ホーム >> ニュース、出版物など >> ニューズレター

ニューズレター

搜尋

  • 年度搜尋:
  • 專業領域:
  • 時間區間:
    ~
  • 關鍵字:

著作権集中管理団体から利用許諾を取得しても生じる著作権侵害リスク ― カラオケ機器事件を例として



 一、台湾における著作権集中管理団体制度

 

著作権集中管理団体条例第3条によれば、著作権集中管理団体Collective Management Organisations、以下「CMO」というは著作財産権者によって構成され、同条例に基づ許可を得て設立され、以下の業務を担当する。(1) 多数の著作財産権者の著作財産権を管理すること、(2) 統一的な使用料率および使用料の分配方法を定めること、(3) 管理者の名義で利用者と利用許諾契約を締結する等の集中管理業務。

 

注目すべき点は、現行の台湾のCMOが許諾できる著作権の種類は「公開送信権、公開上映権、公開放送権、公開実演権」に限られていることである。したがって、「複製、公開口述、翻案、頒布、公開展示、発行、公開発表」等は、現行の台湾のCMOが許諾できる種類には含まれず、また、「異なる著作物」に対する許諾範囲も異なることに留意する必要がある。著作物の利用者が許諾範囲を超えて利用した場合、著作権侵害の紛争に発展するおそれがある。

 

知的財産および商業裁判所(以下「IPCC」という)113年(西暦2024年)度民著訴字第74号民事判決(判決日:2025916日)において、IPCCは、被告会社によるカラオケ機器の運営が、原告会社の「視聴覚著作物」の「複製権」および「公開送信権」を侵害したと判断した。また、被告のカラオケ機器製造業者が中国オーディオ・ビデオ著作権集中管理協会(CAVCA)から利用許諾を取得しいること、台湾の社団法人中華音楽著作権協会(MÜST)から音楽著作物の利用許諾を取得していること等の抗弁については、著作権侵害責任を免れる根拠とはならないと判断した。

 

二、事案の概要

 

本件の係争カラオケ機器はA社が製造し、B社が台湾に輸入したものである。被告会社はB社から当該カラオケ機器をリースし、営業場所に設置して消費者に視聴覚著作物のリクエストを提供していた。原告会社は、自分が係争視聴覚著作物の独占的被許諾者(ライセンシー)であると主張し、被告会社の行為を知ったため、被告会社に対し原告から許諾を得るべき旨の内容証明郵便を送付した。しかし、被告会社は依然として協力を拒否し、係争カラオケ機器の使用を継続した。そのため、原告会社は、著作権法第88条第1項および第84条後段等に基づき、被告会社が原告の「複製権」、「公開送信権」、「公開上映権」を侵害したとして、損害賠償を求める本件訴訟を提起した。

 

三、判決の概要

 

(一)原告会社は係争視聴著作物の独占的被許諾者である

 

原告会社は、自社が係争視聴覚著作物の独占的被許諾者であることを証明する以下の証拠を提出し、IPCCはこれを採用した。

 

1.複数のレコード会社が発行した「独占的被許諾者証明書」。そこには、許諾地域が「中華民国地域(台湾・澎湖・金門・馬祖)」、許諾された著作権の種類が「複製権、公開上映権、公開送信権」、許諾期間が20251231日までと明記されている。

2.視聴覚著作物のリリース画面、アルバムカバー、YouTube公式チャンネルのスクリーンショット。そこには、レコード会社名、英語略称または商標が表示されている。

3.レコード会社が提出した声明書。声明書では、他のレコード会社がかつて視聴覚著作物の配信を同社に委託していたが、現在は当該レコード会社が自ら配信を行っていると述べている。

 

被告会社は、A社が係争視聴覚著作物について、中国オーディオ・ビデオ著作権集中管理協会から許諾を取得しており、被告会社も社団法人中華音楽著作権協会(MÜST)から音楽著作物の許諾を取得済であると抗弁した。しかし、IPCCは、前者の許諾範囲は中国本土に限定され、台湾・澎湖・金門・馬祖地域を含まず、後者は「音楽著作物」のみを許諾し「視聴覚著作物」は含まれていないと判断した。

 

(二)被告会社は客観的に原告会社の係争視聴覚著作物の複製権および公開送信権を侵害したが、公開上映権の侵害に関する事実や証拠はない

 

1.複製権と公開送信権

 

係争カラオケ機器は、ネットワークを介してA社のクラウドミュージックライブラリサーバーに接続し、係争視聴覚著作物をカラオケ機器に「ダウンロード」できるものである。これは単なる「一時的複製」ではないため、複製権の侵害に該当する。

 

