ニューズレター
法人株主及びその「代表者」の利益相反に関する疑義
会社法第107条の規定によれば、株主が株主総会の決議事項に対し自ら利害関係を有し、その議決権の行使が会社の利益に害をなす虞があるとき、かような株主は、表決に参加することができず、また他の株主を代理して議決権を行使することができない。この規定は取締役会の決議にも準用される。しかしながら、「自ら利害関係を有し会社の利益に害をなす虞がある」場合をどのように認定すべきか、実務においてはしばしば議論があった。これに対し、経済部は、2002年12月16日にその解釈に関する通達を発している。当該通達は以下のとおりである。
経済部通達によると、法人株主の「代表者」が取締役(董事)に選出された場合、該代表者は会社の営業秘密を知る機会を有することになり、かつ法人株主との間に委任関係を有することになる。民法第540条の規定によれば、受任者(即ち、代表者)は委任された事務の進行状況を委任者(即ち、法人株主)に報告しなければならないため、法人株主もまた会社の営業秘密を知る機会を有することになる。したがって、法人株主の「代表者」が取締役会で取締役(董事)の職権を行使するとき、該法人株主と会社が締結する売買条約等に関する議案については、「自ら利害関係を有し会社の利益に害をなす虞がある」ので、表決に参加することができない。
このほか、会社法第223条の規定によれば、取締役(董事)は自ら又は他人のために会社と売買、貸借又はその他法律行為を為すとき、監察人を会社の代表者とする。したがって、取締役(董事)がその委任社たる法人株主のために会社と売買等の法律行為を為す場合には、監察人を会社の代表者とすべきである。本条の立法趣旨は利害衝突により会社の利益に害を及ぼすことを回避することにある。したがって、該法律行為と関係がありさえすれば、おそらく利害衝突により会社の利益を損なうことになるので、「締約」に限らず、「交渉」でも監察人が会社を代表すべきである。