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「他人の著名な商品表徴の侵害になるか」に関する知的財産商業裁判所の見解



台湾の現行法規範に照らすと、知的財産権による商品の外観デザインの保護ルートについて、意匠や商標の登録出願のほか、台湾の公平交易法(日本の「不正競争防止法」及び「独占禁止法」に相当、以下「公平法」という)第22条にも「事業者がその営業において提供する商品又は役務について、下記の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。一、他人の著名な氏名、商号若しくは会社名称、商標、商品容器、包装、外観又はその他の他人の商品を示す表徴と同一又は類似するものを、同一又は類似の商品において使用することにより、他人の商品と混同を生じさせること、又は当該表徴を付した商品を販売、運送、輸出若しくは輸入すること。(後略)」と明確に規定されており、同法第29条には「事業者が本法の規定に違反した結果、他人の権益を侵害した場合、被害者はその排除を請求することができる。侵害のおそれがある場合は、その防止を併せて請求することもできる」と別途規定されている。しかし、どのような商品の外観が前述の公平法で規制される「著名表徴」と認められるのか、また、「他人の商品と混同を生じさせたかか」どう判断すればいいのかこれに対し、知的財産商業裁判所は、20211223付で下した110年(西暦2021年)度民公上更(一)字第2号判決において見解を示した。本件事実及び判決理由の概要は以下のとおり。

 

本件原告は、自社が世界的に有名なスーツケースメーカーであり、その傘下の同じ名前を冠したブランドのスーツケースは、長年にわたり「リブ加工のデザイン(スーツケースの表面に施する凹凸加工のこと、以下「リブデザイン」という)を商品の表徴として使用してきており、この表徴は関連業界や消費者によく知られており、商品の出所を識別するための商品の表徴となっているが、被告のスーツケースの多くは当該「リブデザイン」と同一又は非常に類似したデザインを採用しているため、消費者に係争スーツケースは原告が製造販売したものであると誤認させ、公平法の関連規定に違反した旨主張した。これに対し、被告は、「リブデザイン」は公平法でいう商品の表徴ではなく、かつ、被告のスーツケースの外観もまた「リブデザイン」とは異なり、原告製品の販売価格や販売ルートも大きく異なることから、一般消費者に混同誤認を生じさせるおそれはないと抗弁した。それにもかかわらず、裁判所は原告の主張を採用し、被告が原告の著名な商品表徴「リブデザイン」を侵害したと認定した。その理由の概要は以下のとおり。

 

1、知的財産権制度は、技術の保護だけでなく、イノベーション(革新性)と市場競争の公平性にも及んでいる。公平法第22条の「著名な商品表徴」の制度は消費市場における公正な競争秩序を維持し、業者が商業的信用へのフリーライド(ただ乗り)又は高度な模倣の方法により、正当な取引秩序を破壊することを避けることを目的としている。原告が提出した「リブデザイン」の文字及び図形が、革新性を有し、かつ消費者に商品の出所を識別させるに足りるものであれば、それも同様に「著名な商品表徴」の範囲を特定するものとできる。特定の寸法、比例、ひいては材質などの技術的特性については、「著名な商品表徴」を備えているかどうかを判断するための要件ではない

 

2、原告の「リブデザイン」は著名表徴であるか否かの判断について

これに対し、裁判所は以下のような見解を示した。「著名表徴」とは、表徴が表彰する識別性と信用が関連事業者又は消費者に普遍的に熟知されており、商品又は役務の出所を区別するに足りる標識であることを指す。関連事業者又は消費者の範囲には、商品又は役務の実際の又は潜在的な消費者、表徴を使用した商品又は役務の流通に携わる業者、表徴を使用した商品又は役務に係る業務を運営する関連事業者が含まれる。また、同裁判所は原告の商品外観「リブデザイン」の概念の強さ、原告終始一貫して「リブデザイン」の概念を伝えてきたこと、長期にわたり「リブデザイン」に関する広告やマーケティングを継続してきたこと、「リブデザイン」を施したスーツケースの営業状況及びブランドイメージが良好であること、メディアで広く報道されることなどの要素を総合的に斟酌し、さらに当該「リブデザイン」が他国でも商標として登録されていることから、当該外観デザインは確かに一定程度の識別性を持っていることを証明する証拠が十分であるとして、原告の「リブデザイン」が著名表徴であると認めた

 

3、被告の係争商品が「他人の商品と混同を生じさせるおそれがある」かどうかの判断について

これに対し、裁判所は以下のような見解を示した。「一般消費者の平均的な注意力」、「商品表徴の著名性の有無又は識別力の強弱、表徴及び商品の類似度」の観点から見れば、被告のスーツケースには被告会社の商標やロゴが付されていても、消費者がスーツケースを購入する際に、その受けた外観全体の印象」はいずれも「リブデザイン」の視覚的インパクトであることから、被告と原告との商品表徴の間に何らかの加盟、関連又はスポンサー関係があると誤認混同させる可能性が非常に高い。また、商品の販売ルート、顧客層の同質性、競業関係、価格差の観点から見れば、被告商品と原告商品はいずれも旅行を好む中産階級を客層しており、両者の価格差は中産階級にとってあまり感じていないため、客層が重なっていることが明らかであり、競業関係がないとは言い難い。さらに、公平法第22条第1項第1号でいう「混同」には、模倣品と真正品(模倣された商品)との商品表徴の間に何らかの加盟、関連又はスポンサー関係があると誤認させる場合も含まれている。よって、消費者は、原告と被告との間にマスターブランド(親ブランド)とサブブランド(子ブランド)の関係があると誤認する可能性が極めて高いことから、混同が生じる具体的なリスクがあると認められる

 

4、以上のことから、裁判所は、被告の商品は一般消費者に誤認混同を生じさせるに足りるものであり、原告の著名な商品表徴「リブデザイン」を侵害したと判断した。

 

上記判決から、原告は特定のデザインが商品の出所を表示する機能を有することを証明する証拠を十分に提供できれば、それが著名な商品表徴であることを裁判所に納得させるのに役立つことが分かる。また、裁判所は上記判決で、「混同」の態様には、模倣品と真正品(模倣された商品)との商品表徴の間に何らかの加盟、関連又はスポンサー関係があると誤認させる場合も含まれていると指摘しており、「混同を生ずるおそれ」の有無についてより緩い判断基準を採用しているような考え方は注意に値するものである。

 

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