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医薬品の外観デザインが公平取引法に基づく保護の対象であるか否かに関する知的財産裁判所のさらなる解釈



 商品又は役務の「表徴」(trade dress)の保護について、公平取引法(日本の「不正競争防止法」及び「独占禁止法」に相当。以下、「公平法」という)第22条第1項第1号には、「事業者がその営業において提供する商品又は役務について、次に掲げる行為をしてはならない。一、他人の著名な氏名、商号若しくは会社名称、商標、商品容器、包装、外観又はその他の他人の商品を示す表徴をもって、同一又は類似の商品において同一又は類似の使用をすることにより、他人の商品と混同を生じさせること、又は、当該表徴を使用している商品を販売、運送、輸出又は輸入すること。」と規定されている。医薬品の外観デザインについて、商品又は役務の「表徴」にあたり、上記規定が適用されるのかについて、知的財産裁判所は具体的個別案件においてしばしば判決で否定的見解を示している。
 
 本件原告は、長年にわたってそのカプセル剤に白地にオレンジ色の文字の外観デザインを使用しており、ほとんどの医療機関は白地にオレンジ色の文字の外観デザインで当該医薬品を紹介しているため、その外観デザインは顕著性、独特性及び識別性を備えており、著名な表徴であり、それにもかかわらず、被告はその医薬品に白地にオレンジ色の文字の外観デザインを使用し、それは既に公平法第22条第1項第1号の規定に違反した、と主張している。
 
 これに対して知的財産裁判所は、201982日付けで下した第一審判決(事件番号:107年度民専訴字第72号)において、本件に係る医薬品はいずれも処方薬(医療用医薬品)であり、また処方薬の取引特性に基づいて、医師、薬剤師及び患者の医薬品の選択・購入という視点から、処方薬の外観デザインは医薬品を識別する根拠ではないことをそれぞれ説明したうえで、混同を引き起こすおそれはないという結論に達した。
 
1.        医師は、上記医薬品の成分と適応症、薬理特性、投薬方法、禁忌、注意事項及び副作用などの情報を参酌した上で、処方を行うこと。
2.        薬剤師は医薬品の外観ではなく、医師の処方に従って薬剤を調剤すること。
3.        患者は市場での自由な取引を通じて処方薬を入手することができないため、処方薬の外観デザインは患者が医薬品を選択又は購入するための取引情報ではない。
 
 本件は被告により控訴されたが、知的財産裁判所は202064日付けで下した108年度民専上字第38号民事二審判決で、原審の見解を維持した。二審判決は、購入者(医師、薬剤師及び患者)の視点から、処方薬の外観デザインはその識別根拠ではないと判断するという一審判決の見解を踏襲しているほか、さらに原告が主張する「白地にオレンジ色の文字」のカプセル剤の外観デザインそのものが原告が独自に創作したものではなく、顕著性、独特性及び識別性に欠けているため、公平法第221項第1号の規定は適用されない旨判示している。
 

 上記事件に係る医薬品は、医師の処方箋でしか得られない「処方薬」であり、医師の処方箋を必要としない医薬品である場合、その法律の適用に違いがあるかについては、今後の事例を通じた研究が待たれるところである。

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