ニューズレター
金融資産証券化法の制定
立法院は、2002年6月20日、金融資産証券化法の三讀を通過させた。金融資産の証券化とは、創設機関(「創始機関」)が金融資産を受託機関に信託又は特定目的会社(SPC)に売却し、受託機関又はSPCは取得した金融資産に基づいて証券を発行し、並びに標的となる資産の毎期のキャッシュフローを投資家に利息及び元金として支払うことをいう。このメカニズムの目的は、金融機関の正常ではあるが流動性の低い金融資産、例えば住宅又はクレジットカードローンなどを、活用可能な資金に転化させることにある。
本法は全119条からなり、その要点は、以下の通り。
1.本法の意図によれば、「創設機関」は、原則として、銀行、クレジットカード会社、手形発行会社、保険会社、証券会社及びその他主務機関である財政部が認可した金融機関に限られる。非金融機関である一般の事業者は、主務機関による認可を受けなければ、本法従いその金融資産を証券化することができない。証券化できる「資産」は、自動車ローン、住宅ローン、クレジットカードローン、売掛債権などである。「受託機関」とは、信用格付などが一定の基準以上に達している信託業者をいう。「SPC」とは、政府の特別許可を受けて、資産の証券化に従事することを目的とした株式会社である。政府特別目的資産の証券化を行う方式は、2つの方式が採用されている。創設機関は、特定目的信託(SPT)方式、又はSPCによる金融資産の証券化のいずれかを選択することができる。
2.特定目的信託(SPT):創設機関は、類似した条件ごとに金融資産をひとまとめにした後、これをSPTとして受託機関に信託し、受託機関は、信託された資産に基づいて受益証券を発行し、投資家から資金を集める。受託機関は、信託財産及び集めた資金を管理処分し、各債務者から利息及び元金を徴収する際に、自らこれを行うことも、サービス業者に委託することも可能である。また、創設機関が自らこれを実施することもできる。管理・処分された金融資産が生むキャッシュフロー、例えば、債務者の返済金から管理費用、受託機関の報酬、信用増強費用及びヘッジ取引費用を控除した後、残余は、受益証券の元金、利息又はその他利益として受益証券保有者に分配される。
SPTは本質的に信託であるが、信託法は、資産証券化の必要を充たすことができない。SPTの特殊性を考慮すると、本法は、既に信託監督/管理の法律関係、並びに信託当事者の権利を修正している。例えば、信託管理人の機能の強化がそれである。また、信託法第6条第3項規定の、信託成立後6ヶ月内に創設機関が破産宣告を受けた場合、該信託行為は有害及び債権と推定するとの規定の適用を排除する。このほか、信託法により委託者が裁判所に対し信託財産の管理方法又は受託者の解任を請求することができる旨の規定も、その適用排除が明文で規定されている。
3.SPC:本法の規定によれば、SPCは、創設機関以外の金融機関により設立されなければならず、且つ株主は1名に限られる。創設機関は、金融資産をSPCに譲渡し、SPCは譲り受けた資産に基づいて資産担保証券(ABS)を発行し、投資家から資金を集める。譲り受けた資産の管理処分については、原則として、SPCが譲り受けた資産に質権を設定し、該資産を譲渡、交換、担保として提供し又はその他の処分をすることは禁止されており、更にSPCには譲り受けた資産をサービス業者に委任又は信託して管理・処分させることが強制されている。創設機関自ら管理・処分に当たることもできる。
SPCは資産の証券化業務を専門に行うために設立されたので、SPCがその他の業務に従事するがゆえに債務不履行の事態に陥り、その譲り受けた金融資産が債権者によって差し押さえ又は押収されるのを避けるため、他人のために保証、裏書きを行うことができず、またその他の事業を兼業することもできない。このほか、SPCの特殊性に対応するため、本法は、数多くの会社法の規定の適用を排除している。更に、株主はただ一人であるので、株主総会を開催することはできず、会社法上の株主総会会に関連する規定は適用されない。しかし、SPCは、依然として取締役及び監察人をそれぞれ1~3名設けなければならず、且つ創設機関、サービス業者、監督機関及びその機関の責任者は、SPCの取締役・監査役となることはできない。
4.証券の発行及び募集は金融市場の管理に関わるため、受託機関が受益証券を発行する際、又はSPCがABSを発行する際には、財政部に申請して認可を得るか、又は財政部へ届け出る必要がある。受益証券又はABSは、不特定の者に対し公募することも、特定の者を選んで私募を行うこともできる。公募又は私募にかかわらず、受益証券又はABSは全て信用増強(例えば、創設機関又は本法にいう金融機関が提供する担保)によって証券の市場における信用を増加することができる。公開募集を行う場合は、受託機関又はSPCが発行する株式も、財政部が認可した信用格付機関の格付け評価を受けなければならない。
