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専利法(専利:特許、実用新案、意匠を含む)第58条第4項は、「特許権の範囲は、特許請求の範囲を基準とし、特許請求の範囲の解釈時には、明細書および図面を参酌することができる。」と規定している。



専利法(専利:特許、実用新案、意匠を含む)第73条第1項は、「無効審判請求は、無効審判請求の趣旨(声明)、理由を明記した無効審判請求書を備え、ならびに証拠を添付しなければならない。」と規定している。これに基づき、専利無効審判手続においては、無効審判請求人(以下「請求人」という)が証拠を提出する客観的な立証責任を負うべきである。また、外国語による書証(文書による証拠)の取扱いについては、専利法施行細則第3条第2項においても、「専利出願および専利に関する事項の手続を行うための書類は、中国語で作成されなければならない。証明書類が外国語である場合、専利主務官庁が必要があると認めたときは、出願人に対し、中国語訳または抄訳を添付して提出するよう通知することができる。」と規定されている。したがって、請求人が無効審判請求の証拠として外国語の文献を提出した場合、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、手続を円滑に進めるため、請求人に対し中国語訳の提出を求めることができる。しかし、無効審判手続およびその後の行政訴訟において、専利権者は、自身の専利が取り消されるリスクに直面する中で、「立証責任は請求人にある」という立場を頑なに堅持することが適切であると言えるだろうか。特に、専利権者が、相手方の提出した翻訳文や智慧局が採用した機械翻訳に誤りがあると考える場合、消極的な否認の姿勢をとって、単に翻訳の誤りを指摘するだけで、自らが正しいと認める翻訳文を提出せずに、立証責任の分配制度の下で有利な判断を得られることを期待してよいのだろうか。これに対し、最高行政裁判所は、2026年5月20日に下した114年(西暦2025年)度上字第359号判決において、否定的な見解を示した。

 

本件の原告は特許権者で、その特許について請求人から無効審判が請求された。請求人が引用した証拠2は、外国語の書証である。智慧局における無効審判の審理期間中、同局は請求人に対し、1か月以内に証拠2の中国語訳を提出するよう通知する書簡(以下「係争通知書」という)を送付し、その中では「期限内に提出しなかった場合、係争通知書添付のGoogleによる中国語訳に基づいて審理を行う」と明記されており、同通知書は特許権者にも副本が送付された。請求人は期限内に中国語訳を提出せず、特許権者もGoogleによる中国語訳の正確性について何ら争いもなかったため、智慧局は当該外国語の書証およびGoogleによる中国語訳に基づき、「無効審判請求が成立し、特許を無効にすべき」旨の審決を下した。その後、特許権者は、当該Googleの中国語訳には多くの誤りがあるとして、知的財産および商業裁判所(以下「IPCC」という)に行政訴訟を提起した。これを受けIPCCは、訴訟の審理期間中に請求人に対し正式な中国語訳を追加提出するよう命じ、請求人もその後、期限どおりに提出した。しかし、請求人が新たに提出した翻訳文に対し、特許権者は依然として自らの翻訳文を提出せず、書面において請求人の新たな翻訳文が不正確であると指摘するにとどまった。IPCCは、最終的に特許権者の敗訴を言い渡した。特許権者はこれを不服として、最高行政裁判所に上告し、智慧局が請求人に対し正確な翻訳文の提出を命じなかったこと、また、係争通知書において特許権者への答弁要求がなされていなかったため、特許の訂正や当該翻訳文に対する答弁を行う機会が与えられなかったこと、さらに、原処分で引用された証拠2であるGoogleの中国語訳は請求人が提出したものではなく、無効審判請求の証拠には該当しないにもかかわらず、智慧局は特許権者に答弁の機会を与えなかったため、その手続上の利益が損なわれたなどと主張した。

 

最高行政裁判所は、前述の114年(西暦2025年)度上字第359号判決をもって、特許権者の上告を棄却した。その論理の要旨は以下のとおりである。

 

1.智慧局の係争通知書は特許権者にも副本が送付されていたが、特許権者は原処分が下される前に係争特許の訂正を請求しておらず、またGoogleの中国語訳における誤訳の有無についても争っていなかった。したがって、智慧局による原処分作成の手続きに瑕疵はなく、特許権者の訂正請求の権利にも影響を及ぼしていない。

 

2.行政訴訟において、当事者間で外国語の証拠の翻訳内容について争いがある場合、裁判所は、必要に応じて、行政訴訟法第121条第1項第2号に基づき、当事者に対し中国語訳の提出を命じ、口頭弁論を行うことができる。ただし、当事者も、裁判所が適正な裁判を行えるよう、自ら中国語訳を提出することができる。本件の原審では、請求人に対し証拠2の中国語訳の提出を命じ、請求人もこれに応じ提出したが、特許権者は口頭弁論の準備書面において、前記の中国語訳も正確ではないと主張したのみで、自ら中国語訳または抄訳を提出しなかった。このような状況下において、原判決は、請求人が指摘した原処分の理由がGoogleの中国語訳を引用したことにより生じた誤りの部分について、証拠2の原文に基づきその技術的内容を詳細に述べ、さらに証拠2の明細書に開示された技術的内容に基づいて係争特許の各請求項の進歩性を個別に判断しており、理由付記の不備の違法はない。

 

3.請求人は、無効審判請求手続において証拠2の中国語訳または抄訳を提出しなかったものの、その無効審判請求理由書には、請求人が主張する根拠条文が明記されており、証拠2の外国語原文を引用して具体的事実および各具体的事実と証拠との関係が記載されていた。智慧局は、証拠2に開示された外国語原文および図面に基づき、前述のGoogleによる中国語訳を参酌し、無効審判請求の趣旨の範囲内で、当事者の弁論の全趣旨と事実・証拠調べの結果を斟酌し、論理則および経験則に従って判断を行った。たとえその判断が、請求人が主張する対応関係や対比結果と完全に一致しないとしても、請求人が提出しなかった理由を職権で審理したものではないため、専利法第75条に基づき特許権者に期限を定めて答弁するよう通知する必要はない。

 

以上のことから、請求人は自らの主張について立証責任を負う一方で、特許権者はそれをもって証拠内容の解明や証拠調べが自らとは無関係であると考えることはできない。むしろ、特許権者には、裁判所による事実認定に協力する義務がある。特許権者が外国語の証拠の翻訳内容に争いがある場合、裁判所が適正な裁判を行うことができるよう、自らが妥当と認める中国語訳を積極的に提出することが望ましい。

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