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フィンテック発明の専利保護



インターネットの発展と普及に伴い、各種の革新的な金融活動及びサービスタイプが大いに発展しており、モバイル情報、ソーシャルネットワーク、クラウド、ビッグデータ分析等の各技術分野の「フィンテック(FinTechFinancial Technology」もそれに伴い生じ、応用範囲は支払い、投資、保険、融資、資金調達等まで網羅している。伝統的な金融機関以外に、ネットショッピングプラットフォーム、物流産業ひいては通信、及びIT産業等は、フィンテックの研究開発及び特許ポートフォリオの展開に向けての準備に余念がなく、世界の各主要市場においていずれも相当数の専利(特許、実用新案、意匠を含む)が出願されている。行政院金融監督管理委員会もまたこの現象を注視しており、それぞれ2016517日に「金融産業の発展政策白書」を、また同年518日には「フィンテック発展戦略白書」を公表し、フィンテックの発展を今後、台湾の金融産業政策の重要な施政方針として確立した。

 

台湾智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)の専利データベースで検索した統計結果に基づくと、台湾はフィンテック関連分野において、2011年から毎年公開公告された専利件数は明らかに年々増加しており(図1)、特にマーケティング、買物、請求、競売又は電子商取引の専利(IPC国際分類番号G06Q30)においては、さらに2015年には700件を超える専利が公開公告された。

 

       

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(註:国際分類番号G06Q20には支払のためのスキーム、アーキテクチャ又はプロトコルが含まれる。G06Q30は商取引分野を指し、例えばマーケティング、買物、請求、競売又は電子商取引である。G06Q40は、例えば銀行業務、投資又は税務処理の金融分野と例えばリスク分析又は年金の保険分野を指す。)

 

2~図4は台湾で出願された上述した金融に関する3種の専利について公開公告された専利件数における専利出願人専利権者の出願件数の上位4位を示したものである。

 
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フィンテックの技術には、ソフトウェア発明又はビジネス方法に係る発明が多く含まれ、その専利性はこれまで各国の専利実務において重要な議題であった。台湾の専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)を例にすると、第21条に「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作を指す」と規定されており、出願する特許の発明が技術性を具備しなければならないことを求めており、専利を出願しようとするビジネス方法が社会法則、経験則又は経済法則等の人為的規則のみである場合には、自然法則を利用していないことから、専利法上の「発明」の定義に該当しないと認定される可能性がある。フィンテック研究開発の成果が専利を取得する可能性を確保するため、専利審査基準第二篇第12章「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」の関連規定には次のような手引きを提供している。「コンピュータ・ソフトウェア関連発明において、請求項に記載された構成要件が技術性を有する場合、当該構成要件は請求項の技術性に資するものとなり、構成要件が技術性を有しない場合、当該構成要件が技術性を有する構成要件と協働した後に請求項の技術性に資するか否か判断する必要がある」、「もし発明の全体が技術性を有する場合、例えば、技術上の困難を克服した、又は技術分野の手段を利用して問題を解決したことにより、システム全体に対して技術分野における情報システムの安全性の増強、情報システム実行の効率向上、映像認識精度の強化又はシステムの安定性の向上等に関する効果を生んだことになる場合、発明の定義に該当すると認めなければならない」、「判断するときは、コンピュータのソフトウェア又はハードウェアが問題を解決するために欠かせない一部分であるか否か、及びコンピュータのソフトウェア又はハードウェアの特殊性を考量しなければならない」。これらから、フィンテックの研究開発の成果を特許出願の対象にしようとする場合、専利請求の内容において、「ソフトウェアとハードウェアが協働して動作することにより情報処理を行い、且つこの協働動作が確実に技術性を有している」という形で記載すれば、審査基準の専利性の基準に満たすことができることが分かる。

 

台湾知財裁判所も、かつて数件のフィンテック関連専利の事例を審理し、判決においてこのような専利の専利性及び権利侵害の判断のいずれについても言及してきた。例えば台湾知財裁判所102年(西暦2013年)度民専上字第25法判決において、当該事件の係争専利の従来技術に対する貢献は、周知の競売方法における人為的規則を変更しただけであり、コンピュータにおけるハードウェア及びプログラムソフトウェア等の技術とは関係がなく、特定の機器又は装置と結合させたものではなく、又は、特定物を異なる状態若しくは事物に転換するものではない等の原因から、係争専利は発明の定義に該当しないと認定した。権利侵害の判断については、係争専利の請求項の記載によると、係争専利の方法の各ステップの実施には「売り手」、「競売システムの店舗」、「買い手」を含む必要があるが、被告自身は「売り手」及び「競売システムの店舗」を兼任できるが、「買い手」にはならず、「買い手」の行為の抑制を主導することができず、被上訴人は「買い手」が欠如した状況下で係争専利の方法の請求項の全てのステップの行為を実施することができないため、権利侵害の判断原則の「全要件原則(All Element Rule:オール・エレメント・ルール)」を満たしていない、とした。

 

上記の例から、専利権でフィンテック発明を有効的に保護することができるか否かは、発明の技術内容自体が唯一の要件ではないかもしれず、専利の記載方法が極めて重要である。そのため、各国の審査基準の規定を満たしてその専利性を確保するだけでなく、その請求の範囲の設定は、さらに発明を具体的に実施する際に生じる可能性のある様々な状況までを考量しなければならない。それにより初めて専利を有するのに行使できないというジレンマを避けることができることが分かる。



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