ニューズレター
仮特許権に基づく民事と刑事訴訟
特許法第50条第1項の規定により、発明特許は査定公告後、仮特許権の効力が生じる。仮特許権の効力とは何か、とりわけ仮特許権を侵害する行為が権利侵害を構成するか否か、民事又は刑事訴訟を提起することができるのか否か、並びにその他救済措置があるのか否かについては、特許法には明文規定がない。
法務部1992年5月22日法(81)検字第07613号通達、台湾高等裁判所刑事法廷1999年度上易字第3736号刑事判決、台湾台北地方裁判所刑事法廷1999年度自字第134号刑事判決及び台中地方裁判所刑事法廷1999年度中簡上字第110号刑事判決は、いずれも仮特許権がまだ確定していないことを主な理由に、この不確定な権利を侵害する行為は特許法の関連罰則が規定する犯罪構成要件に該当せず、特許出願者はその特許権を妨害した者を告訴することはできないと判示した。
智慧財産局(88)智法字第88009016号通達は、特許法第88条第1項の規定により、特許権に侵害の虞があるとき、その防止を請求することができるとの解釈を示している。したがって、査定公告の結果、仮特許権を取得した場合、特許法第88条の規定により警告状を送付することができる。但し、その内容が正当であるか否か、公平交易法の違反の有無は、公平交易委員会の法律適用の問題に属する。
しかしながら、最高裁判所民事法廷1996年度台上字第472号民事判決は、ある特許権侵害に関する民事損害賠償訴訟について、「特許査定書の公告後、仮の特許効力が生じ、その後、特許権者の特許権取得が確定した場合、仮の特許の公告後の特許権訴願及び行政訴訟手続中に該特許品の模倣品を市場で販売した第三者は、権利侵害行為責任を負う」と判示した。
現在、さらに注目に価するのは、最高裁判所刑事法廷2002年台非字第196号刑事判決が、「法律で、特許出願が査定公告後に仮特許権効力が生じると規定されているからには、該仮特許権発効後且つ特許権が存在しないと見なされるまでは特許法の保護を受けることができるはずであり、侵害がある場合には自ずと民事又は刑事責任を負うべきである」と判示していることである。これは、特許法第94条が「特許権の出願、異議申立て、無効審判請求、取消が確定する前に、調査又は審判を中止させることができる」と規定し、異議申立ての確定前は、民事又は刑事訴訟を提起することができないと規定しているわけではないことを証明するものである。
仮の特許効力に基づき民事又は刑事訴訟を提起できるか否かに関する最高裁判所の見解は、特許侵害案件に対して深い影響を与えるものであり、注目に値する。