ニューズレター
特許法改正条文の公布
国内企業の発展、国際社会における立法趨勢及び特許審査の質の向上といったニーズに応えるため、立法院は2003年1月3日に改正特許法を通過させ、該改正特許法は2003年2月6日に総統により公布された。改正条文は、 第11条が公布日から、また今回の改正で削除された第83条、第125条、第126条、第128条~第131条が2003年3月31日から施行されるのを除き、施行日は行政院が改めてこれを定める。今回の改正内容は若干の特許出願及び関連実務に及んでいる(例えば、実用新案について方式審査を採用、異議申立手続の廃止、特許証発行手続の修正など)ため、経済部智慧財産局は、これに対応して審査制度の審査手続等を再構築する必要があり、上記条文以外のその他の修正条文は1年後(即ち、2004年)に施行されるものと思われる。今回の改正の重点は以下の通りである。
1.弁理士法が制定されるまでの、代理人資格の取得、取り消し、廃止及びその管理に関する法源規定を明確に規定(第11条)
行政手続法第174条の1には「行政手続法施行(2001年1月1日)前、行政機関が中央法規基準法第7条により定めた命令は、法律で規定する又は法律でその授権依拠を明示する必要があり、それが2002年12月31日以前に法律で規定されていない場合又は法律でその授権依拠を明示していない場合、失効する」と規定されている。そのため、法務部が2002年7月18日に智慧財産局(智慧局)に対して発した通達には、経済部が1953年7月に公告施行した特許代理人管理規則は、2003年1月1日から失効し、かつ行政手続法第174条の1を適用することが明示されていた。弁理士法草案は現在、依然として立法院で審議中であり、空白期間が生じることのないよう、今回の改正では、弁理士法が制定されるまで、代理人資格の取得、取り消し、廃止及びその管理に関する規則は、主務機関がこれを定める旨明確に規定された。この改正条文は2003年2月6日から既に施行されている。
2.本法関連期間の算定について明確に規定(第20条)
期間の計算について、特許法条文には「…の日から」「…の翌日から」といった異なる規定がある。こうした記載の不一致から疑義が生じることのないよう、今回の改正では「…の日から」に一致するとともに、原則として開始当日は期間計算に含まない旨明確に規定された(例えば、発明特許権、実用新案権及び意匠権の権利存続などの期間のように、特別な規定がある場合についてのみ、当日から計算する)。
3.官納料納付を出願日取得の要件とする規定の削除、及び発明特許出願について宣誓書を提出しなければならないとする規定の削除(第25条及び第116条)
現在、新たな発明特許出願案の出願日を取得するためには、願書、明細書及び必要な図面を備える以外に、官納料を納付しなければならない。しかし、官納料の納付は補正可能な事項であるので、出願人の権益を保護するため、官納料納付を出願日取得の要件とする規定を削除した。出願人が官納料を納付しておらず又は官納料を納付したものの金額が足りず、通知を受けても依然としてこれらを納付しない場合、出願を受理しない。また、特許出願に必要な書類には発明人又は創作人が署名した宣誓書が含まれていたが、発明特許出願の手続を簡素化するために、今回、特許出願には宣誓書を提出しなければならないとする規定を削除された。但し、特許出願が発明人又は創作人が提出したものではない場合、出願人(譲受人)は依然として特許出願権証明書を提出しなければならない。
4.国際優先権主張に係る実務(第28条)
出願手続に対する規制緩和の一環として、国際優先権請求の関連規定が以下のように改正された。
優先権を主張する場合、出願時に表明を提出するとともに出願書に外国での出願日及び該出願を受理した国を明記しなければならない(元来は出願時に外国の出願番号も記載するよう要求していたが、これは補正可能とした)。
出願人は出願日から4ヶ月(元来は3ヶ月)以内に優先権証明書類を提出しなければならない。
5.特許の新規性、進歩性及び創作性に係る規定の改正(第22条、第94条及び第110条)
新規性、進歩性及び創作性の認定基準をさらに完全にするため、外国の立法例を参照し、関連規定を改正及び追加した。例えば、出願前に既に一般の人によく知られていたものを新規性喪失の事由の一つとする旨明確に規定された。発明又は創作が出願人の意図に反して漏洩し、その事実が生じた日から6ヶ月以内に出願する場合、新規性一般規定の制限を受けない。また、発明特許又は実用新案の進歩性及び意匠の創作性については、発明又は創作がそれが属する技術領域の通常知識を有する者が出願前の従来技術に基づいて容易に完成できるものではないもの、と修正した。
6.明細書の記載、補充、補正、訂正に係る規定の改正(第26条、第49条、第64条、第100条、第117条及び第122条)
明細書の記載方式が徐々に緩和される各国の趨勢に合わせるため、並びに現行実務を進める上で生じる紛争を避けるため、関連条文中の特許明細書の記載、補充、補正及び訂正についての関連規定を改正した。例えば、補正後の規定によれば、発明又は実用新案の明細書には、発明又は創作の名称、発明又は創作の説明、要約及び特許請求の範囲を記載しなければならず、発明又は実用新案の説明は、該発明又は実用新案が属する技術分野における通常の知識を有する者がその内容を理解し、それに基づいて実施することができるように、明確かつ十分に開示しなければならない。意匠の図面説明には意匠の名称、創作説明、図面説明及び図面を記載しなければならず、意匠の図面説明には、該意匠が属する技術分野における通常の知識を有する者がその内容を理解し、それに基づいて実施することができるように、明確かつ十分に開示しなければならない。また、実用新案出願者が明細書又は図面を補充、補正する場合、出願日から2ヶ月以内にこれを行わなければならない。
