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出願包袋における限定解釈は必ずしも特許請求の範囲を減縮するとは限らない



 特許権侵害訴訟では、特許権侵害の判断と特許の有効性判断が同時に行われることが多い。この時、侵害有無と特許有効性の判断にあたっては、特許請求の範囲における技術的特徴の意味を一貫して解釈する必要がある。特許権者は、権利侵害を主張できるような広い特許権の範囲と、先行技術と区別できるような狭い特許権の範囲を両立させるために、特許請求の範囲の解釈録査定後の特許請求の範囲の訂正という2つのやり方を適切に利用することが重要である。「特許請求の範囲の解釈」に関しては、一般的に「出願包袋(File Wrapper)」(特許出願人が特許出願から登録までの過程で行った応答、補正、及び無効審判手続中に行った答弁、訂正などの内容を含む)は特許明細書と同じく「内部証拠(intrinsic evidence)」に属し、特許請求の範囲の解釈上で重要な根拠とされることができるしかし、特許出願人が特許出願の審査又は無効審判の審理の過程で行った特許請求の範囲を限定解釈するための全ての説明は、必ずしも権利侵害訴訟において、その特許権の範囲をより限定的に解釈するものとして認められるとは限らない。知的財産商業裁判所109年(西暦2020年)民専上字第39号判決(以下「本件」という)はその一例である。

 

本件はロック装置に関する特許権侵害訴訟である。裁判所は両当事者の請求に応じ、特許請求の範囲における2つの技術的特徴((1)「キャビティ」、(2)「ブロッキング部材」と「ブロッキング部材によって占有されていないキャビティの余剰スペースを補填すること」)について解釈を進めた。

 

特徴(1)「キャビティ」に関しては、特許権者は発明の名称「台形セイフティスロットを備えたセキュリティロック」や出願過程において智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)に提出した「意見書」中の説明を用いて、キャビティの形状を「台形」と解釈しようとした。裁判所は、特許請求の範囲を解釈する際、まず、「明細書の実施例及び図面を参酌してなされた特許請求の範囲の解釈は、特許請求の範囲の最も広範な合理的解釈を基準とすべきで、明細書において特許請求の範囲の内容は実施例及び図面に限られるべきであると明確に示されている場合を除き、実施例又は図面によってその範囲を制限してはならず、ひいては登録された特許請求の範囲が客観的に表された特許権の範囲を変更してはならない。」と述べた。特許権者の限定的解釈及び理由に対して、裁判所は「係争特許の請求項1には『キャビティ』に関して『前記前端部に挿入可能なキャビティが設けられており、前記キャビティには開口部があり、前記キャビティの内部は前記キャビティの開口部よりも大きい』と記載されているだけで、当該キャビティを『台形』の形状だけには限定していない。」と判断した。このような見解から、裁判所は、当初の特許請求の範囲の文言は十分に明確であるので、キャビティの形状を制限するために「台形」を追加する必要はないと考えたようである。同所はまた、係争特許の明細書を参酌した上で、他の形状の実施形態もあることから、係争特許はキャビティを台形の形状に限定する意図はなかったと認定した。その特許審査の過程において「意見書」で行った「前記キャビティの内部は前記キャビティの開口部よりも大きい(すなわち台形)」という特許権者の説明については、裁判所は以下のように認めた。特許権者は説明しただけで補正をせず、かつ、智慧局の審査時に特許請求の範囲の解釈をめぐる争点に触れておらず、智慧局が係争特許を登録査定とした理由にもキャビティを「台形のキャビティ」とする解釈が含まれていない。これらの事情を総合考慮して、かつ請求項、明細書に既に明確に記載されている以上、自ずと意見書における特許権者による説明だけで「キャビティ」の文言範囲を台形に限定するべきではない。

 

特徴(2)「ブロッキング部材」と「ブロッキング部材によって占有されていないキャビティの余剰スペースを補填する」)に関しては、特許権者はかつて意見書において「本件のブロッキング部材(60)とスライドロックピン(70)がロック状態の時に、キャビティ内が完全に充填される」と記載したことから、ここでいう「補填」とはキャビティ内の余剰スペースを「完全に充填」することを指すと強調した。これに対して、裁判所は、依然として特許明細書に開示された技術内容に基づいて、ブロッキング部材がキャビティの開口部から離脱しないような程度で「キャビティをほぼ填補」すればよく、キャビティ内の余剰スペースを完全に充填する必要はないと認めた。裁判所はまた、特許権者は意見書において、キャビティを完全に充填するという記載はあるが、当時特許請求の範囲の補正をせず、かつ智慧局の拒絶理由には特許請求の範囲の解釈をめぐる争点について何も言及されておらず、請求項、明細書に明確に記載済みである以上、自ずと意見書の記載をもって特許請求の範囲を減縮すべきではないと改めて強調した。

 

本件から分かるとおり、特許請求の範囲の文言自体の記載が明確で、特許明細書に特許請求の範囲のある技術的特徴についても特に限定的な解釈がない場合、出願包袋(例えば、意見書、無効審判答弁書)における特許権者の断片的な説明だけでは、智慧局が審査と登録査定の過程において特許権者の限定解釈を採用して特許の有効性を認めたことを示す明確な証拠がある場合を除き、裁判所にそれを採用してその特許請求の範囲の限定的な解釈を受け入れてもらうという目的を達成することは容易ではない。よって、特許権者の立場から見れば、先行技術と区別するために特許請求の範囲を減縮する必要がある場合、応答又は答弁の際に限定的解釈を説明するだけではなく、補正又は訂正ができる場合、補正又は訂正により特許請求の範囲を減縮することが最善策であると考えられる。

 

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