ニューズレター
著作権法改正案が立法院で可決
2003年6月6日に著作権法改正草案が立法院で可決され、該改正著作権法は2003年7月9日に総統により公布された。著作権法の今回の改正は主に、1996年12月の世界知的所有権機関(WIPO)の「著作権条約(WCT)」及び「実演・レコード条約(WPPT)」の2項の公約を参考に、デジタル技術の発展及びインターネットの普及に伴い新たに生じてきた、著作権保護及び公衆の利益に関する各種問題解決に向け、適当な調整を行うものである。また、今回の改正では、著作権侵害行為に係る罰則も適宜調整された。改正39条、追加14条、計53条に及ぶ今回の法改正の要点は次の通りである。
1. 「一時的複製」も「複製」の概念に属することを明文化するとともに、「複製権」の排除規定を新たに設け、「一時的複製」がインターネットによる閲覧又は著作の合法的な利用において技術上必要な場合には、著作権者の同意を得なくてもよいとした。
2. 著作権者に「公衆伝送権」を新たに認め、今後、他人の著作物をインターネットで流通させようとする場合、著作権者の同意を得なければならない。
3. コピー品の頒布に対し著作権者は、今回の法改正で追加された「頒布権」に基づき、該行為の停止を要求することができるようになる。但し、改正法には、合法的に入手した著作物の原本又は複製物の再譲渡は自由とする、即ち、著作権者の許可を必要としない旨の規定も設けられている。
4. 録音著作物の録音製作者、及びその録音対象となった実演の実演者に使用報酬請求権が与えられ、今後、デパート、ショッピングモール、航空機機内又はレストランなど公の場で録音著作物を使用する場合、該録音著作物の録音製作者及び実演者は、該録音著作物使用者に対し、使用報酬を請求することができる。
5. 権利管理情報を保護する規定が新たに設けられ、著作権者が著作物に付した電子権利管理情報を無断かつ任意に削除又は改ざんする者は、一年以下の懲役又はNT$250,000以下の罰金に処される。
6. インターネット上での公正な利用態様の明文化など、著作物の公正な利用に関する規定が改正された。また、著作物の各種公正な利用範囲について、著作権者団体と利用者団体とが協議によりこれを定めることができるよう改正し、公正な利用範囲が不明確なために著作権紛争が起こることを回避する。
7. 著作権に関する紛争に対し調停が成立し、かつその内容が裁判所に認められたときは、民事上の確定判決と同一の効力を有し、当事者は同一の事件に対し、再度、起訴、告訴又は自訴することができない旨の規定が新たに設けられた。これにより、著作権紛争は訴訟でなく、専門家により構成される著作権審議及び調停委員会で解決することが期待される。
8. 使用報酬について著作権仲介団体と利用者との間に紛争があり、協議を経ても調停が成立しない場合、法により仲裁に付されなければならない。
9. コピー版のコンピュータプログラム著作物であることを明らかに知りながら、これを営業目的で使用する行為は著作権侵害と見なされ、これらの行為に対し民事・刑事責任を負うことが明確に規定された。但し、当該責任はあくまで営業目的で使用する場合に限られ、非営業目的の使用については規制されていない。
10.著作権侵害に係る民事責任に関する規定を改正し、一般的な著作権侵害案件の法定民事賠償額の上限をこれまでのNT$1,000,000からNT$5,000,000に引き上げた。
11.著作権侵害に係る刑事責任に関する規定を改正し、例えば、業として著作権侵害行為を反復するような、悪質かつ重大な常習犯に対する罰金の上限を、これまでのNT$450,000からNT$8,000,000に引き上げた。また、既に罰則規定がある上記常習犯以外にも、販売又は貸し出しなどの営利目的で不法に光ディスクを複製する又は不法に複製された光ディスクを販売する行為を非親告罪とし、現在、猛威を振るうコピー版光ディスクの製造及び頒布による著作権侵害行為の阻止を図っている。その他の著作権侵害行為については、依然として親告罪の原則を維持する。
12.司法警察機関は、著作権侵害者の所在を確認することができない場合、犯罪行為に使用された又は犯罪行為により取得した物品を没収する権限を有する旨の規定が追加された。
13.著作物使用料に関する規定が追加された。
台湾のWTO加盟(2002年1月1日)後、日本人の著作物も台湾著作権法による保護を受けることができるようになったが、改正前の著作権法には、これらの著作物をすでに利用し又はこれらの著作物を利用するためにすでに多額の投資を行った者を保護するため、経過措置として、かかる者については、著作権者からの許諾がなくても引き続き当該著作物を2003年12月31日まで利用することができる旨の規定が設けられていた。しかし、この経過措置規定は著作権者に対して不公平すぎる嫌いがあるため、今回の改正法では、上記条件を満たす者の経過期間における該著作物利用について、2003年7月11日から、著作権者に対し、しかるべき著作物使用料を支払わなければならない旨の規定が追加された。