ニューズレター
専利審査の過程において、進歩性欠如に係る拒絶理由を解消するために行われた「補足実験」も、専利の内容に実質的に貢献したと認められる
専利権(専利:特許、実用新案、意匠を含む)の帰属をめぐって争いが生じた場合、各当事者が特許出願に係る発明に対して「実質的な貢献(実質的な寄与)」をしたかどうかが、裁判所の判断における重要な根拠となる。最高裁判所104年(西暦2015年)度台上字第2077号民事裁定は、「実質的な貢献」とは何かについて、次のように明確に述べており、参考に値する。「…発明者は、専利請求の範囲(クレーム)の着想(conception)に対して実質的な貢献をしたことを、明確かつ説得力のある証拠をもって立証しなければならない。単に発明者に通常の知識を提供したり、関連技術を説明したりするにとどまり、専利出願のポートフォリオ全体について具体的な着想を持っていなかった者、あるいは発明者の着想を具体化しただけの通常の技術者、さらには発明の過程において、単にアイデアを示したり、課題について指導や示唆を与えたりするにすぎず、組織運営・リーダーシップ・準備作業のみを担当し、発明の創作に実質的に関与していない者は、いずれも発明者または共同発明者とは認められない。」
しかし、特許出願の過程において、特許出願人が経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)による発明の効果や進歩性に関する指摘を解消するため、後から関連する補足実験を行い、その実験データを提出した結果、発明が特許として認められた場合、このとき、たとえ当該特許出願に係る発明の最初の着想がすべてその特許出願人による貢献ではなかったとしても、補足実験が行ったことにより、当該特許出願の範囲に対しても一部実質的な貢献をしたと直ちに認めることができるかどうかについては、議論の余地がある。最近、知的財産及び商標裁判所(以下「IPCC」という)は、2026年4月22日付の114年(西暦2025年)度民専訴字第36号民事判決において、この問題について見解を示しており、注目に値する。
原告は次のとおり主張する。原告は、2021年に台湾原産のマーガオ胡椒を成分とする抗アレルギー製品(以下「係争製品」という)を独自に開発した。当時、被告会社にはかゆみ止めの原料を求めるニーズがあり、訴外人を通じて原告に問い合わせがあったため、原告は係争製品のサンプル、主要成分および配合比率などの情報を訴外人に提供し、訴外人がこれを被告会社に引き渡した。その後、被告会社は係争製品の名称を変更し、原告の同意や許諾を得ることなく、名称変更後の係争製品について智慧局に特許出願を行い、特許を取得した(以下「係争特許」という)。
原告はこれを知った後、被告会社に提供した係争製品の成分配合、コア技術および研究開発プロセスが、係争特許の特許請求の範囲における組成物の成分および抽出量と全く同一であり、両者の違いは名称のみであることから、係争特許に対して単独で実質的な貢献をしており、係争特許の特許を受ける権利(以下「特許出願権」)を有する者であると主張した。そこで、知的財産および商業裁判所(以下「IPCC」という)に確認訴訟(確認の訴え)を提起し、主位的請求として特許出願権は自己の単独所有に帰属すること、予備的請求として当事者双方の共有であることの確認を求めた。
IPCCは、前述の114年(西暦2025年)度民専訴字第36号民事判決において、次のように述べた。まず、特許出願権帰属の判断は、発明者又は創作者が特許請求の範囲に記載された技術的特徴に対して実質的な貢献をしたかどうかに基づいて行われる。係争製品と係争特許の成分を逐一対比した結果、両者のコア成分はいずれもマーガオ(すなわち山鶏椒)、クローブ、白檀およびミントであり(係争特許では、係争製品の花椒とミントを、それぞれ同属異種のプリックリーアッシュとペパーミントに置き換えている)、各成分の配合比率は完全には一致しないものの、係争特許で特定された配合比率の範囲内にあることが判明した。したがって、原告は係争特許に対して実質的な貢献をしたと判断した。
しかしながら、IPCCは、係争特許が初審段階において、有効性試験などのデータが不足していたため、智慧局から進歩性欠如を理由に拒絶された。その後、被告会社は再審査の請求時に、「ヒト有効性評価試験報告書」(以下「SGS試験報告」という)を提出し、出願時に欠けていた進歩性の要件を補完した結果、最終的に特許査定を受けたことを指摘した。同裁判所は、上記SGS試験報告はヒト試験に属し、試験デザイン、実験手順および有効性試験評価といった実質的な着想を含むものであって、単なる事務的または補助的な作業ではなく、係争特許の不可欠な部分であると判断した。したがって、「被告会社は原告が提供した資料に基づいて他社に試験報告書の作成を委託しただけで、これは完成済みの発明に対する貢献であって実質的な貢献ではない」という原告の主張は、採用できないものとした。
最終的に、IPCCは、原告は係争特許の主要成分およびその一部の配合比率に関する技術に対して一部実質的な貢献をしており、係争特許の共同発明者であると認められる一方で、係争特許の出願に必要とされるヒト有効性試験データについては実質的な貢献をしていないと判断した。そのため、係争特許の出願権は当事者双方の共有に属するとの判決を下した。
以上を踏まえ、IPCCは、最初に着想した者は確かに実質的な貢献をしているものの、発明の完成度が他方による補足試験や重要な裏付けデータに依存している場合には、双方が共同で特許出願権を有すべきであると判断した。