ニューズレター
原作の利用許諾後の二次的著作物の利用
最高裁判所113年(西暦2024年)度台上字第1449号民事判決によれば、著作権者が、自己のコンピュータプログラム著作物(著作物A)の複製権を他人に独占的に許諾した後、自己が著作物Aを翻案した二次的著作物(著作物B)を第三者に複製・販売のために提供した場合は、当該独占的利用許諾の被許諾者(以下「独占的利用権者」)の権利を侵害するおそれがある。
そこで、最高裁は、原審たる知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」)の112年(西暦2023年)度民著上更二字第3号民事判決を破棄した。IPCCの判決は以下のような見解を示している。著作物Bは著作物Aの二次的著作物であり、両者は同一のソフトウエアでなく実質的に類似するソフトウエアでもない。また、著作権者と独占的利用権者は、独占的利用許諾の範囲は著作物Aの複製権に限定され、翻案権を含まないことに合意したため、独占的利用権者は当然、著作権者の著作物Aの翻案を禁止する権利を有していない。さらに、当事者双方は、著作物Aと同一でない、又は実質的に類似していないソフトウエアに独占的利用許諾の範囲を拡張する約束もなかった。したがって、著作権者は著作物Bを第三者に販売のために提供したことは、利用許諾契約に違反したことにはならない。
しかし、最高裁は以下のような見解を示した。
1.翻案とは、原作(原著作物)をもとに「別の著作物を創作する」ことであり、原作に新たな精神的な創作を加えることが必要である。したがって、原作を著作権法上にいう「二次的著作物」に翻案する場合、原作の要素や特徴を保持することに加え、新たに加えられた創作は原作と区別できるものでなければならず、翻案によって創作された二次的著作物は、「別個の創作」部分についてのみ二次的著作物の著作権を有し、その権利は原作の創作部分には及ばない(原作の著作権は影響を受けない)。
2.二次的著作物の著作権者が自ら翻案した二次的著作物を利用する場合、原作の要素や特徴に関わることは避けられない。原作の著作財産権者の同意や許諾を得ずに利用した場合は、やはり原作の著作権侵害に該当する。
3.本件の著作権者は、その著作物を二次的著作物に翻案する権利を専有するにもかかわらず、著作物Aの複製権の独占的利用権者の同意や許諾を得ずに、著作物B(二次的著作物)を第三者に複製・販売のために提供した場合、独占的利用権者の権利侵害がないといえるのかについてはさらなる議論の余地がある。原判決は、著作権者が独占的利用権者に対し、著作物Aを独占的に複製する権利のみを許諾し、翻案権までは許諾していないという事実のみを根拠として、著作権者が第三者に著作物Bの複製・販売を許諾したことは、利用許諾契約に違反しないと判断し、さらに、独占的利用権者に不利な判決を下したことについても、議論の余地がある。