係争カラオケ機器とA社のクラウドミュージックライブラリサーバーは、有線・無線ネットワークその他の通信手段を通じて、利用者が各自で選択した時間や場所に応じて、音声や映像を利用者に提供・伝達し、公衆が上記の方法で視聴覚著作物のコンテンツを受信できる状態にしているため、公開送信権の侵害にも該当する。

 

留意すべき点として、IPCCは、原告会社が証拠収集のためにと調査員を派遣し、係争カラオケ機器から視聴覚著作物をダウンロードした行為は、原告会社の同意のもとで行われたものであるため、著作権侵害の証拠とはならないと指摘した。

 

2.  公開上映権

 

原告会社の証拠収集調査員が証拠収集の目的で当該営業場所にて係争カラオケ機器を操作し楽曲をリクエストした行為は、不特定多数または特定多数の者に楽曲のコンテンツを伝達したものではないため、公開上映行為には該当しない。また、原告会社は、自社の証拠収集調査員以外の者が係争視聴覚著作物を公開上映したことを立証するその他の証拠を提出できなかったため、公開上映権の侵害には該当しないと判断された。

 

(三)被告会社は原告会社の係争視聴覚著作物の複製権、公開送信権を意図的に(主観的故意)侵害した

 

被告会社は、原告会社からの内容証明郵便を受領しており、同郵便には、A社が係争視聴覚著作物について取得した許諾範囲は中国本土に限定され、台湾・澎湖・金門・馬祖地域は含まないことが明記されていた。また、原告会社が台湾・澎湖・金門・馬祖地域におけるカラオケ機器の独占代理店であることも指摘されていた。加えて、被告会社も係争カラオケ機器の動作原理を認識していたことから、被告らが主観的に故意に調査を怠り不作為を行ったことは、依然として「明らかに知りながら」故意に行った行為に該当する。

 

(四)原告会社は、被告らに対し100万台湾元の損害賠償額を連帯して支払うよう請求でき、また被告会社に対して、係争視聴覚著作物の独占的許諾期間中、中華民国地域(台湾・澎湖・金門・馬祖)で係争視聴覚著作物を公に上映しないよう請求できる

 

原告会社が係争著作物について個別曲許諾ではなく、包括許諾(総曲数一括許諾)方式を採用していたため、IPCCは原告会社が実際の損害額を立証することが困難であると判断した。したがって、著作権法第88条第3項に基づき、被告会社が原告会社からの内容証明郵便受領後も係争カラオケ機器を約1年間使用し続けた事情等を考慮し、損害額を100万台湾元と算定した。

 

さらに、係争カラオケ機器がA社のクラウドミュージックライブラリに接続している場合、当該係争視聴覚著作物は消費者が随時リクエスト可能な状態にあり、原告会社の公開上映権は常に侵害される高いリスクに晒されている。よって、IPCCは、原告会社が著作権法第84条後段に基づき、被告に対し、係争視聴覚著作物の独占的許諾期間中、台湾・澎湖・金門・馬祖地域において係争視聴覚著作物を公に上映しないよう請求することを認めた。

 

四、CMOから利用許諾を取得する際の留意事項

 

著作権集中管理団体条例第10条第1項、第2項は、「本条例に基づき、CMOとして組織され、許可を得て設立されていない者は、集中管理業務を執行したり、CMOの名義でその他の法律行為を行ったりしてはならない。」、「前項の規定に違反した場合、その締結した個別許諾契約または包括許諾契約は無効とする。これにより他人に損害を与えた場合は、行為者は賠償責任を負う。行為者が2人以上いる場合は、連帯して責任を負う」と規定している。これに基づき、著作権は属地主義を採用しているため、台湾の主務官庁の許可を得て設立されたCMOでない者が集中管理業務を執行した場合、その者が台湾において行った著作権許諾行為は無効となる。

 

上記の事例から分かるように、CMOから利用許諾を取得した場合でも、著作権侵害のリスクは依然として存在する。ここで、留意すべき事項を以下のようにまとめた。

 

1.許諾対象となる「著作物の種類」(例えば、音楽著作物、録音著作物、ミュージックビデオ(音楽MV)視聴覚著作物);

2.許諾対象となる「著作権の種類」(例えば、公開送信権、公開上映権、公開放送権、公開実演権);

3.許諾の「地域範囲」;

4.  利用許諾を行うCMOが、台湾の主務官庁の許可を得て設立され、集中管理業務を執行できるか否か。

 

五、結論

 

以上をまとめると、CMOから利用許諾を取得したとしても、著作権侵害のリスクが完全に排除されるわけではない。本稿では、著作権の利用者は、法的リスクを回避するために、許諾範囲および許諾を行う組織が台湾で許可を得て設立されたCMOであるかどうかに特に留意すべきである。

 

本件は現在、IPCCの第二審で審理中であり、今後の展開が注目される。

回上一頁