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専利無効審判の請求人は行政訴訟において、智慧財産局の無効審判請求不成立の処分を認めるが、裁判所に新たな証拠の組合せ又は主張を審理することを要求できるか



公衆は台湾経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)がすでに登録査定とした専利(特許、実用新案、意匠を含む)について、専利を付与すべきでない事実を発見した場合、書面をもって理由を明記するとともに、証拠を添付して智慧財産局に送付し、智慧財産局にその「専利権を付与した行政処分」の取消しを要求することができ、これがいわゆる「無効審判」である。当事者双方は智慧財産局による「無効審判請求成立」の処分(無効審決)あるいは「無効審判請求不成立」の処分(維持審決)に不服がある場合、経済部訴願審議委員会(Ministry of Economic Affairs)に訴願を提起することができ、訴願が棄却された時には、台湾知財裁判所の行政法廷に対し行政訴訟を提起して行政処分への不服を示すことができる。三権分立及び行政法の一般原則に基づくと、台湾知財裁判所は司法機関に属しており、専利の無効審判の行政訴訟における役割は「事後審」であり、つまり行政官庁(即ち智慧財産局又は訴願審議委員会)が下した行政処分が違法か否かを審理するのである。違法があれば原則的に原処分を取消すべきであり、且つ状況に応じて行政官庁に裁判所の要求又は意見に基づき改めて行政処分を行うことを命じることができる。このため、裁判所の無効審判に関する行政訴訟における審理の対象(訴訟物)は、智慧財産局が作成した無効審判が成立するか否かの「行政処分」である。過去において、行政裁判所はこの原則に基づき、無効審判に関する行政訴訟における審理の範囲は、対象である行政処分の内容が及ぶ専利の有効性の争点(例えば、サポート要件違反、進歩性欠如等)と智慧財産局がすでに審査した証拠(例えば、進歩性欠如を証明するために用いられる従来技術)のみに限られており、無効審判の元の証拠を補強する証拠が審理に取り入れることができること以外は、行政裁判所は「新たな証拠」の提出を認めなかった。

 

しかしながら、20087月付の「知的財産案件審理法」(「智慧財産案件審理法」)の施行後、知的財産案件審理法第33条第1項に「商標登録の取消し、廃止、又は専利権(特許権、実用新案権、意匠権を含む)の取消しに関する行政訴訟において、当事者が口頭弁論終了前に、同一の取消し又は廃止理由について提出した新たな証拠について、知的財産裁判所はやはり審理しなければならない。」と規定されている。その立法理由は、本来は無効審判請求人が行政訴訟中に同一の取消し理由に関する新たな証拠の追加提出を認めることで、同一の専利権の有効性についての争いから行政訴訟の繰り返しが生じ、訴訟の終了を遅延させる状況を減少させることを希望するものであった。しかし、この後、行政裁判所(法廷)が専利の無効審判における役割はすでに従来の「事後審理者」から、徐々に事後審を進めるだけでなく、「積極的に第一次審理を進める」ことに変わってきた。

 

知的財産案件審理法第33条第1項により形成された最も極端な状況は、裁判所が「事後審」ではなく、完全に「第一次審理」のみを進めることである。例えば、ある無効審判請求人が無効審判の段階で証拠を提出してある専利を取消すべきと主張したが、智慧財産局から「無効審判請求不成立」処分を受け取った。行政訴訟において、無効審判請求人は智慧財産局が下した審決の結論と意見を完全に認めると表示したが、無効審判段階と完全に異なる新たな証拠又は新たな証拠の組合せを提出し、無効審判で主張した「取消し又は廃止理由と同一となる」争点の下(例えば、サポート要件違反、進歩性欠如)、知的財産案件審理法第33条第1項に照らし、裁判所は新たな証拠について第一次審理を行い判決を下さなければならないと主張した。実務上では、すでに多くの事例が出ている。例えば、台湾知財裁判所による104年(西暦2015年)度行専訴字第90号判決では次のように指摘している。「原告は本件行政訴訟を提起した時に証拠6、証拠7を提出し、且つこれらと無効審判手続きにおいて提出済みであった証拠1ないし5とのそれぞれの組み合わせにより、係争専利の請求項1ないし31はいずれも進歩性を備えないことを証明することができると主張したことは、同一の取消し理由(即ち係争専利が進歩性を備えないか否か)に対して提出された新たな証拠であるため、上述した規定により、本裁判所は自ずと併せて審理すべきである。また、本件は本所の受命裁判官が準備手続において、行政訴訟法第132条において準用する民事訴訟法第270条の11項第3号の規定により、当事者双方及び参加人と整理・協議により争点の簡素化を進めた。本件の争点を簡素化するため、原告は無効審判手続きで提出済み且つ原処分で無効審判請求不成立と認定され、並びに訴願決定により棄却された証拠の組み合わせについては争わないことに同意した。」言い換えれば、裁判所は争点を整理した後、無効審判段階で智慧財産局が下した行政処分における争点と証拠を完全に除外し、行政訴訟において原告(無効審判請求人)が提出した新たな証拠、又はその組み合わせについてのみ調査と判断をしたのである。実際には、原告である無効審判請求人が裁判所による争点の簡素化を待たずに、自発的に無効審判と訴願段階で争った内容を全て放棄すると表示し、裁判所にその行政訴訟で主張したものについてのみ調査と判断をするよう求めたものもある。その主張には、「専利法第26条の専利の明確性要件違反」と同一の取消し理由に基づくが、無効審判段階で提出した「ある請求項における技術名詞Aは明細書により裏付けられていない」こととは完全に異なる主張をし、「当該請求項における別の技術名詞Bは明細書により裏付けられていない」に改めるもので、且つ完全に異なる技術上の理由を主張したものが含まれる。裁判所は知的財産案件審理法第33条第1項の規定に基づき、その請求も受け入れた。

 

以上の事例から分かるとおり、専利の無効審判案件が行政訴訟において以下のように特殊な変化を見せるようになった。つまり、無効審判請求人たる原告として、裁判所に智慧財産局の原行政処分について考慮せず、新たな証拠で第一次判断を進めるよう請求することができる点である。また、現行の専利法第81条によると、知的財産案件審理法33条の規定に基づき台湾知財裁判所に提出した新たな証拠は、審理を経て理由がないと認められた場合、何人も、同一の専利権に対して、同一の事実につきて同一の証拠をもって無効審判を再請求することはできない。このため、行政訴訟において新たな証拠を提出した原告(無効審判請求人)は、行政訴訟の判決が確定した後、その提出した新たな証拠に対する裁判所の決定を不服として、智慧財産局が無効審判段階で当該証拠と理由について審査をしなかったことを理由に、当該新たな証拠に基づき別の専利無効審判を請求してはならないのである。

 

もう一つの検討に値する問題は、専利法において、無効審判段階に専利権者が提出した特許請求の範囲の訂正請求が、特許有効性の維持をめぐる防御方法の一つとされていることである。しかし、行政訴訟段階においては、裁判所は新たな主張、新たな証拠、又はその組み合わせの状況を審理する際、専利権者に訂正請求すべきか否かを考慮する時間、ひいては提示(註:智慧財産局の段階では、若干の訂正により解決できる明確性要件に関する問題については、智慧財産局は専利権者にこれを訂正する機会を付与する可能性がある)を対等に付与すべきか否か、直接判決にて当該専利はたとえ訂正しても行政訴訟における無効の抗弁を対抗することができないと指摘することが妥当であるか否か、これらについてはいずれも裁判所の実務の進展による解決を待つばかりである。

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