ニューズレター
専利権侵害警告書の認定-最近の実務判決からの考察
専利権(専利:特許、実用新案、意匠を含む)侵害警告書の認定について、最近の知的財産および商業裁判所(以下「IPCC」という)による 2025年11月28日付113年(西暦2024年)度民公訴字第7号民事判決は、特定の文書の送付が「公正取引委員会による事業者の著作権・商標権・特許権侵害警告書事件処理原則(中国語「公平交易委員會對於事業發侵害著作權、商標權或專利權警告函案件之處理原則」)」(以下「処理原則」という)の適用範囲に該当するか否かについて明確に示しており、注目に値する。
本件では、原告は半導体ウェハー、パワーデバイスおよび制御モジュールの製造業者および販売業者であり、甲社は自社で設計・製造したチップを原告に販売し、原告はこれらのチップを用いて完成したMOSFETアセンブリを製造し、それを乙社および丙社に販売した。乙社および丙社はさらにMOSFETアセンブリを委託製造業者に組み立てさせ、最終製品として各地に販売した。
2022年初め、被告は市場で自社の米国特許を侵害している疑いのある製品を発見し、調査の結果、同年中にそれぞれ関連企業に警告書を送付し、次の主張を行った。
1.2022年5月23日:被告は、甲社および乙社に対し、第1回警告書を送付し、乙社の製品が被告所有の米国特許第409号(以下「係争米国特許409」という)を侵害していると主張した。
2.2022年9月14日:被告は、乙社およびその米国子会社、丙社に対し、第2回警告書を送付し、これらの企業の特定製品アセンブリ(以下「係争アセンブリ」という)が被告所有の米国特許第634号(以下「係争米国特許634」という)を実施していると主張し、両者の比較例の分析を同封するとともに、各社に対し、係争アセンブリの製造業者および供給業者への通知を推奨した。
3.2022年10月31日:被告は、乙社およびその米国子会社に対し、第3次回警告書を送付した。その内容は第2回警告書の内容を踏襲するものであり、乙社およびその米国子会社に対し、本件の進捗状況を再度問い合わせた。
これに対し、原告は係争アセンブリの製造および販売業者として、被告が送付した上記3回の警告書はいずれも処理原則の規定を遵守しておらず、すなわち原告に事前通知をせずに、製造業者・輸入業者または代理店ではない乙社およびその米国子会社、丙社に直接警告書を送付したことは、公平交易法(日本の「不正競争防止法」および「独占禁止法」に相当。以下「公平法」という)第24条および第25条に違反しており、原告に損害を与えたとして、被告に損害賠償を求めた。
IPCCは、これまでの警告書ごとに以下の理由で原告の訴えを棄却した。
1.第1回警告書:IPCCは、被告が当時侵害と認定した製品はモジュールではなくチップの設計であったため、第1回警告書の内容には、侵害の可能性がある者として甲社と乙社が明記されており、原告は含まれていなかったと指摘した。したがって、第1回警告書が原告に送付されなかったのは当然であり、原告が主張するような、被告による処理原則違反や営業上の信用毀損の事情は存在しないと判示した。
2.第2回警告書:IPCCは、第2回警告書は、乙社およびその米国子会社の製品が係争米国特許634を実施していることを示しており、同書には、米国特許634の内容、係争アセンブリと米国特許634との比較例の分析が同封され、乙社およびその米国子会社に対し、これを明確するよう求めたものであると明らかにした。IPCCはさらに、被告が第2回警告書において、乙社およびその米国子会社が係争米国特許634を侵害しているとは主張しておらず、また乙社およびその米国子会社に対していかなる行為も禁止せず、違反した場合の法的効果も指摘していなかったため、当該第2回警告書は性質上、単なる通知にすぎず、処理原則第1点および第2点で定義される警告書には該当せず、したがって処理原則は適用されないと判示した。
3.第3回警告書:第3回警告書の内容に基づき、IPCCは、本警告書は第2回警告書の立場を単に繰り返しただけであり、追加の主張は提出されていないと判断した。したがって、その性質上、第2回警告書と同一のものとみなされ、処理原則は適用されないと判示した。
しかしながら、同一の事実関係に基づき、甲社が本件被告に対して提起した民事訴訟におけるIPCC 112年(西暦2023年)度民公訴字第1号民事判決(判決日:2025年12月26日)は、これと全く異なる見解を採っている。同判決は、被告が第2回および第3回の警告書を送付した行為が処理原則で定義される警告書送付行為に該当しないとは認定せず、むしろこれら2通の警告書の送付はいずれも処理原則の規制を受けるものと認め、その上でさらに審理を進めた。さらに同判決は、被告の警告書(筆者註:すなわち第2回および第3回警告書)には、係争米国特許634の公開公報および侵害対比分析が同封されており、特許出願の内容・範囲、侵害製品、侵害事実、侵害対比等が明確に記載されていることから、被告の行為は甲社の最終ブランドメーカーに対し、係争米国特許634が侵害されている可能性を認識させるに足りるものである旨を指摘している。
しかし本件においてIPCCは、第2回および第3回の警告書の内容は特許権侵害の事実に言及しておらず、また送付対象者に対して特定の行為も禁止せず、いかなる違法な効果も指摘していなかったとして、被告が第2回および第3回の警告書を送付した行為は、処理原則で定義される事業者の警告書送付行為には該当しないと判断した。両事件は同一の事実関係であるにもかかわらず、判決においては全く異なる判断がなされており、これが市場競争秩序に影響を及ぼすかどうかは、今後の観察が待たれるところである。