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セクシャルハラスメント防止を焦点に3つの法改正案が可決される



セクシャルハラスメント防止を焦点につの法改正案が可決される 
 
昨今の台湾社会においてMeToo旋風が広がりを見せるのを受け、2023728日に立法院(日本の国会に相当)で「性別平等教育法」の改正案が可決されたのに続き、2023731日には「性別工作平等法」の改正案と「セクシャルハラスメント防止法」の改正案が可決され、いずれも816日に公布されました。
 
以下にて、改正案の概要をご紹介します。
 

一、「性別工作平等法」の主な改正点 
 
(一)権力濫用型セクシャルハラスメント」の定義の追加と性別工作平等法の適用範囲の拡大
 
1.    今回の改正では「権力濫用型セクシャルハラスメント」の定義が追加されました。「権力濫用型セクシャルハラスメント」とは、雇用、求職または職務遂行関係において自身の指揮監督下にある者に対して、権力や機会を利用してセクシャルハラスメントを行うことをいいます。
 
2.    また、被雇用者が「勤務時間外」において、同一の事業者に属する者によるセクシャルハラスメント、事業者は異なるが共同作業もしくは業務上のやり取りを行う者によるセクシャルハラスメント、または最高責任者(中国語:最高負責人。会社法8条を参照。)もしくは雇用主によるセクシャルハラスメントを受ける場合についても、性別工作平等法の規定が適用されます。
 
(二)雇用主の防止意識と責任の強化(202438日施行予定)
 
1.    苦情申立人の有無にかかわらず、雇用主は事情を知った後は問題に対処しなければならない
今回の改正で、雇用主がセクシャルハラスメントがあったことを知るに至った経緯について、「苦情申立を受けた」場合と「苦情申立を受けていない」場合とに区別し、それぞれ「有効な是正及び改善措置」に関する規定が定められました。
 
2.    権力濫用型セクシャルハラスメントの調査中に雇用主がとることのできる暫定措置
今回の改正で、苦情申立を受けた者が権力的地位にあり、かつ犯情が重大である場合、雇用主は調査期間中、当該者の職務を一時停止または調整するなどの暫定措置をとることができるようになりました。
また、調査を経てセクシャルハラスメントの犯情が深刻だと認定された場合、雇用主は予告なしに労働契約を解除することができます。
 
3.    従業員数が10人以上29人以下の事業者に対するセクシャルハラスメントの苦情申立窓口の設置義務
今回の改正以前は、従業員数が30名以上の事業者についてのみ、セクシャルハラスメント防止措置、苦情申立及び懲戒について規定することが義務付けられていました。しかし、今回の改正で、従業員数が10人以上30人未満の雇用主に対しても、セクシャルハラスメントの苦情申立対処窓口の設置と情報公開が義務付けられました。
 
4.    雇用主は苦情申立を受けた場合、同時に地方当局に通知しなければならない
雇用主は被害者から苦情申立を受けたとき、地方当局に通知しなければなりません。調査を経てセクシャルハラスメントに属する案件だと認定された場合、その対処の結果についても地方当局に通知しなければなりません。
 
(三)公権力の介入を伴う外部苦情申立窓口の設置(202438日施行予定)
今回の改正で、苦情申立を受けた者が最高責任者もしくは雇用主である場合、または雇用主による調査結果もしくは懲戒処分について不服がある場合、申立人は直接、地方官庁に対して申訴(不服申立て)を提起することができると規定されました。
 
(四)苦情申立についての特別時効の規定(202438日施行予定)
セクシャルハラスメントの行為者が最高責任者である場合、被害者は退職後1年以内であれば苦情申立をすることができます。また、被害者が未成年の時にセクシャルハラスメントを受けた場合、成年後3年以内であれば苦情申立をすることができます。
 
(五)懲罰的民事損害賠償の追加と関連する罰則規定の改正
1.    懲罰的民事損害賠償
加害者が権力を濫用した場合、裁判所は侵害の状況に応じて、損害額の1倍から3倍までの懲罰的賠償金を算定することができます。加害者が最高責任者である場合は、裁判所は損害額の3倍から5倍までの懲罰的賠償金を算定することができます。
 
