ニューズレター
取扱説明書への著作権法の保護の適用の有無
著作権の保護は著作物の表現方法にのみ及ぶもので、それにより表現される思想、手続、製造過程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及ばない。このことは著作権法第10条の1に明確に規定されている。しかし、仮に、著作の表現方法が極めて限られていて、1種類の表現方法しかなく、その結果、表現方法とそれが表現する概念が一体化して不可分であるとき、該著作が依然として著作権法の保護を受けるか否かについては、実務上、かなりの議論があった。
台南地方裁判所2000年度易字第484号刑事判決は、台湾高等裁判所の1998年上更(1)字第330号刑事判決及び1997年度上易字第131号判決を引用し、次のような見解を示した。「商品カタログにおける文字説明は表現行為に属しているものの、配列順序に限りがあるといった制約を受けるものであり、かついかなる特別な配列意図も有していないので、該表現方式において概念と表現を区別することは極めて難しく、よって、著作権法の保護を受けることはできない」。
台湾高等裁判所2000年度上訴字第80号刑事判決もまた類似の見解を採用し、商品の取扱い説明書は著作権法の保護を受けないと認めている。但し、台北地方裁判所2000年度訴字第1003号民事判決は同一の事件について、台湾高等裁判所刑事法廷の見解を採用せずに、全く異なった認定を行った。台北地方裁判所民事法廷は該判決で次のように判示した。「著作権法第87条の1第1項第5号は著作権法第87条第4号の著作物の真正品の平行輸入に関する例外規定であり、該著作権法第87条の1第1項第5号には『貨物、機器又は設備に付属した取扱い説明書又はマニュアルが、貨物、機器又は設備の合法的輸入に伴い輸入された場合。但し、取扱い説明書又はマニュアルを目的に輸入する場合は、この限りでない』と明文規定されている。したがって、著作権法は既に取扱い説明書を著作権法が保護する客体に加えており、取扱い説明書が他人のものの盗作でなく自らの力で創作したもので、オリジナリティを備えてさえいれば、著作権法の保護を受けることができる」。