ニューズレター
金融資産証券化條例施行細則
半年以上の準備期間を経て、財政部は今年2003年8月28日、金融資産証券化条例施行細則を公布した。全文25条からなるこの細則の内容を以下簡単に紹介する。
一、「トゥルー・セール」を確実にするため補充された規定
1.住宅ローン債権証券化に関わる業務は、現在大多数が限度額いっぱいの抵当権を設定しているため、最高裁判所の見解によると、限度額抵当権が確実に一般抵当権に転化されるのでなければ、その移転は本来の借り主の同意を得なければならない。しかし実務上銀行がそれぞれの住宅ローンの借り主の同意を得ることは容易ではなく、住宅ローン債権証券化の障害となる。このため、施行細則では、オリジネーターは、限度額抵当権の設定を以って担保される債権につき、証券化計画信託若しくは譲与により、関連証明及び契約書類を用意した上で、限度額抵当権を一般抵当権に転化するとともに、受託機構若しくは特定目的会社に移転することができ、債務人或いは抵当権設定者の同意若しくは移転登記の必要はない。
2.関連証券化計画に基づき信託若しくは譲渡する資産に設定された担保物権は、その担保標的物に保険がある場合、保険契約当事者の同意なく、該担保標的物が享受する受益権を担保物権と共に受託機関若しくは特定目的会社に信託若しくは譲渡することができる。但し受託機関若しくは特定目的会社が保険者にこれを通知しない場合、保険者に対抗することはできない。
3.リボルビング債権(クレジットカード債権或いは金融資産を基礎とし発行されたCP)の証券化は、一般の貸し付け債権の証券化とは異なり、施行細則には、将来の債権の対抗力、資産譲渡に関する連続的公告及び補足公告制度が明示的に規定されている。
二、利害関係者取引制限の規定
施行細則には、特定目的会社は、譲受資産の管理及び処分をオリジネーターに委託することはできない旨明示されている。また、監督機関と特定目的会社の発起人或いは株主は同一の関係企業であってはならず、また監督契約に記載すべき事項を明示している。これは主管機関の審査根拠となる。特定目的信託若しくは特定目的会社が製作する決算書及び報告書のフォーマットは、信託公会が制定し財政部が審査決定する。
このほか、受託機構、信託監察人、特定目的会社の発起人若しくは株主及び監督機関は、受益証券若しくは資産基礎証券の認証を行うことはできない。幹事業者は、当期証券化計画が発行する受益証券若しくは資産基礎証券の認証を行うことはできない。同期に証券化発行される証券は同一の認証機関に委託しなければならない。
三、受益者会議の補充規定
受益者会議については、財政部は国際信用評価機構の意見を参考に、施行細則において、特定の種類の受益者の権利を特定目的信託契約に記載される該特定種類の受益者が所有する権利に限定し、特定目的信託契約において約されていないその他の権利若しくは利益を含まない旨定めている。こうすれば、次順位受益者が受益者会議の決議に対し、否決権を行使することを防止することができるとともに、優先順位受益証券の評価に対する影響を防ぐことができる。
このほか、同一の受益者若しくは所有者が同一の議案に就いて表決権を不統一行使することはできない。施行細則は、また受益者が受益者会議の招集を要請することに関する規定を補充している。これによると、受益者会議若しくは資産基礎証券所有者会議が5日以内の延期若しくは集会続行を決議する場合、金融資産証券化条例の会議開催通知に関する規定の制限を受けない。
四、作業の簡略化に関する規定
施行細則はさらに作業の簡略化について若干の規定を設けている。資産信託証券化計画若しくは資産証券化計画の軽微な変更の場合、元金の償還及び利子の受取の際、証券を提示する必要はなく、重大な影響をもたらさない変更、受益者名簿記載の簡略化、営業年度終了諸表などを作成する必要はない。
金融資産証券化条例が去年7月に公布されて以来、これまでに国内外の多くの金融機関が金融資産証券化業務の準備を進めてきた。なかでもフランスリオン銀行は、既に台湾において企業ローン債権証券化を完了し、その規模は、NTD 8,800,000,000(88億台湾元)に達し、国内初の資産証券化の公募ケースとなっている。当所は該ケースにおいて国内法律顧問を担当している。その他、中国信託商銀、台新銀行、萬通銀行の証券化など、進行中の証券化ケースにおいても当所は重要な役割を果たしている。台湾の証券化市場は始まったばかりであるが、今後関連法規が整備されるに従い、銀行はその資金運用を活発にするために、さらに多くの金融資産証券化商品を作ることが予想される。