2.     今回の改正で過料に関する規定は下記の通りです(202438日施行予定)。
 
事由
過料金額(新台湾ドル。以下同じ)
防止義務の不履行の場合
2万元から100万元
期限内に必要な措置を行わなかった場合
従業員30人以上の事業者が防止規定を定めていない場合
2万元から30万元
従業員10人~29人の事業者が苦情申立ルートについて規定せず、かつ、期限までに是正されない場合
1万元から10万元
最高責任者への苦情申立期間中に職務または勤務形態の調整を拒否した場合
1万元から5万元
最高責任者がセクシャルハラスメントを行ったと地方当局が認定した場合
1万元から100万元
苦情申立を受けた者が調査に協力しなかった場合
1万元から5万元
 

二、「セクシャルハラスメント防止法(中国語:性騒擾防治法)」の主な改正点
 
(一)現場責任者(中国語:場所主人)の防止義務の強化(202438日施行予定)
現場責任者が具体的にとるべき有効な是正および救済措置が追加されました。それには、被害者の安全及びプライバシーの保護に留意すること、被害者の苦情申立に協力し関連証拠を保全すること、必要があれば警察機関に通報し現場に赴いてセクシャルハラスメント事件に対処すること、及びその管理下にあるパブリックスペースの安全性について検討し改善すること等が含まれます。違反した場合、最高で20万元以下の過料が科せられる可能性があります。
 
(二)被害者の保護に関する章の追加
被害者の身分を特定するのに十分な情報を知っている又は有している者は、その秘密を厳守しなければならず、違反した場合、最高で60万元以下の過料が科せられると規定されました。
さらに、関係機関は調査過程において、被害者の心身の状態を見て、積極的に被害者の保護に関するサービスを提供または紹介しなければなりません。
また、権力濫用型セクシャルハラスメントを行った場合、1倍から3倍の懲罰的賠償金を科すことができると規定されました。
 
(三)信頼できる苦情申立調査プロセスの確立(202438日施行予定)
一般的なセクシャルハラスメント事件の苦情申立期限が、1年から2年に延長されました。権力濫用型セクシャルハラスメントについては、3年に延長されました。セクシャルハラスメント事件の発生時点で被害者が未成年だった場合は、成年に達してから3年以内に苦情を申し立てることができます。
 
(四)厳罰化による権力濫用型セクシャルハラスメントの有効な抑止
権力濫用型セクシャルハラスメントを抑止するため、他人に対して権力濫用型セクシャルハラスメントを行った者については、行政上の責任として最高で60万元以下の過料が科される可能性があると規定されました(202438日施行予定)。刑事上の責任としては、その刑を2分の1まで加重することができます。 

三、「性別平等教育法」の主な改正点
 
(一)適用範囲の拡大(202438日施行予定)
今回の改正で、士官学校(中国語:軍事学校)、予備士官学校(中国語:預備学校)、各級の警察学校及び少年矯正学校にも、性別平等教育法が適用されることになりました。
 
(二)学生保護措置の強化
今回の改正により、当事者の法定代理人が親権または監護権を行使できない、又は行使することが困難である場合、「事実上の後見人」も本人の権利・利益の主張を手助けできるとの規定が追加されました。
 
(三)調査対処体制の改善
1.    学校または所轄官庁の性別平等教育委員会が校内の性別にかかわるハラスメント・侵害・倫理違反等の事件を取り扱う際、調査チームの構成員の一部または全部を外部の人間とすることができます。ただ、セクシャルハラスメントの行為者が校長、教師、職員である場合、調査チームの構成員全員を外部の人間としなければなりません(202438日施行予定)。
 
2.    セクシャルハラスメントの行為者が現職の校長、または以前校長職に就いていた者である場合、所轄官庁が設置する性別平等教育委員会が苦情申立を受理して、調査を行うことになります。性別平等教育委員会が犯情は重大であると判断した場合は、加害者の職務を調整または停止することができます。
 
(四)当事者は懲罰的賠償金を請求できる
セクシャルハラスメントの行為者が教職員である場合、裁判所は損害額の1倍から3倍までの懲罰的賠償金を算定できます。行為者が校長である場合は、裁判所は損害額の3倍から5倍までの懲罰的賠償金を算定できます。
  
当事務所では労働プラクティス・グループを設けており、雇用における男女の平等問題やセクシャルハラスメント防止措置等の各種事項に関する相談及びサービスを提供しています。今回の性別工作平等法の改正またはその他労働法規等につきご不明な点がございましたら、いつでも当事務所の朱百強弁護士(marrosju@leeandli.com)、林莉慈弁護士(litzulin@leeandli.com)までお問い合わせ頂ければ幸いです。
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