5.金融資産の証券化が債権の信託又は譲渡に関わる場合、当該債権の信託又は譲渡が債務者に対向することができるよう、民法の規定により、創設機関、受託機関又はSPCが債務者に通知する意外に、本法は以下の3つの方法を通知に代るものとして提供している。
(1)創設機関が資産の信託又は譲渡前に本法第5条に規定する方法及び内容により公告し、並びに該公告証明書を債務者に送付する。
(2)創設機関が当該資産の管理に当たる場合、創設機関が債務者から債権を回収する。
(3)創設機関と債務者が別途定める方法。
6.財務面では、受託機関又はSPCは、本来借入れを行うべきでなく、その財務を健全に保つ必要がある。しかし、受託機関又はSPCによる短期資金調達の特殊需要の可能性考慮し、本法では特別に上記の制限を緩和している。但し、借入れ目的は、配当或は利益、利息又はその他収益の配当に限られる。これらの借入れの必要がある場合、資産信託証券化計画又は資産証券化計画においてその旨明記しなければならず、またSPCによる借入は、取締役全員の同意を得なければならない旨規定されている。
7.業務の監督面では、主務機関は随時資産証券化計画又は計画の執行情況について、受託機関、SPC、創設機関、サービス機関又はその他の関係者の業務、財務情況を検査することができ、又はそれらに対し期限を設けて財務報告、財産目録又その他の関連資料を提供するよう命じることができる。このほか、SPTの受託機関又は受益者会議で信託監査役を選任し金融資産証券化の実行を監督させることができる。信託監査役は受益者会議に出席する義務があり、且つ利益相反を避けるため、信託監査役は受託機関の利害関係者、職員、従業員又創設機関が担任することができる。SPCについては、本條例の規定により創設機関、サービス機関以外の銀行又は信託業を監督機関として選任する義務がある。監督機関は随時SPC及びサービス機関の資産証券化に関する業務、財務情況及び帳簿書類をチェックすることができ、並びに、SPCの取締役に報告を提出するよう請求することができる。
8.このほか、創設機関が受託機関又はSPCの経営に対し不当に影響力を行使することのないよう、また、破産隔離の効果を達成するため、受託機関又はSPCを設立する金融機関は創設機関の関連・関係企業であってはならない。創設機関が破産した場合、受託機関又はSPCは依然として影響を受けず、投資家が定期的に元金及び利息を受取る権益を間接的に保障する。
9.税制面での優遇について、受益証券又はABSは、債権と類似した性質を有しているため、本法は、これらの証券の売買について、原則的に社債の税率に基づいて証券取引税を課税する旨規定している。また、資産の移転によって生じる印紙税、契約税及び物権変更登録に関する諸費用などについても、減免の優遇措置がある。信託財産の収入は性質上受益証券又はABS保有者の利息収入に当たり、現在その控除率は依然として6%を原則としている。
証券の信用が、流通促進の鍵となる。外国の制度を参考にすると、資産証券化が成功した大半のケースには、以下のような2つの特徴があり、これは我が国の資産証券化制度においてその克服が強く望まれる目標である。その1つは、トゥルーセール(true sale)認定基準の明確化である。トゥルーセールとは、創設機関が資産の所有権を移転するとき、これと同時に管理、使用及び収益等の権利も受託機関又はSPCに移転することで、資産が創設機関の破産、再建又は債権者による取りたてなどの影響を排除し、創設機関の破産によって生じるリスクを遮断することを徹底するだけでなく、証券の信用格付けを高める。外国の法制度を見ると、多くは既に徐々に一定の認定基準を作り出しつつあるが、我が国は依然として関連基準を設けておらず、今後の努力が待たれる。次に、信用格付などの制度の導入だが、正確な資産格付けの観念を築くだけでなく、証券信用の基礎のために、資産証券化の需要性は言うに及ばない。本法第4章には既に信用格付及び信用増強に関する事項が規定されているが、主務機関が関連規定を厳格に執行することによって本制度の適性な実行を確保することが望まれる。
本法は、既に2002年7月24日に総統府により公布、施行されている。金融資産証券化の過程を通して、資産の経済利益を投資家に還元し、リスクについても投資家又は信用増強機関が引き受けると同時に、金融市場及び証券市場の規模を拡大し、将来的に我が国の国際金融市場における競争力を高めるだろう。