ニューズレター
裁判所が審理計画を変更した場合、その判決が破棄される可能性がある
知的財産裁判所は、常に訴訟審理の効率化を重視しており、多くの裁判官は、第一回期日に、争点整理のほか、初歩的な審理計画の策定も行う。これにより、各争点の審理順序を確認し、また、当事者とともに書面交換や訴訟期日のスケジュールを決定する。上記内容は調書に記載されるべきである。審理計画策定後、その計画に沿って取調べや弁論手続きを進めていくことになる。また、訴訟の過程で、裁判所は、攻防、訴訟の進行状況に応じて、適時当事者の意見を聴取して審理計画を調整することもある。これは、裁判所設立当初からウェブサイトに掲載されている「民事訴訟事件審理モード」(http://ipc.judicial.gov.tw/ipr_internet/index.php?option=com_content&view=article&id=26:2011-01-27-06-22-22&catid=52:2011-01-04-01-50-21&Itemid=100038)と「行政訴訟事件審理モード」(http://ipc.judicial.gov.tw/ipr_internet/index.php?option=com_content&view=article&id=25:2011-01-28-02-49-57&catid=52:2011-01-04-01-50-21&Itemid=100038)のいずれにおいても、「審理計画の策定」を訴訟プロセスの重要なステップとして位置付けることから明らかである。
しかし、現行の知的財産訴訟の関連法律では、「審理計画」に言及しているのは、知的財産案件審理規則(中国語「智慧財産案件審理細則」)第30条2項のみであり(その条文内容:「民事訴訟について、すでに本法第17条第1項の規定により知的財産主務官庁に訴訟参加を命じるときは、その期日の指定について、当該官庁の意見を参酌し、必要があるときは、当事者双方、参加人の意見を聴取した上、審理計画を立てる。」)、その母法には規定がない。また、審理計画の実施・遂行、審理計画の変更が違法判決につながるかどうかは、過去の実務ではあまり議論されていない。これに対して最高裁判所は、2020年3月11日に下した108年(2019年)度台上字第1238号判決において以下の見解を示した。「当事者が訴訟関係の事実と法律について適切かつ完全に弁論できるよう、その手続上の権益を保護するために、裁判所は訴訟を指揮する際には、一方の当事者が他方の当事者に不意打ちに攻撃されるのを防ぐだけでなく、訴訟手続の進行に誤解が生じないように当事者に裁判所の審理計画を十分に予測できるようにする必要もある。さもなければ、釈明義務の違反となる。」これに基づいて、最高裁判所は、原判決には違法があるとして、原判決を破棄し知的財産裁判所に差戻した。
本件では、原審は準備手続終結前に当事者双方の意見を求めたことがあるが、原告は損害賠償の調査を請求した。これに対して受命裁判官は、被告が権利を侵害していないか、又はその特許権の行使が不当ではないと判断した場合、終局判決が下されるが、さもなければ中間判決が下され、損害賠償請求の調査が行われると示した。しかし、その後、裁判所は直ちに準備手続を終結し、口頭弁論を行った。最終的に、控訴人が特許権を不当に行使し、被控訴人の権利を侵害したとして、控訴人に不利な終局判決を下した。これにより、最高裁は、原審の審理手続は「受命裁判官が策定した審理計画に反しており、その結果、控訴人は損害賠償の部分について十分に防御することができなかったため、その訴訟手続の進行には瑕疵があることが明らかである」として、原判決を破棄し、原審に差戻した。
このことから、現行の知的財産関連法令においては、「審理計画」の効力と違反の効果について明文の規定がないが、最高裁はすでに上記判決においてその重要性を示していることが分かる。よって、裁判所が策定された審理計画を変更しようとするにもかかわらず、適時に当事者に通知せず、意見陳述の機会を与えなかったことにより、当事者の手続き上の「意見を聞かれる権利」(the right to be heard)、ひいては実体上の答弁の権利にも影響を与えた場合、釈明義務の違反となる可能性がある。