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専利法の一部条文改正案(第2版)



 経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)が20201230日付けで予告した専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)一部条文改正案では、専利救済制度について大幅な見直しが行われた。その改正ポイントは以下のとおりである。

一、専利主務官庁は「複審及び争議審議会」を設置し、審議手続を強化する。 

二、専利出願手続において複審審議制度を導入し、再審査を廃止し、訴願階層を省略する。

 

三、専利無効審判請求事件に争議審議制度を導入(改正条文第71条~第82条)、専利権の帰属をめぐる紛争は無効審判請求の事由とせず、民事ルートで解決すべきとする。

 

四、専利の複審及び争議に係る訴訟は行政訴訟手続から民事訴訟手続に改める。

 

 智慧局は業界からの意見を参考にし、2021622日付けで専利法一部条文改正案の第2版を公表した。同改正案の初版と比べると、第2版の改正ポイントは以下のとおりである。

 

一、専利出願権と専利権帰属の紛争の民事救済に対応する「審査、審理などの手続の一時停止」措置の導入。

 

 専利出願権(法により専利を出願できる権利)及び専利権の帰属をめぐる紛争について、訴訟、調停又は仲裁などの民事ルートにより救済を求める場合、改正案第2版では当事者に、当該専利に係る審査、審理及びその他の権利異動に関わる手続の一時停止を請求できる権利を付与した。専利主務官庁が手続を一時停止する期間は、原則として1年を限度とする。

 

二、分割出願の時期的要件を緩和

 

 現行専利法の規定によると、分割出願(子出願)は原出願(親出願)の再審査査定前、及び原出願の特許査定書、再審査の特許査定書送達後3ヶ月以内に行わなければならない。今回の改正により、出願人は原出願の拒絶査定書送達後2ヶ月以内、原出願の複審拒絶決定前、原出願の複審の特許決定書送達後3ヶ月以内においても分割出願できる旨の規定を新設した。

 

三、専利争議訴訟において新たな理由及び証拠を提出できる事由を新設

 

 改正案第2版において、第71条第1項第1号の事由に基づき請求した無効審判について、無効審判請求人が専利主務官庁の審議手続において提出しなかった理由及び証拠は、争議訴訟において提出してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合、この限りではないと定めた。(1)専利主務官庁による法令違反が原因で提出できなかった場合、(2)事実が裁判所において顕著である、その職務上すでに知られている、又は職権により証拠を調査すべきである場合。上記2項の規定を違反し、新たな理由又は証拠を提出した場合、裁判所はこれを却下しなければならない。

 

 現行「知的財産事件審理法」(中国語:「智慧財産案件審理法」)第33条の規定に基づき、無効審判請求人は訴訟中に同一の取消理由について新証拠を提出できるのに対し、裁判実務上、専利権者は訴訟の防御方法として訂正を請求する可能性がある。しかしながらその訂正については、尚も専利主務官庁による審査が必要であるため、無効審判請求人が訴訟中に提出した新証拠は、専利主務官庁が無効審判請求の審理時に斟酌できないだけでなく、専利権者も十分に防御する又は別途対応するために訂正請求できない。これにより、訴訟に遅延をもたらし、専利権者の訴訟利益も十分確保できなくなる。

 

 私権紛争の迅速かつ効果的な解決という立法目的を達成するために、今回の改正では主に無効審判請求事件の特殊性を考慮し、また、第二審(控訴審)では厳格な続審制を採用しているという民事訴訟法第447条の趣旨を参考にし、無効審判請求人が専利争議訴訟において提出する理由又は証拠の制限を明文化した。これは救済利益が当事者双方に関係し、また、訴訟費用及び立証責任の分配について双方の協力が必要であることを考慮した上で改正したものであるため、無効審判請求人は適時に関連証拠を提出しなかった不利益を負わなければならないとする。

 

四、争議訴訟における審理方法を規定

 

 争議訴訟が今回の改正により専利法において新設された訴訟類型であることを考慮し、今後関連実務の進め方を明確にし、紛争が起きないよう、争議訴訟の審理方法を明らかに規定した。

 

 裁判所は争議訴訟について、次のように裁判しなければならない。(1)原告の訴えが不適法と認めるときは、裁定でこれを却下しなければならない、(2)原告の訴えに理由がないと認めるときは、判決でこれを棄却しなければならない、(3)原告の訴えに理由があると認めるときは、原告の訴えにおいて、専利主務官庁の審議決定を取消し、専利権の範囲を認定する旨の判決をしなければならない、(4)原告の訴えに理由があると認めたが、専利主務官庁が不受理の決定とした案件の場合、原審決を取消し、専利主務官庁での審議へ差し戻ししなければならない。

 

 前述した改正案はまだ最終版ではない。今回の特許法改正は専利出願及び専利救済制度に大きな影響を与えているため、新制度をいち早く把握し、権益に影響がでないよう、専利権者及び知財実務担当者はいずれも専利法や関連法規の変更に注意を払う必要がある。

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