7.実用新案について方式審査を採用(第97条)
世界の主要国家の実用新案審査制度を参酌し、関連規定を改正し、実用新案については方式審査を採用することで、早期権利化のニーズに応える。
8.実用新案技術報告の追加(第103条~第105条)
実用新案に方式審査を採用することで、実用新案権及びその権利内容にかなりの不安定性及び不確定性が生じるため、外国の立法例を参考に、実用新案特許技術報告実務を導入した。その結果、誰でも実用新案が公告された後であればいつでも、智慧財産局に対し実用新案技術報告を請求することができるようになった。また、実用新案権者による権利行使の濫用を防ぐため、国際立法例を参考に、「実用新案権者は権利行使前に、特許主務機関が作成した実用新案技術報告を提示しなければならない。実用新案権者の実用新案が取り消された場合、それが取り消される前に、該実用新案権を行使することによって他人に与えた損害について、賠償責任を負わなければならない。但し、実用新案技術報告の内容に基づいて又は可能な限りの注意を払った上で権利を行使した場合には、過失がなかったものと推定される」と規定された。
9.実用新案権の権利期間を10年に短縮(第101条)
実用新案権の権利存続期間を出願日から起算して10年(元々は12年)とする。
10. 特許を付与しない旨の法定事由(第44条、第97条及び第120条)を明確に規定し、行政手続法第5条との整合性を図る。
11. 再審査請求及び出願変更の期限延長(第46条、第102条、第114条及び第115条)
再審査請求期限を「査定書送達の日から60日(元々は30日)以内」に延長した。出願の類別を変更する場合、原出願の出願日の援用を望むのであれば、原出願の許可査定書又は処分書が送達される前に、或は原出願の拒絶査定書又は処分書が送達された日から60日(これまでは30日)以内に出願変更の申請を行わなければならない。
12. 異議申立手続の廃止及び無効審判請求提起の法定事由の整合制定(第51条、第101条、第113条、第67条、第107条、第128条、第70条及び第72条)
現行特許法では特許の公衆審査を異議申立制度(許可査定を受けた公告期間内に提起することができるもの)及び無効審判請求制度(証書交付後も提起することができるもの)に区分している。異議申立の審理には時間がかかり、特許権者が特許権の保護を獲得するのを妨げるため、又はその獲得が先延ばしになるため、また現行の無効審判請求手続の法定事由と手続が異議申立手続のそれとほとんど同じであることも考慮し、今回の改正では異議申立手続を廃止するとともに異議申立と無効審判請求の法定事由に整合性をもたせ、異議申立事由を無効審判請求事由に組み入れた。また、異議申立手続の廃止に対応するため、特許授権に関する規定を改正し、特許権が許可されたらすぐに特許料を納付し、証書の交付を受けることができるようにし、かつ公告日から特許権を取得できるようにした。
13. 「販売の申し込み」も特許権効力の及ぶ範囲とする旨の規定を追加(第56条、第106条及び第123条)
TRIPs第28条の規定によれば、特許権者は、第三者がその同意を得ずにその特許に係る物品を製造、販売、販売の申し込み、使用すること、又はこれらを目的として輸入することを禁止することができるので、今回の改正では、「販売の申し込み」も特許権効力の及ぶものとする旨の規定を追加した。
14. 特許権を分割することができる旨の規定の削除
審査手続の複雑化及び特許権権利範囲の変動を避けるため、現在、その他諸外国では特許権を分割することができる旨の規定は設けていない。そこで、現行条文第68条の、特許権を分割することができる旨の規定を削除した。
15. 虚偽の又は誤認を生じる特許標示の禁止及びその刑罰に係る規定の削除
特許物品はいかに標示すべきであるのか、その標示は確実であるか否か、欺瞞行為又は他人に損害を与えるような点の有無などについては、刑法、公平交易法及び民法など現行法規の規範で既に十分であるため、また特許非犯罪化に合わせるため、現行条文における、虚偽の又は誤認を生じるような特許標示を禁止する規定及びその刑罰に関する規定を削除した。
16. 権利侵害訴訟に関連する無効審判案を特許主務官庁は優先的に審査できる旨の規定を追加(改正条文第90条)
特許権者の合法的な権益を保護するため、特許庁は、権利侵害訴訟に関連する無効審判事件を優先的に審査することができる旨の規定を追加した。
17. 実用新案権及び意匠権の侵害に係る刑罰規定を廃止し、特許権侵害行為が全面的に非犯罪化された。
18. 経過措置の増加(第134条~第136条)
今回の改正条文の施行(例えば、異議申立手続の廃止、実用新案に方式審査を採用、実用新案技術報告の導入など)に合わせるため、新旧法律の過渡期に適用する経過措置を追加。
19. 本法施行日は行政院がこれを定める旨明確に規定し(第138条)、実務作業手順に合わせた調整修正の便宜を図る。
今回の改正は特許法全体の改正であり、その改正範囲も極めて広いため、当所では独自に関連資料をご用意し、新特許法について詳細に説明及び解説させていただいております。ご興味がございましたら、ご遠慮なく当所にお申しつけください。