ニューズレター
特許請求の範囲に外部の構成要素との連動関係が記載されている場合、それは当然に特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるのか
専利法(専利:特許、実用新案、意匠を含む)第58条第4項は、「特許権の範囲は、特許請求の範囲を基準とし、特許請求の範囲の解釈時には、明細書および図面を参酌することができる。」と規定している。したがって、請求項に記載された技術的特徴は、原則としてすべて特許権の範囲を特定する要素に組み込まれるべきであり、恣意的に切り離したり、選択的に無視したりすることはできない。しかし、実務上、請求項に記載された内容が、製品自体の構造に加え、当該製品と外部環境の構成要素との間の信号伝送や連動関係(相互作用の関係)にも及ぶ場合、これらの記載を請求項の範囲を限定する技術的特徴と解釈すべきか、あるいは単なる当該製品の動作背景に関する付随的な記述にすぎず、限定効果を生じないと解釈すべきかについては、従来より議論が進められている。特に、特許権者が訴訟において侵害の対比において不利な立場に立たされ、当該外部構成要素の記載は単なる蛇足であって限定条件ではないと主張しようとする場合、裁判所はこれを認めるのだろうか。知的財産および商業裁判所(以下「IPCC」という)は、114年(西暦2025年)度民専上字第2号判決において、この点について否定的な見解を示した。
本件の控訴人は実用新案権者(以下「実用新案権者」という)であり、その所有する台湾実用新案登録第M611958号「電動車用始動バッテリー」(以下「系争実用新案」という)について、被控訴人である光倫企業社(以下「光倫企業社」という)が製造・販売するGogoro(ゴゴロ)小型バッテリー(型番GPB-1000S、GPB-1000A。以下「系争製品1、2」と総称する)が自身の実用新案権を侵害していると主張し、訴えを提起した。係争実用新案の請求項1は、「電動車用始動バッテリー」を請求対象としているが、その考案には、バッテリー自体の構成ユニットに加え、当該バッテリーの内部構成要素と電動車の電子制御ユニット(Electronic Control Unit、以下「ECU 」という)および蓄電ユニットとの間の信号伝送および連動関係についても記載されている。実用新案権者は、請求項の文言には、保護ユニットと充電バッテリーパック、ECU、蓄電ユニットとの「電気的接続」が記載されているのみで、「ECUによって保護ユニットが制御される」といった機能に関する記載は一切ないとして、原審が独自にこの限定事項を付け加えたことは、理由付記の不備にあたると主張した。光倫企業社はこれに対し、係争製品1の充放電保護機能は、バッテリー内蔵の保護ICが各バッテリーの電圧を自律的に監視し、閾値に達すると自動的に制御信号を出力して充電回路を遮断するものであり、その一連のプロセスにおいて車両側にいかなる制御信号も送信する必要はなく、車両システムが制御に介入する必要もないとし、また、係争製品2にはバッテリー保護IC回路すら搭載されていないため、係争実用新案の保護ユニットに対応することはできないと主張した。
IPCCは、前述の114年(西暦2025年)度民専上字第2号判決をもって、実用新案権者の控訴を棄却した。その論理の要旨は以下のとおりである。
1.請求項の解釈について、IPCCは、外部の構成要素との連動関係が請求項によって特定される権利範囲に属することを明確に示し、次のように述べている。「系争実用新案の請求項1は電動車用始動バッテリーに関するものであるが、その主体には当該バッテリーの構成ユニットが記載されているだけでなく、当該バッテリー内の各構成ユニットと、当該バッテリーを使用する電動車のECUおよび蓄電ユニットとの間に信号の伝送および作動関係が形成されることも記載されている……したがって、系争実用新案の請求項1におけるバッテリーの構成要素、ならびに当該構成要素と電動車のECUおよび蓄電ユニットとの間の制御・作動関係は、いずれも系争実用新案の請求項で特定された権利範囲に属し、かつ、侵害対比の際にも、系争製品との対比において侵害の有無を認定するための技術的特徴として考慮されるべきである。」
2.明細書の開示内容について、IPCCは係争実用新案の明細書の記載を参酌し、係争実用新案の動作メカニズムを次のように判断した。「係争実用新案の保護ユニットの動作は、保護ユニット12が充電バッテリーパック11の充電状態 (SOC: State of Charge)を、電力検出ユニット14を介してECU 21に送信し、ECUが当該充電バッテリーの充電状態に基づいて保護回路の開閉(遮断・接続)を制御し、ひいては充電バッテリーパックの充放電を制御するものである。」
3.実用新案権者が前述の記載を回避するために訴訟中に主張を変更したことについて、IPCCは次のように指摘した。「控訴人は『保護ユニットは、電動車用ECUによる制御を必要としない』と主張しているが、これは明細書の記載内容や、上記事件における書面および準備手続における主張と前後して矛盾しており、到底採用できない。」
4.侵害対比の部分について、IPCCの判断は以下のとおりである。係争製品1の充電保護メカニズムは、バッテリー内蔵の保護ICによって独自に判断・作動するもので、車両側にいかなる制御信号も送信する必要がなく、また車両システムによる充電制御への介入も不要である。一方、係争製品2にはそもそもバッテリー保護IC回路が搭載されていないため、客観的に見て係争実用新案の保護ユニットに対応することができない。オール・エレメント・ルール(All Elements Rule)に基づき、IPCCは、係争製品1、2のいずれも、係争実用新案の請求項1に記載された「外部ECUによる制御」などの複数の主な技術的特徴を欠いており、係争実用新案の範囲に属さないと判断した。したがって、同裁判所は、控訴には理由がないとして、原審判断を維持し、実用新案権者による侵害の差止めや損害賠償などの請求を棄却した。
以上のことから、請求項に記載された技術的特徴は、たとえ製品と外部環境の構成要素との間の相互作用関係を記述するものであっても、依然として実用新案権の範囲を特定する要素として組み込まれるべきであり、裁判所は侵害対比を行う際、当該特徴が外部構成要素に関わることを理由としてこれを除外することはない。したがって、専利権者が専利請求の範囲を作成する際、保護対象が単一の製品である場合は、製品自体の構造的特徴にできる限り焦点を当て、外部構成要素との連動関係を不必要に請求項に組み込むことを避けることが望ましい。これは、後に、権利範囲を減縮する技術的特徴であると解釈されることを防ぐためである。明細書の作成段階においても、単一の実施例のみを根拠に裁判所から限定解釈されることを避けるため、想定され得るあらゆる実施形態(外部制御や内部自律制御など)を併せて開示し、対応する従属項によって裏付けを行うことが望ましい。さらに、訴訟代理人は、技術的特徴に関する解釈や陳述について、訴訟手続き全体を通じて一貫性を保つよう努めるべきで、訴訟の途中で主張を変更して矛盾を招いており、主張の一貫性の欠如を理由に裁判所から採用されない事態を避けることが望ましい。