ニューズレター
代理関係終了後、国内外の商標権者が異なる場合における商標権の消尽原則の適用についての考察
一、商標権の消尽原則に関する規定
商標法第36条第2項は「登録商標を付した商品が、商標権者またはその同意を得た者により国内外の市場において取引流通された場合、商標権者は当該商品について商標権を主張することができない。ただし、商品が市場に流通した後、商品の変質・毀損の発生、若しくは他人による無断加工・改造を防止するため、またはその他の正当な事由がある場合は、この限りでない。」と規定している。台湾の商標法は国際消尽原則を採用しており、商標権者は、その同意を得て市場に流通した商品について、初めて市場に流入した場所が国内か国外かを問わず、もはや商標権を主張することはできず、真正品の並行輸入の正当性を認めている。
最高裁判所108年(西暦2019年)度台上字第397号民事判決の趣旨は次のとおり指摘している。商標権者が同一の図案を用いて自らまたは他人に許諾して異なる国で商標登録をした場合、属地主義の概念においてはそれぞれ別個の商標権ではあるものの、その図案は同じであり、本質的に排他権の発生も同一の権利者に由来するため、異なる国の商標権者であっても、相互に許諾関係、または法律上の関係を有する限り、許諾を得て商標登録を受けた商標権者に対しても消尽の効果が生じる。
知的財産および商業裁判所(以下「IPCC」という)113年(西暦2024年)度民商訴字第48号民事判決(判決日:2025年10月28日)は、台湾企業が外国企業の同意を得て台湾で商標登録をした場合、たとえ双方の代理関係が終了ししていたとしても、その外国企業が製造した商品が台湾市場に輸入され第三者によって販売される状況について、商標権の消尽原則が適用されるとした。
二、事案の概要
本件の原告会社は、被告が同意や許諾なしに、Shopee(ショッピー、東南アジア・台湾最大級のECプラットフォーム)ストアおよびFacebookグループの名称、ページ上で原告の登録商標(以下「係争商標」という)を使用し、係争商標を付した商品を販売したことは商標権侵害に該当するおそれがあるとして、本件訴訟を提起した。
三、判決の概要
1.被告がShopeeストアおよびFacebookグループで係争商標を使用した行為は指示的フェアユースに該当する。被告が係争商標を付した商品を販売した行為は商標の使用に該当する
(1)IPCCは、商標の使用に該当するかどうかを判断するにあたり、その平面画像、デジタル映像音声や電子メディア上のレイアウトにおける前後配置、フォントやスタイル、文字の大きさ、色およびデザインに「特別な顕著性」があるかどうかを総合的に考慮し、その使用の性質が消費者に対してその表彰する商品・役務の出所を識別させるのに十分であるかどうか、 また使用目的が他人の営業上の信用や名声を示唆したりただ乗り(フリーライド)する意図を有するかどうか等の関連証拠を総合的に判断すべきであると指摘した。さらに、商標がウェブサイトや看板、ウェブページの検索結果や広告内容に表示されているからといって、直ちに商標の使用に該当するわけではない。他人の商標を、自己の商品・役務の名称、形状、品質、性質、特性、産地などを説明するためにのみ使用し、商品・役務の出所を示すために使用していない場合には、商標の使用には該当しない。
(2)被告はShopeeストアおよびFacebookグループの名称、商品名、ページ上で係争商標を使用していたものの、関連する内容には明確に「チェコ」等の文字が表示され、係争商標の文字を特に大きく表示しておらず、被告がチェコ、ポーランドまたは欧州の購入代行を営んでいることを強調している。このような使用はあくまで他人の商品内容や出所を示すためのものであり、商標の使用には該当しない。
(3)被告による係争商標を付した商品の販売は、商標の使用に該当する。
2.被告によるチェコA社からの係争商品の輸入販売は、商標法第36条第2項前段の商標権の消尽原則が適用される
(1)チェコA社は当初、係争商標を商品に使用しており、その前任のアジア総代理店であるB社が台湾で係争商標を登録することに同意した。B社はその後、C社を台湾総代理店としてライセンス付与した。さらに、B社は係争商標を原告会社に移転し、B社とC社の双方は台湾での代理権を原告会社に譲渡することに合意した。原告会社もチェコA社から商品を仕入れていた。これに基づぎ、IPCCは原告会社とチェコA社との間には経済的または法的な代理関係が存在すると判断した。
(2)原告会社は、チェコA社との代理関係は終了しており、自社の信用や名声も確立していると主張したが、IPCCは、係争商標はチェコA社に起因して台湾で登録されるに至ったものであり、代理関係の終了をもってチェコA社の正規品が並行輸入ルートで流通することを否定すべきではないと判断した。特に、原告会社は依然として係争商標の商標権者でありながら、その代理権を自社と同じ法定代表者を有するD社に譲渡し、D社が引き続き正規品を輸入していた。このことは、代理権と商標権を意図的に分割し、他の並行輸入を排除して市場を独占しようとするものであり、明らかに不当である。さらに、消費者が係争商標の出所を依然としてチェコA社であると認識していることから、これをもって被告の行為に商標権の消尽原則が適用されるとは否定できない。
(3)被告が販売した係争商標商品は確かにチェコA社に由来するものであり、原告会社とチェコA社との間には経済的または法的な代理関係が存在していた。国内外の商標権がそれぞれ異なる者に帰属しているとはいえ、実質的には同一の権利者に由来するものである。したがって、商標法第36条第2項に基づき、原告会社は係争商品について商標権を主張することはできず、IPCCは原告の訴えを棄却した。
本件は現在、IPCCで控訴審の段階にあり、裁判所の判断や訴訟の進展は注目に値する。