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化粧品広告の掲載・放送の事前審査に関する違憲判断



司法院大法官は今年(2017年)16日に釈字第744号大法官解釈を公布し、化粧品衛生管理条例(以下、「本条例」という)における化粧品広告の事前審査に関する規定(第24条第2項及び第30条第1項)(以下、「本規定」という)は、必要な程度を超えて化粧品会社の言論の自由を制限するものであり違憲であると宣言しました。その結果、本規定は本大法官解釈の公布日付けで失効しました。以下では、本大法官解釈の概要及び影響を説明します。

一、本大法官解釈の要旨

(一)化粧品広告は商業言論の一種であり、憲法第11条言論の自由の保障の対象となる。

本大法官解釈の理由書第2段落では、まず、言論の自由は、情報の自由流通を保障することによって、人民が十分な情報を取得し、また自己実現の機会を得させることであることが再確認された。化粧品広告は、情報を広く伝達する方法を利用して化粧品の効能を宣伝し、販売を促進することを目的とするものであり、商業的意見の表明という性質を有する。商業言論が提供する情報の内容は、虚偽不実でも誤解を招くものでもなく、適法な取引を目的とし、消費者が経済的に合理的な選択をすることに資するものであれば、憲法第11条の言論の自由の保障を受ける。

(二)化粧品広告の事前審査は言論の自由に対する重大な干渉であり、比例原則のテストを満たす場合でない限り、原則として違憲となる。

本規定は、化粧品広告について事前審査制を採用している。化粧品会社の言論の自由及び人民が十分な情報を取得する機会を制限するものであるため、言論の自由に対する重大な干渉であり、原則として違憲となる。これに関する立法事実は、干渉手段が比例原則を満たすことを示すに足るもので、かつ人民に即時の司法救済の機会を与えるものでなければならず、そうでない場合、憲法の比例原則及び言論の自由に対する保障の趣旨に違反することになる。比例原則を満たすためには、干渉手段の目的が人民の生命、身体、健康に対する直接、急迫、かつ回復しがたい危害が生じることを防ぐための特に重要な公共利益であること、そしてこれらの干渉手段がその目的達成のために直接かつ絶対的に必要であるものでなければならない。

(三)一般化粧品の広告はせいぜい消費者に一般化粧品の購入を促すという機能を有するにすぎず、生命、身体、健康に対する直接、急迫の脅威は生じないため、事前審査の採用は比例原則に反する。

本規定の立法目的は、猥褻な内容、風俗を害する内容又は虚偽・誇大な内容が広告に掲載・放送されることを防止することによって、善良な風俗、消費者の健康及びその他の関連権利・利益を維持するという公益の保護である。

しかし、化粧品は、内服または食用に供するものではなく、外用するものである。さらに一般化粧品は、髪や肌を潤わせる、嗅覚を刺激する、体臭を抑える、または容貌を美化するなど、一般的な日常生活用途に供されるにすぎない。この点は、衛生福利部食品薬物管理署が公表した「化粧品の範囲及び種類表」からも明らかである。よって、一般化粧品広告の機能は、消費者を一般化粧品の購入を促すところにあり、人民の生命、身体や健康に対し、直接・急迫な脅威を与えるものではない。

したがって、この広告事前審査制の導入目的は、特に重要な公共の利益を保護するためのものであるとは言い難い。さらに、この事前審査の仕組みによる化粧品会社の言論の自由及び消費者が十分な情報を取得する機会に対する制限は、特に重要な公共の利益のために直接かつ絶対的に必要であるとはいえない。

以上により、本規定は比例原則に違反する。

(四)薬用化粧品の広告も、生命、身体、健康に対する直接・急迫な脅威となるものではないので、事前審査の採用は同様に比例原則に違反する。さらに、本条例には健康危害予防の仕組み及び虚偽化粧品広告の禁止規定が設けられているのであるからなおさらである。

