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台湾商標法改正案について



台湾の商標法は、193111日の施行以来、計11回の改正が行われた。現行商標法は2003528日に公布され、20031128日に施行されたものである。

近年の活発な経済発展や取引の多元化につれて、現行商標法では対応し切れない部分が顕在化してきた。また、シンガポール条約 (「商標法に関するシンガポール条約」;Singapore Treaty on the Law of Trademarks )の発効に伴い、商標制度の国際調和を図ることが必要になってきた。これらに対応するため、台湾知的財産局(TIPO、商標業務を司る主務官庁、日本の特許庁に相当)は、商標法改正に向け検討を重ね、草案を作成した。当該改正草案は、行政院の会議(閣議)で決定された後、立法院(国会に相当)経済委員会へ送られ、201159日に可決された。今後は、立法院本会議で審議され可決されれば、改正商標法が公布・施行されることとなる。以下に、立法院経済委員会で可決された商標法改正案の要点について説明する。

一、 商標の保護対象の拡大
 
  これまで、商標として登録を受けることができたのは、文字、図形、記号、色彩、音声、立体形状又はそれらの結合により構成されたものに限られたが、改正草案では、商標保護対象の範囲を「動く商標(motion marks)」、「ホログラム(hologram marks)」、「匂い商標(smell mark)」等に広げる。
 
二、 商標使用行為の態様の明確化
 
  商標使用に当たる態様を明文化する。デジタル映像音声、電子媒体、インターネット若しくはその他の媒体を通じて商品若しくは役務を所持、陳列、販売、提供、輸出入することが可能な場合、当該方法により、販売の目的をもって商標を付した商品・役務を所持、陳列、販売、提供、輸出を行うことは、商標使用行為に該当するとの旨も規定する。
 
三、 登録料分納制度の廃止
 
  現行法では、登録料の納付方法につき、一括納付と分割納付が定められているが、改正草案では、分割納付制度を廃止し、登録時に一括して10年分の登録料を納付するという制度に改める。
 
四、 商標併存同意制度への制限条件の導入
 
  商標併存同意制度について、現行法では、同一の商品又は役務における同一の商標でなければ、並存同意書を提出した場合、審査官は裁量の余地なく登録を認めなければならない。しかし、同一の商品又は役務における同一の商標でなくても、同意書の発行により併存登録させることが取引秩序、消費者の権益などに影響を与える事情も存在しうるため、今回の改正草案では、同意書制度の制限条件として、「併存登録の妥当性」を取り入れ、その判断を主務官庁に委ねる。
 
五、 登録費用納付期限後の権利回復措置の追加
 
  現行商標法では、登録査定後の一定期間内に登録料を納付しなかった場合、登録査定は効力を失う。改正草案では、故意のない出願人に対しては、登録料納付期間満了後の一定期間内に所定の登録料を追納すれば、権利を回復する機会を与える旨の規定が設けられた。
 
六、 無効審判又は取消審判の請求に関る使用証拠の提出規定の追加
 
  「同一又は類似の先行商標の存在」又は「登録商標の変更又は付記により、同一又は類似の商品・役務において、他人の登録商標と同一又は類似を構成すること」を理由に、先登録を引用して無効審判又は取消審判を請求する場合につき、改正草案では、引用商標が登録日から3年を経過している場合は、引用商標の使用事実、又は不使用について正当な事由があることを証明することが義務づけられるようになる。
 
七、 商標侵害に関する規定の修正
 
  (一)、 著名商標の保護に関し、現行商標法では、著名商標の文字部分を会社の名称その他営業主体を表す標識とすることにより、著名商標の識別力を希釈化した場合、又は消費者に誤認混同を生じさせた場合は、「商標権のみなし侵害」とされている。改正草案では、「希釈化した」又は「誤認混同を生じさせた」との要件を「希釈化するおそれがある」又は「誤認混同を生じさせるおそれがある」のように改めた。
 
  (二)、 法適用の疑義を避けるために、損害賠償の要件として「侵害者に故意・過失がある」ことを明確に定める。また、現行商標法では、損害賠償額の計算方法の一つとして「押収した商標権侵害に係る商品の小売り単価の500倍から1500倍までの金額による」という方法が定められているが、改正草案では、最低損害額の「500倍」を削除する。また、「合理的と思われる使用料に相当する金額」を損害賠償額とすることができる旨の条文も追加された。
 
  (三)、 改正草案に、税関が職権で侵害疑義物品を押収する法的根拠を追加する。また、権利侵害の調査又は訴訟提起のために必要と思われる場合、税関は権利者に侵害疑義物品の情報を提供する、又は担保金の供託を受けたうえで、侵害疑義物品のサンプルを提供することができるとの規定も追加する。
 
八、 証明標章及び団体商標に関する規定の修正
 
  (一)、 証明標章の定義を修正するとともに、産地証明標章の定義及び出願関連規定を追加する。また、証明標章は商標より高い公益性を持ち、証明標章への侵害が公衆に影響を及ぼす可能性も商標のそれより高いことに鑑み、証明標章権侵害行為に対する刑事罰の規定を追加する。
 
  (二)、 産地団体標章(地域団体商標)の定義及び出願関連規定を追加する。

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