ニューズレター
市場調査報告の、商標の混同誤認認定への影響
登録を出願する商標が、同一・類似の商品・役務における他人の登録商標若しくは先に出願された商標と同一・類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの、又は、他人の著名な商標・標章と同一・類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあり、若しくは著名商標・標章の識別性若しくは信用・名声に損害を生じさせるおそれがあるものは、いずれも登録を受けることができない。このことは、商標法第30条第1項第10号及び第11号に明文で規定されている。 |
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「混同誤認のおそれ」をどのように認定すべきかは、智慧財産局(※台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)が公告した「混同誤認のおそれ」審査基準によれば、二商標の間に混同誤認のおそれがあるか否かを判断する場合、「商標識別力の強弱」、「商標の類否並びにその類似程度」、「商品又は役務の類否とその類似程度」、「先権利者の多角化経営の状況」、「実際に混同誤認する事情」、「関係消費者の各商標に対する熟知度」、「係争商標の出願人が善意であるか否か」、「その他の混同誤認する要素」等の8つの要素を参酌しなければならない。 |
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そのうち「実際に混同誤認する事情」についての審査は、「混同誤認のおそれ」審査基準によれば、当事者が市場調査報告を証拠として提出することができる。もし、法に照らして答弁・攻防手続を行った後、公信力を有すると認められた場合、当該調査結果報告をもって「実際に混同誤認が存在する」と認めることができる。したがって、商標紛争事件の審理において市場調査はしばしば、混同誤認が既に生じている又は混同誤認のおそれがないことの証拠として提出される。 |
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最高行政裁判所の2004年の93年度判字第143号判決は商標異議申立事件について、「市場調査報告は証拠能力を有し、かつ、瑕疵がないものでなければならず、そのうえではじめて証拠として採用することができる」と指摘している。市場調査報告のサンプリングの地区又は対象が不正確であれば、瑕疵を有することになり、証拠として採用することはできない。 |
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智慧財産法院(※日本の知的財産高等裁判所に相当)の2012年の101年度行商訴字第66号行政判決は別の商標異議申立事件について、「市場調査方式は『異なる時及び異なる場所で隔離的に観察する原則』に合致しなければならない。市場調査時、係争の2つの商標を同時に消費者に提供して比較させることは、この原則に反しており、採用することができない」とさらに具体的に指摘している。 |
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したがって、「混同誤認のおそれ」審査基準の規範又は現在の裁判所の実務によれば、市場調査報告は商標混同認定について確かに相当な影響を生じ得るものの、どのようにして有効かつ瑕疵のない市場調査報告を証拠として提出するのか、これは決して容易なことではない。 |