ニューズレター
著作権法の一部条文改正案について
デジタルコンバージェンス、クラウドテクノロジーのデジタル時代における著作物の利用、フェアユース規定の見直し、権利調整などのニーズに応え、また著作権法制度を整えるために、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)は2020年1月30日に、著作権の一部条文改正案を公表した。その改正要点は以下のとおりである。
一、「公開放送」と「公開伝送」の定義の修正及び「再公開伝達権」の新設
(一) 今回の改正では、テレビ局による放送であれ、ネットワークプラットフォームでのオンラインストリーミングによる放送であれ、いずれも公開放送に該当し、インターネット技術によって区別されることがなくなる。また、公開伝送権はインタラクティブ(双方向型)送信に限定される。
(二) 著作権者の権益保護を強化するために、店等の営業場所でインターネットやスクリーン設備を介してビデオを再生する場合、権利者の同意又は許諾を得る必要があるなどの再公開伝達権が新設された。
二、著作権帰属規定の合理性の見直し
(一) 今回の改正では、契約自由の原則に合致し、雇用者と被雇用者との間の約定をより柔軟にするために、雇用者と被雇用者は契約により著作財産権の帰属を約定することができるようになる。
(二) 実務上のニーズに対応するため、出資者と招聘を受けた者との間の法的関係を修正し、、招聘を受けた者が自然人か法人かを問わず、出資者でさえあれば、約定に従い直接著作者となることができる。
三、著作財産権の制限規定の改正
(一) 教育効果を上げるために、学校における遠隔教育のためのフェアユース規定を新設した。
(二) 図書館などの収蔵機関は、一定の制限条件の下で、館内でオンラインによる閲覧サービスを読者に提供することができる旨の規定を新設した。
(三) 定期的な非営利活動については、適切な使用料が支払われば、その関連著作物を利用することができる。また、一般民衆が日常的に公園でダンスを踊るなどの心身に有益な活動(例えば、自分の機器を持参して音楽を再生する場合)については、その許諾や使用料の支払いなしに著作物を利用できる旨の規定を新設した。
四、損害賠償規定の改正
(一) 被害者の損害の立証責任の問題を解決するために、被害者は、裁判所に対して事案の状況に応じて、台湾ドル1万元以上台湾ドル100万元以下の賠償額を斟酌するよう請求することができる。
(二) 被害者は、許諾に従って受け取った使用料を損害賠償額として計算することを選択することができる旨の規定を新設した。
五、時代遅れの刑事責任規定の改正
(一) 今回の改正により、法定刑の下限が6ヶ月という規定が削除され、裁判所は個別案件の情状により酌量することができ、軽微な罪に対し重い罰が科されることを回避できるようになる。
(二) 外国から真正品を許諾なしで輸入した後に国内で販売する行為に関して、民事責任だけが問われ、刑事責任は問われない。
(三) 許諾なしで真正品を配布する行為については、民事訴訟で解決することが望ましい。