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商標の変更または付記を加えた使用による登録取消のリスク


Ruey-Sen Tsai/Michelle Tsai

 一、商標の変更または付記を加えた使用に関する登録取消規定

   

商標法第63条第1項第1号には「商標登録後、次のいずれかに該当する場合、商標主務官庁は、職権でまたは請求によりその登録を取消しなければならない。1、自ら商標を変更しまたは付記を加えた結果、他者が同一または類似の商品若しくは役務に使用している登録商標と同一または類似となり、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるとき。」と規定されている。この規定の立法目的は、商標権者に対して商標登録後の合法的な使用義務を課すことで、登録商標の不適切な使用によって他人の登録商標と衝突や混同が生じるのを防ぎ、市場における公正な競争秩序を維持することにある。

 

『登録商標使用に係る注意事項』第4.2によると、商標の変更または付記とは、登録商標本体の文字、図形、色彩などを変更したり、付記を加えたりすることを指す。また、商標法第63条第1項第1号の立法目的は、商標の真正な使用の判断とは異なるため、商標の使用態様と登録商標の図案が同一性を有するかどうかを、商標の変更または付記の事実の有無を判断する基準とすべきではない。

 

さらに、商標法第67条第2項において準用される同法第57条第2項および第3項により、取消しの根拠として引用された商標(以下「引用商標」という)が登録から3年を経過している場合、取消審判請求人は取消審判請求日前3年以内における当該引用商標の真正な使用を示す証拠を提出しなければならない。

 

最高行政裁判所113年(西暦2024年)度上字第188号判決(判決日:2026211日)は、係争商標権者(原告)が実際に使用していた商標の態様は変更または付記に該当すると判断した。これにより、その商標登録を取り消すべきであるとして、原審である知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)の判決を維持し、係争商標権者(原告)の上告を棄却した。

 

二、事案の概要

 

本件係争商標の登録図案は「NAVY」であり、指定商品は商品区分第25類の「衣料品」である。これに対し、2件の引用商標の登録図案は「」と「であり、それぞれ第25類の「衣料品」の指定商品、および第35類の「衣料品または衣料品アクセサリーの小売・卸売」の指定役務をカバーしている。

 

取消審判請求人(参加人)は、係争商標に変更または付記を加えて使用している状況があることを知り、係争商標権者のウェブページについて公証人の認証を取得した上で、商標法第63条第1項第1号に基づき、経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)に商標登録の取消審判を請求した。智慧局が係争商標の登録を取り消すべき旨の審決を下したところ、係争商標権者(原告)はこれを不服として経済部に訴願を提起したが、それも棄却されたため、本件行政訴訟を提起した。IPCCは、係争商標権者敗訴の判決を下した。係争商標権者は原審判決を不服として上告したが、最高行政裁判所がこれを棄却し、本件が確定した。

 

三、判決の概要

 

 (一)裁判所は、取消請求人が提出した証拠は、取消請求日前3年以内に引用商標が使用されていた事実を証明するのに十分であると判断した

 

1.取消請求人は、衣類、靴、靴下などの商品の注文データ、請求書、ウェブサイトのスクリーンショットまたは処理画面などの証拠を提出した。これらの注文データには、青い楕円形の中に白抜きの英語「OLD NAVY」が配置されており、商品ブランド名は「OLDNAVY」、価格は台湾元で表記され、台湾の受取人情報も記載されていた。

 

2.取消請求人の公式サイトのスクリーンショットは、言語が中国語、URLは「tw.oldnavy.gap.hk」となっており、引用商標が表示されていた。

 

(二)係争商標権者による商標の変更使用または付記使用の事実

 

1. 装飾的な図案は通常、商品の外観の装飾にすぎず、原則として商品・役務の出所を表示する機能(出所表示機能)を有さない。しかし、それが商標の使用に該当するのか、あるいは単なる装飾にすぎないのかは、関連分野の業者の表示慣行、方法、位置によって判断されるべきものである。アパレル業者は通常、襟ラベル、ポケット、袖、胸元などに商標を表示する。そのため、その分野の表示慣行に従い胸元などに商標の図案を表示する場合、一般の社会通念及び関連消費者の認知に照らせば、関連消費者にそれを商標として認識させるに十分であり、商標の使用に該当するといえる。

 

2.係争商標は英語「NAVY」のみで構成されている。係争商標権者は、この「NAVY」という文字を白抜きにし、青色背景の楕円形の中に配置した図案(以下「係争図案」という)を、胸元に表示した。一般の社会通念及び関連消費者の認知に照らせば、これは関連消費者が商標である認識するのに十分なものであり、商標の使用に該当する。また、その判断は必ずしも当該係争図柄が係争商標と同一性を有するかどうかに限られるものではない。

 

(三) 係争商標権者による商標の変更または付記を加えた使用行為は、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがある

 

1.係争図案と引用商標と対比すると、いずれも白抜き文字の英語「OLD NAVY」、「NAVY」を、それぞれ、黒色、青色の背景の楕円形の中に配置したものであり、共通して「NAVY」の文字を含んでいる。引用商標の英語「OLD」は形容詞であり、その主な識別部分(要部)は依然として英語「NAVY」である。両当事者の商標はいずれも文字を際立たせるために楕円形を背景に使用しており、両者は類似の程度は低くない商標である。

 

2.引用商標は第25類の「衣類、靴、靴下など」の商品、および第35類の「衣料品または衣料品アクセサリーの小売・卸売」の役務をカバーしている。これらは、係争商標が指定する第25類の商品と同じく、いずれも身体に着用するものであり、補完的な関係にあり、また、小売・卸売役務の取扱範囲にそれらの商品が含まれていることから、両者は類似の程度が低くない商品または役務である。

 

四、結論

 

実務上、商標の変更または付記に該当するかどうかの判断は、商標の実際の使用態様と登録商標の図案が同一性を有するかどうかに限られるものではない。むしろ、その実際の使用態様によって他人の登録商標と混同誤認を生じさせる可能性があるかどうかに重きを置いている。

 

商標権者は、事業戦略上の理由から商標の実際の使用態様を調整することがよくある。そのため、智慧局が公表した『登録商標使用に係る注意事項』を参照し、商標を継続的に合法的に使用し、取消請求日前3年間の真正な使用をめぐる紛争を避けるため、実際の使用態様が登録商標の図案と同一性を有しているかどうかに注意を払うことに加えて、商標権が取消されるリスクを軽減するため、その使用方法が変更または付記に該当するかどうかにも特に注意を払わなければならない。

 

当事務所は、本件の取消請求人(行政訴訟段階では参加人)の代理人を務めた。その結果、取消手続きにおいて取消成立の処分を勝ち得り、さらに訴訟段階においても勝訴判決を獲得した。

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