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行政裁判所は職権で無効審判請求人の未提出の補助証拠を探知することができる



台湾の行政訴訟と民事訴訟では、訴訟物の範囲と訴訟手続の開始と取下げは、いずれも処分権主義が採られているが、裁判所の審理方法については、民事訴訟と行政訴訟では異なり、民事訴訟では弁論主義を採用しており、裁判の基礎となる訴訟資料はいずれも当事者が申立て及び主張したものに限られる一方で、行政訴訟では「行政訴訟法」第125条第1項及び第133条の規定により、主に職権調査主義を採用しており、たとえ当事者が提出しない資料であっても、裁判所は職権により取得することができ、当事者の拘束を受けることはない。

 

しかし、特許等の有効性をめぐる紛争を扱う行政訴訟は、学説及び実務上において、その性質が私的紛争に偏りが見られ、公益的色彩が比較的無いため、当事者主義を採用して当事者がその主張について立証責任を負うようにすべきである、との見解が多く見られる。従来の特許法ではいずれも無効審判請求人は無効審判請求理由と証拠を提出しなければならないと規定されている(現行「専利法」第73条第1項、第4項などの規定を参照)。最高行政裁判所は88年(西暦1999年)度判字第3748号判決において、「特許異議申立事件の審理では、当事者主義が採用されており、当事者がその立証責任を負うものとされている」と判示しており、90年(西暦2001年)度判字第952号の判決においても「特許無効審判請求事件については当事者主義を採用しており、被告の審理は無効審判請求の当事者が提起した理由及び証拠を審理の根拠とする」と明確に示されている。行政裁判所は「すでに知悉している事実、当事者の申立て又は主張及び裁判書類内の既存の資料」についてのみ、事実及び証拠を「職権により調査」することができることについて、最高行政裁判所の判決102年(西暦2013年)度判字第385号判決に詳しく述べられている。

 

前述した司法実務の見解によると、特許の有効性をめぐる紛争(現行法では無効審判請求手続のみ)を扱う行政訴訟においては、当事者が証拠を提出すべきであり、行政裁判所はせいぜい当事者が主張する範囲内において職権により調査することができるのみで、当事者が申立て、主張しておらず、かつ裁判所にとって未知の事実及び証拠に対して職権探知してはならない。しかしながら、最高行政裁判所は2016128日付の105年(西暦2016年)度判字第41号判決において、従来の見解に対し修正を加えたようで、行政裁判所は無効審判の証拠に関連する補助証拠について職権探知をすることができるとした。

 

この判決の理由は、次のようなものである。「特許無効審判請求事件において、処分権主義に基づき、本来、行政裁判所は無効審判請求人が主張する無効理由及び提出した無効審判の証拠についてのみ審理して、係争特許を取り消すべきか否かを判断すべきである。しかし、これは、裁判所が審理する際に、無効審判の証拠以外に、同一の基礎事実に基づく関連性のある補助証拠について調査することができないということではない。特許等に関する行政訴訟には、産業発展の促進という公益目的があり、特許権等が取り消されるべきか否かは私益の考量に限られるものではなく、補助証拠は元々の無効審判の証拠の証拠力又は証明力を補充するために用いられるもので、無効審判の証拠の信憑性がなおも不足していることで、裁判所が明確に心証を得るに至らない時は、公益の考慮に基づき、裁判所は真実を発見するため、無効審判の証拠に関連する補助証拠を職権により調査してはならないことはない。」

 

当該個別事件の事実は、係争特許は原料、開綿、梳綿、練条、ニードルパンチ、巻取り、糊付、圧縮成形、裁断及び製品包装などの10の製造工程を含むケイ酸カルシウム板の製造方法である。しかしながら、引例には係争特許によって特定されている原料、梳綿、ニードルパンチ、糊付、圧縮成形及び裁断の6の製造工程のみが開示されており、残り4つの製造工程については関連記載はない。原裁判所である知的財産裁判所は職権で関連性を有する従来技術を探知し、当事者が提出していなかった2つの補助証拠をもって、前述した引例で開示されていない4つの製造工程は、その属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願時に明確に知悉している通常の知識であると認定した上で、さらに係争特許は進歩性を欠如していると判断した。

 

この事件は特許権者が最高行政裁判所まで上告し、最高行政裁判所もまた、原裁判所が紡績技術分野の専門知識という角度から、同一の無効審判の証拠の範囲内において職権により証拠を調査し、「知的財産事件審理法」(「智慧財産案件審理法」)第34条において準用する同法第8条の規定により、事前に心証を公開して当事者に弁論を行うよう命ずることは、不法ではないと認めた。

 

上述した見解から分かるように、司法実務では特許無効審判の行政訴訟における調査の範囲が既に拡張されているようであり、同一の基礎事実に基づく関連性のある補助証拠について、たとえ当事者が提出しなくても、行政裁判所は職権探知により、その属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願時に明確に知悉していた通常の知識であるか否かを判断することができる。ただし、当該職権探知で収集された証拠物は事前に心証開示して当事者に弁論を行うよう命じてから初めて裁判の基礎とすることができる。しかしながら、この見解が広く特許無効審判を審理する行政裁判所で採用された場合、無効審判は本来私的紛争に属するという特性と合致しないように見える。裁判所は係争特許が無効であるとするに足りる新たな証拠を探すことに自発的に介入し、「通常の知識」の名のもと、特許法が定める無効審判請求人が無効の証拠を提出すべきとする原則を避けることは、無効審判請求人と特許権者との間における武器平等に影響する可能性があり、行政機関がその「最初の処分権」の権能を失わせることにもなり、適切か否かは疑問が残る。

 

 

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