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適正利用によって氏名表示権の侵害を回避できるか?



著作権法第65条第1項には「著作物の適正な利用は、著作財産権の侵害を構成しない」と規定されている。しかし、著作権法第65条に定める「適正な利用」に合致し、利用者が著作権法第64条の規定により利用著作物の出典を明示しなかった場合、氏名表示権の侵害を構成するのか否かについて、知的財産裁判所の102年(西暦2013年)度民著訴字第57号(判決作成日:201486日)と、その上訴審の103年(西暦2014年)度民著上字第26号判決(判決作成日:2015625日)は、異なる見解を示している。

 

原告は訴えを提起し、「原告は心臓血管外科の医師であり、静脈瘤の要因、類型、症状、セルフ・チェック、臨床検査、治療方法及び保健・予防などの関連医学知識を一般の人々が理解しやすいよう、原告が作成した一連の文章を原告が開設した診療所ウェブサイトにアップロードした。その後、原告は、被告の医院ウェブサイトに記載されている『静脈瘤』についての文章が、原告の前記著作物中の症状、静脈瘤のセルフ・チェック、予防と保健などに関連する言語著作物の内容を無断で複製して切り貼りし、且つ無断で改作し、さらにその他医療機関又は医師の著作物から剽窃したものを加えて構成されたものであること、さらに、被告は当該ウェブページ上に原告の氏名を表示しておらず、それどころか、『Copyright(C)、被告医院All rights reserved』などの文字を勝手に記載し、被告医院の名称をウェブページの目立つ場所に付していることを発見した。よって、被告は原告の著作財産権及び氏名表示権を侵害している」と主張した。第一、二審裁判所は審理後、いずれも「原告は確かに著作権を有しており、且つ被告は確かに原告の著作物を利用している」と認めたが、被告の行為が一般の人々に衛生教育の知識を広めたいという非商業目的に基づいていること、原告の著作物が既存の事実を伝える事実型著作物に属すこと、被告が利用した質と量はいずれも適正利用の範囲を超えていないこと、及び、被告の前記利用が将来の潜在的市場にいかなる影響も及ぼさないことなどの要素を考慮し、「適正利用が成立する」と判示した。しかし、被告が利用した著作物の出典を明記しなかったことが著作権者の氏名表示権に対する侵害を構成するか否かにつき、第一、二審裁判所は異なる見解を示している。

 

一審裁判所は、「著作権法第65条第1項、第66条などの規定によれば、被告は適正に利用しており、著作財産権の侵害を構成しないものの、『適正に利用しさえすれば、著作人格権の侵害を構成しない』というわけでは決してない。被告が、自らが参考にして利用した部分が原告の創作したものであると適正に表示しなかったことは、全て被告である医院が創作したものであると他者に誤認させる可能性がある。したがって、被告はやはり原告の氏名表示権を侵害していると認める」と判示している。

 

これに対して二審裁判所は異なる見解を示しており、「被告は著作権法第64条の規定により出典を明示しなかったものの、著作権法第65条の適正利用要件に合致しさえすれば、著作財産権及び氏名表示権のいずれの侵害も構成しない」と判示している。

 

その他の事例中、たとえば知的財産裁判所の103年(西暦2014年)度民著訴字第57号(判決作成日:20141219日)は、比較的、本件一審裁判所の見解寄りであり、当該裁判所は「適正に利用すれば、当然、氏名表示権の侵害を構成しないというわけではなく、見る者に匿名著作物又は他人の著作物であると誤解させるか否かは、具体的な情況を考慮して、決定しなければならない」と判示している。これらの見解は、「著作権法第65条の適正利用要件に合致すれば、氏名表示権侵害を構成しない」とする本件二審裁判所の見解とは異なる。したがって、著作権の適正利用と出典表示や氏名表示権などとの間の関係に関しては、今後もさらに注視していかなければならない。

 

 


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