ニューズレター
台湾専利審査基準「二重出願」関連規定の改訂
2013年6月13日に施行された改正「専利法」(※日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)は、2013年1月1日に施行された専利法第32条の、同一人が「同一の創作」について同日にそれぞれ特許出願及び実用新案登録出願をすること(以下、「二重出願」)を認める規定を改正し、改正前の「権利の択一」制度から「権利の接続」制度に改めた。関連する専利審査基準の改訂は既に完了し、経済部智慧財産局(※台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)により2014年1月16日に公布され、当該改正審査基準は2014年1月1日に遡って発効した。
今回の改訂ポイントは、以下のとおり。
一、「権利の択一」と「権利の接続」の適用の違い
今回の改訂で指摘されている「権利の択一」と「権利の接続」の適用の違いには、以下のものが含まれる。
1. 出願日により「権利の択一」又は「権利の接続」のいずれを適用するかを決定
出願日が2013年6月13日より前(2013年1月1日から2013年6月12日まで)の「二重出願」には、改正前の専利法第32条の「権利の択一」制度を適用する。出願日が2013年6月13日以降の「二重出願」には、改正後の専利法第32条の「権利の接続」制度を適用する。
2. 「二重出願」出願時の声明要件の違い
改正前の「権利の択一」制度を適用する場合、台湾で専利を出願する際に発明特許と実用新案登録を(1)同日に出願し、(2)出願人が完全に同一人でありさえすれば、同一の発明特許又は実用新案登録を出願している旨声明する必要はない。
改正後の「権利の接続」制度を適用する場合、専利出願時に発明特許と実用新案登録を(1)同日に出願し、(2)出願人は完全に同一人である必要があり、かつ(3)出願時にそれぞれ声明しなければならない(たとえば、願書に「私、出願人は、同一の創作につき、本発明特許出願と同日に、別途、実用新案登録を出願していることを声明する」及び「私、出願人は、同一の創作につき、本実用新案登録出願と同日に、別途、発明特許を出願していることを声明する」とそれぞれ記載する)。
3. 「二重出願」に合致する出願について、専利法第32条第3項の「特許査定前に、実用新案権が既に当然消滅しているとき、又は取消しが確定しているときは、特許を付与しない」とする条文の適用の違い
改正前の「権利の択一」制度を適用する場合、発明特許が特許査定を受ける前に実用新案権が既に当然消滅しているとき又は取消しが確定しているときは、特許を付与しない。
改正後の「権利の接続」制度を適用する場合、発明特許が特許査定を受け、かつ公告される前に、実用新案権が既に当然消滅しているとき又は取消しが確定しているときは、特許を付与しない。
4. 「二重出願」の「同一出願人」要件の適用の違い
改正前の「権利の択一」制度を適用する場合、その「出願人」が、(1)台湾で同日に専利を出願するとき、発明特許と実用新案登録の出願人が完全に同一人であり、かつ、(2)期間を指定していずれか一つを選択するよう通知するとき、発明特許と実用新案登録の出願人が完全に同一人でありさえすればよい。
改正後の「権利の接続」制度を適用する場合、(1)台湾で同日に専利を出願するとき、発明特許と実用新案登録の出願人が完全に同一人で、かつ、(2)期間を指定していずれか一つを選択するよう通知するときに、発明特許と実用新案登録の出願人が完全に同一人でなければならないほか、(3)特許査定されてから特許公告されるまで、発明特許と実用新案登録の出願人が完全に同一人でなければならない。
このほか、出願してから特許査定されるまでの間に譲渡する場合、特許及び実用新案は併せて譲渡しなければならない。もし、譲渡することで特許と実用新案の出願人が「完全に同じ」でなくなった場合、出願人が異なるため、期限までにいずれか一つを選択することはできず、この場合、特許出願は「先願主義」に基づいて審査しなければならない。即ち、異なる出願人は協議で発明特許又は実用新案登録のいずれか一つを選択し、かつ、指定された期間内に協議結果を報告する必要があり、その他の関連する出願が取り下げられ、その他の関連する専利が放棄又は訂正された後に、協議が成立した出願に対して専利を付与し、かつ、関連する出願は最初から存在しなかったと見做す旨公告する。もし協議が成立しなかった、又は指定された期間が満了しても協議結果を報告せずに協議が成立しなかったと見做された場合、すべての審査中の関連する出願を拒絶し、なおかつ関連する専利は最初から存在しなかったと見做す旨公告する(「5.6.2.2 出願人が異なり、かつ一方の出願案件が既に公告されている」を参照)。
5. 「二重出願」に係る出願案件について、「期間を指定していずれか一つを選択するよう通知」した後、発明特許を選択した場合、その実用新案権の消滅に係る法律効果の違い
改正前の「権利の択一」制度を適用する場合、発明特許を選択すると、その実用新案権は最初から存在しなかったものと見做される。
改正後の「権利の接続」制度を適用する場合、発明特許を選択すると、その実用新案権は特許権が公告された日から消滅する。
二、「権利の接続」制度について、審査基準には、特許査定前に「期間を指定していずれか一つを選択するよう」要求する際の「同一の創作」を認定する基準が明確に規定されている
「同一の創作」に係る審査原則、判断基準、及び、出願日が同じである創作が、同一であるか否かを認定する方法は、「5.3先願主義の審査原則」、「5.4先願主義の判断基準」及び「5.5同日出願の発明が同一であるか否かを認定する方法」などの章を準用する。したがって、各請求項ごとに記載された発明を対象として、請求項ごとに審査意見を作成しなければならない。
三、「権利の接続」制度について、原願が提出する特許分割出願一件についてのみ原願の「二重出願」の声明を援用することを認める旨明確に規定
改正後の審査基準には、「特許と実用新案登録が既に出願時にそれぞれ声明し、その後、同一の創作について特許出願を分割した場合、該特許分割出願は原願の声明を援用することができるが、特許分割出願一件のみでの援用に限る。これにより同一の創作について台湾で同日にそれぞれ特許と実用新案を出願するものは権利の接続を付与できるという立法主旨に符合するものとなる」と記されている。
四、「権利の接続」制度について、「期間を指定していずれか一つを選択するよう」通知する際、もしその他の特許を付与しない事由がある場合、できる限り審査意見書にまとめて列記すべきである、と明確に規定。
五、「権利の接続」制度について、「期間を指定していずれか一つを選択するよう」通知した後、出願人の応答、補正に対する審査につき、以下のように明確に規定。
1. もし出願人が補正、応答に際して、特許出願を選択し、かつ「その他の特許を付与しない事由」を克服した場合には、特許を付与すべきである。
2. もし、出願人が補正、応答に際して「いずれか一つを選択する」選択を行わなかったが、その他の特許を付与しない事由を克服した場合、「いずれか一つを選択するよう」再度通知すべきである。
3. もし、出願人が補正、応答に際して「その他の特許を付与しない事由」を克服しなかった場合、「いずれか一つを選択する」選択を行ったか否かを問わず、当該特許出願は拒絶査定すべきである。
4. 智慧財産局が「期間を指定していずれか一つを選択するよう」通知した後、もし、出願人が特許出願を選択したものの、当該特許出願に依然として当該局が先に列記した「その他の特許を付与しない事由」があれば、当該特許出願は拒絶査定される。