現行法では、化粧品は「薬用化粧品」及び「一般化粧品」の二種類に分類される。食薬署が公表した基準(「化粧品が医療用または劇毒物の医薬品を含む場合に関する基準」)によれば、「薬用化粧品」は、日焼け止め、髪染め、パーマ、制汗・制臭、美白、ニキビ予防、肌の保湿、抗菌や歯の美白等の用途のための化粧品を指す。人民の生命、身体、健康に対する影響は一般化粧品よりも大きいが、この種の化粧品の広告は、人民の生命、身体、健康に対する直接の脅威となるものではない。

さらに、人体の健康に対する危害の予防については、本条例は薬用化粧品について以下のような仕組みを採用している:

1.         薬用化粧品の輸入又は製造については、管轄官庁の承認を得た上で許可証の発行を受けなければ、これを行うことはできない(本条例第7条第1項及び第16条第1項参照)。

2.         薬用化粧品は、一般化粧品と同様に、そのラベル、説明書又は包装に成分、用途、用量など衛生所轄官庁が定めた事項を記載しなければならない。さらに薬用化粧品の場合は、医薬品の名称、含有量、許可証番号及び使用上の注意事項なども表示しなければならない(本条例第6条参照)。

3.         人体健康に損害を加えうる化粧品については、輸入、製造、販売の禁止、許可証の取消しなどの仕組みがある。さらに抽出検査やサンプリング調査など抜き取り検査による取締規定が設けられている。

さらに、本条例では別途虚偽不実広告の禁止規定があり(第24条第1項)、人体の健康に悪影響を与える可能性がある虚偽不実の化粧品広告は、所轄官庁は本条例に基づいて処罰できる(第30条第1項)。

以上により、薬用化粧品広告に対する事前審査は、特に重要な公共利益を保護するのが目的で、かつ目的達成のために直接かつ絶対的に必要なものであるとは認めがたい。

 

二、本大法官解釈の今後の影響

 

(一)食薬署のコメント

食薬署は本大法官解釈に対し、同解釈の公布日に以下のコメントを出した。

化粧品衛生管理条例は19721228日に公布・施行されたものである。本条例第24条の立法趣旨は、当時国民の情報取得のルートが限られ、化粧品広告内容の正確さを判断することが困難であったことを考慮し、国民の権利・利益を保護するために、同条第2項で化粧品広告は中央又は直轄市の衛生管轄機関の許可がなければ掲載・放送できないと規定したものである。しかし、わが国の社会発展及び経済成長に伴い、国民の健康意識もますます高まってきている。また現在諸外国の状況をみると、日本、韓国、アメリカ等の国家はいずれも化粧品広告に対する事前審査制を採用していない。そこで、食薬署は、諸外国における化粧品に対する規制方法を参考に、化粧品広告の事前審査制を廃止するために化粧品衛生管理条例の改正案を作成し、その結果201699日に改正案が行政院から国会の審議に提出された。もっとも、本大法官解釈の審理期間中は、この改正案は国会で審議中であった。

 

(二)医薬品広告への影響

これまで「商業的言論」及び「事前審査」を取り扱った大法官解釈は2件のみである。一つは医薬品広告の事前許可制に対し合憲の意見を示した釈字第414号解釈で、もう一つは化粧品広告の事前審査が違憲であると宣告した今回の釈字744号解釈である。

そのため、業界でも学界でも本大法官解釈は釈字第414号解釈を実質的に変更するものであるかが議論となった。この点は、大法官から出された一部賛成意見書及び一部反対意見書で若干触れられており、これらが参考になる。本大法官解釈は、審査基準については、以前よりも厳格な「違憲推定」の審査基準を示した。釈字第414号解釈で採用された「商業言論の事前審査制度」に対する合憲性審査基準に実質的に異議を唱える(又は変更する)ものである。しかし、本大法官解釈の理由書では、審査基準を変更した理由は詳しく記載されていない。したがって、医薬品広告の事前審査制度に対する合憲性審査基準の決定方法については、争訟が発生して法律に従い司法院大法官に対して解釈が要求されるまで待つことになる。

 

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