることとなり、また、5年内に労働者退職準備金を全額積み立てなければならないという使用者にとっての資金面での圧力が軽減されることになる。
新制度施行後、使用者が雇用する労働者については、一律、新制度を適用しなければならない。且つ、新制度が適用される労働者が労働基準法に規定される解雇事由を有する際、その解雇手当はその新制度適用後の勤務年数に従い、1年につき平均給与の半月分で計算して給付し、1年未満のものについては比率計算でこれを給付し、その総額は最高で平均給与の6ヶ月分を超過してはならない。
3.労働者退職金専用口座への積立
労働者は労工保険局に労働者退職金個人専用口座を開設しなければならず、使用者は労働者の毎月の給与の6%以上の比率で労働者退職金個人専用口座に退職金を積み立てなければならない。また労働者は、毎月の給与の6%の範囲で別途退職金を積み立てることを自ら願い出ることもでき、且つ個人総合所得税控除の優遇措置を受けることができる。行政院労工委員会が公布する毎月の積立金額に係る給与段階表草案によると、全部で61段階あり、NT$147,901を月給の上限としており、この上限を超過する場合には一律NT$150,000の6%で計算される。労働者の退職権益を守るため、該條例は特別に、雇用者はその他自ら定めた労働者退職金制度を該條例の規定する制度に替えることができない、と規定している。
4.退職金の給付
新制度が適用される労働者は、年齢が満60歳以上で且つ勤務年数が満15年以上であれば、月払い退職金の給付を願い出ることができる。また、労働者は、月払い退職金の給付申請時に、一定金額を支払い、これを以って養老年金保険に加入し、労働者の平均寿命後の年金給付に当てなければならない。労働者の年齢が満60歳以上、勤勤続年数が15年未満である場合には、退職金一括給付を願い出なければならない。
月払い退職金の金額は労働者の退職金専用口座の元金及び累積収益により年金生命表に基づいて、平均余命及び利率などを以ってこれを算定する。労働者が退職金一括給付を願い出る場合の金額については、該労働者個人退職金専用口座内の元金と累積収益の総和とする。
5.年金保険
従業員数が200人以上の事業単位については、労働組合又は半数以上の従業員の同意を得て、並びに中央主務官庁に報告してその許可を受けた後、その従業員のために保険法の規定に合致する年金保険に加入し、これを以って新制度下で雇用者が負う退職金積立の義務に替えることができる。但し、雇用者が負担する年金保険料率は従業員の毎月の給与の6%以上でなければならない。
6.使用者の賠償責任及び罰則
使用者が新制度により毎月決められた金額の労働者退職金を積み立てず、労働者が損害を被るに至った場合、労働者は使用者に対し民事損害賠償を請求することができる。
使用者が退職金積立の届出を行わず、期限を設けて改善するよう通知されたにもかかわらず、期限を過ぎても改善しなかった場合、又は旧制度により5年内に退職準備金を満額積み立てなかった場合、雇用者に対しNT$20,000以上NT$100,000以下の行政罰則金(非刑事)を科すことができ、改善されるまで毎月連続してこれを課すことができる。
滞納金:使用者が期限通り退職金を積み立てなかった場合又は全額積み立てなかった場合、期限満了の翌日から積立が完了する前日まで、1日ごとに、それが積み立てなければならない金額の3%を滞納金として、積み立てなければならない金額の倍額になるまで徴収することができ、依然として満額にならない場合には、翌日から毎月、毎月積み立てなければならない金額の2倍の滞納金を満額になるまで徴収する。その毎月徴収する滞納金につき、1ヶ月未満の部分については、比率により計算する。