ニューズレター
特許侵害鑑定報告
台湾特許法第131条第2項と第3項によれば、特許権者は特許法第123条~126条の罪に対して告訴する際、侵害鑑定報告書及び特許権者が侵害者に対し侵害の排除を請求する書面の通知(いわゆる警告状)を提出しなければならない。前記書類を提出しなかった場合、告訴は不適法となる。さらに、同条第4項によれば、「司法院と行政院は協調して侵害鑑定の専門機構を指定しなければならない。」しかし、同条第2項は、その侵害鑑定報告書が「司法院と行政院が指定する侵害鑑定の専門機構」が作成するものに限るとは規定していない。そのため、「司法院と行政院が指定する侵害鑑定の専門機構」以外の者が作成した侵害鑑定報告書が告訴提起の要件を充足するかどうかは、多くの議論を招いている。
混乱を避けるために、特許主務官庁である中央標準局(現在は知的財産局に改組)は1994年3月31日にかつて法務部に対して、「特許法第131条第2項の侵害鑑定報告書は司法院と行政院が指定する侵害鑑定の専門機構が作成するものに限らない」との旨の解釈書簡を出している。しかしその後、最高裁判所は1997年台非字第76号刑事判決において、「特許法第131条第2項の侵害鑑定報告書は司法院と行政院が指定する侵害鑑定の専門機構が作成するものをいう」旨の正反対の判決を言い渡した。この最高裁判所の判決に対して、反対の声が大きいが、検察は同判決にしたがっており、特許権者の権利行使に大いに支障をきたしている。
今年の8月、前記最高裁判所判決を是正する意味であるかどうかまだ不明であるが、最高裁判所はさらに次の旨の判決を言い渡した:「特許法第131条第2項は、特許権者が告訴を提起する際、侵害鑑定報告書及び特許権者が侵害者に対し侵害の排除を請求する書面通知を提出しなければならないと規定している。しかし、同条文は、『侵害鑑定報告書』と言い、『専門機構の侵害鑑定報告書』とは言っていない。その趣旨を考察すると、同条文は、訴訟の遅延を避けることを目的とし、特許権者は、その特許権が侵害された事実を具体的説明するために侵害鑑定報告書を提出すればよい。同条文は、『侵害鑑定報告書』を『第4項の指定専門機構の侵害鑑定報告書』に限定することにより告訴権を厳格に制限することを目的としない。」
8月の最高裁判所判決は、特許法第131条第2項の侵害鑑定報告書提出要件に関する疑問を解くことが期待されている。